ポットオッズとは、コールするにはポットをどれくらい獲得する必要があるかを示した数値です。ポットオッズは簡単に計算できるのでポーカープレイヤーであれば誰もが知っておくべき概念です。
この記事では、ポットオッズの概念、計算方法、ポットオッズの限界について紹介します。
ポットオッズはなぜ必要か
ポットオッズはポーカーにおける最も基本的な指標です。ポットオッズを知ることによって、長期的にみてどのくらいポットを獲得する必要があるかがわかります。例えば、5ドルのベットにコールする場合、少なくとも5ドルはポットから獲得した方が良いということを示します。
回収できないのであれば、ポットにお金を入れる必要はありません。ポットオッズで重要なのは、その時1回の利益ではなく、長期的にみた場合の利益です。ポットを獲得できない時もあれば獲得できる時もあります。重要なのは長期的に回収できているかどうかです。これこそがポーカーで基本的な概念であるポットオッズです。
ポットオッズは、リスクとリターンを求める指標です。ポットに対するベットの大きさによってどれくらいの頻度で勝つ必要があるかを計算します。リスクとリワードを考えて損益分岐点を導き出します。
ポットオッズの計算
ポットオッズは、コールするにはポットの何%を獲得する必要があるかを示しています。ポットオッズを計算するのに必要なのは、ポットに対する相手のベットの大きさだけです。
例えば、相手が$20のポットに$10のベットしたとします。コールしたら、その新しいポットから少なくとも$10を回収する必要があります。では、その新しいポットの何パーセントを獲得すればよいのでしょうか?
今回は、後のストリートにベットがなく、ベットサイズはオールインのみとします。その場合、獲得できるポットの一部がそのままエクイティとなります。
必要なエクイティを%で計算する
コールするのに必要なエクイティ = (コール額) / (コール後のポットサイズ)
コールするのに必要なエクイティ = $10 / ($20 + $10 + $10) = 25%
25%の確率で勝つことができれば、追加で入れた$10を回収することができます。つまり、少なくとも新しいポットの1/4を勝ち取らなければいけません。もちろん25%以上勝つ場合は問題ありませんが、それ以下の場合はコールは間違ったプレイとなります。
オッズで計算する
パーセンテージではなくオッズで計算することもできます。
先ほどの例ではポットと相手がベットした額($30)を勝ち取るために、$10のリスクを負っています。つまり、コールすることで3:1のオッズとなります。1/(3+1)=25%となり、少なくとも25%の勝率が必要です。
オッズをまとめた表
プレイ中に計算することが得意ではない人は、下記の表を覚えて使うことをおすすめします。ベットサイズの列とポットオッズの列を見ることで、どのくらいの確率で勝つ必要があるかがわかります。
ポットオッズの計算
プレイ中でなければ、オッズ計算機を使用することもできます。多くの計算機が世の中にはありますが、ここでは簡単に操作できるよう作成したこちらの計算機をおすすめします。
プリフロップでのオールインの例
CO vs SBからのオールイン
100BBのキャッシュゲーム。50NLのレーキ。
CO (自分) が2.3BBにオープン、SBが11.5BBに3ベット、COが25BBに4ベット、SBが100BBのオールイン。
5ベットオールインをされた際のCOのレンジは下記のようになります。(=COの4ベットレンジ)
コールすべきハンドはどれでしょうか。正しいコールをするためには、ポットオッズを計算してそのオッズ以上のエクイティがあるハンドでコールをします。
コールする金額:75BB
コール後のポット:201BB – レーキ (4BB) = 197BB
コールに必要なエクイティ 75/197 = 38%
次に、SBのオールインレンジからエクイティを計算します。
GTO WizardのレンジタブからSBのレンジをコピーし、Flopzillaなどのエクイティ計算ツールに貼り付けます。
オールインレンジに対してのエクイティをみてみます。
コールするには少なくとも38%のエクイティが必要であり、COは(TT+、AK)でコールします。
GTOソリューションをみてみます。緑がコール、青がフォールドです。
みてわかる通り、適切なエクイティがあるハンドしかコールしていません。
相手がニットの場合
相手がニットだとしても、ポットオッズを理解していれば最適な戦略を知ることができます。例えば、SBがQQ+、AKsのみでオールインするとします。
このSBのレンジに対してのCOのエクイティは下記のようになります。
コールに必要なエクイティは38%なので、KKとAAだけがコールすることができます。AKはギリギリ必要なエクイティを下回っており、QQはかなり下回っています。
アクションが残されている場合のポットオッズ
後のストリートでベットができる場合は、ポットオッズをもとに必ずしもアクションを決められるわけではありません。その場合は獲得できるポットの割合は、必ずしもエクイティと同じではありません。しかし、エクイティを期待値+ポットで考えると、ポットオッズは正しい指標となります。これを「ポットシェア」と呼びます。
ポットオッズの概念では、相手が$5のベットをした場合、コールが正しいプレイとなるには(長期的に)少なくとも$5を獲得する必要があります。ただ後にアクションが残っている場合はエクイティを多く実現できたりできなかったりします。
先ほどまでのポットオッズの計算では、BBがBTNの2.5BBオープンにコールする場合、72oを持っていたとしても30%のエクイティがあるためコールしてもよいということになります。しかし、このハンドでは後に十分なエクイティを得ることができないため、正しいプレイとはなりません。
インプライドオッズ、リバースインプライドオッズ、エクイティ実現の概念がここでは重要となります。単純なポットオッズの計算では、エクイティ=ポットシェアとなりますが、実際には、エクイティがポットシェアと等しくなるのは、コールした後、アクションない場合だけです。
ポットオッズの限界
8MaxのMTT、エフェクティブスタック40BB、12.5%アンティ
BTNが2.3BBオープン、BBがコール。
フロップ:KsQh3d
BBがチェックし、BTNが6BBのポットに2BBをベット
単純なポットオッズ計算では、少なくとも
2/10 = 20%のエクイティが必要です。
GTO Wizardを使って、このベットに対するBBのエクイティをみてみましょう。
GTO戦略と比較してみます。
ソルバーはA7oのような40%以上のエクイティを持つハンドでフォールドしている一方、42sのような18%のエクイティしかないハンドをコールしています。これはどういうことでしょうか。
エクイティが40%だからといって、ポットの40%を獲得できるわけではありません。A7oはAが出なければ、後のストリートで降ろされる可能性が高いですが、42ddはエクイティは少ないですが、バックドアフラッシュやストレートドローなどのインプライドオッズがあります。そのため、A7oと同じ0EVとなっています。
最後に、「Breakdown tab」にあるグラフは、BBの戦略をエクイティ順に並べたものです。下に20%のしきい値を示しています。
ポットオッズと期待値
ポットオッズは、オールインされた時、コールするためにどれくらいのエクイティが必要かを示します。ポットオッズは期待値の方程式から導き出すことができます。
コールEVの例
コールの期待値を計算する方法は、損益分岐点を計算するより重要です。コールがどれくらいの利益があるかを正確に数値で知ることができます。
期待値を計算するには、EV方程式を次のように設定します。
EV (コール) = (勝率 x 勝った時の金額$) – (負ける確率 x 負けた時の金額$)
- 勝率は自分のエクイティ
- 負ける確率は、1-自分のエクイティ
- 勝った時の金額は、コールして勝った場合にどれくらい得られるか
- 負けた時の金額は、コールした時に失う額
勝った時の金額$と負けた時の金額$は、フォールドした時と比べての金額であることに注意してください。
最初のCO対SBのオールインの例で、AKでコールした場合の勝率はどれくらいでしょうか。
勝った時の金額$ = コールした時に勝つ額(197BB)からコールした額(75BB)を引いた額 = 122BB
負けた時の金額$ = コールする金額 = 75BB
勝率 = 48.4
負ける確率 = 51.6
EV (コール) = (48% x 122BB) – (51% x 75BB) = 21BB
または、50NLをプレイしていたとすると、約$10.50。
期待値からポットオッズの公式を導く
EV(コール) = (勝率 x 勝った時の金額$) – (負ける確率 x 負けた時の金額$)
勝率をQ(エクイティ)、負ける確率を1-Qに置き換えます。また、勝った時の金額$をWに、負けた時の金額$をLに置き換えてみます。
EV (Call) = (Q x W) – ((1-Q) x L)
損益分岐点を求めるためにEVを0とし、必要なエクイティ(Q)について解きます。
EV (Call) = 0 = (Q x W) – ((1-Q) x L)
0 = (Q x W) – ((1-Q) x L)
QW = (1-Q)L
QW = L – LQ
QW + LQ = L
Q(W+L) = L
Q = L / (W+L)
Lは負けた時の金額で、コールした金額と等しいです。
Wは、勝った金額からコールした金額を引いた金額です。
したがって式は次のようになります。
必要なエクイティ (Q) = コール / (コール後のポット – コール + コール)
必要なエクイティ (Q) = コール / (コール後のポット)
まとめ
ポットオッズはポーカーで重要な概念です。ポットオッズでのリスクとリターンの計算によってどれくらいの確率で勝つことができればコールして良いかどうかを知ることができます。ポットオッズを計算することはポーカーの基本中の基本です。
ポットオッズのおさらい
- ポットオッズとはリスクとリターンの計算であり、どれくらいの確率でポットを獲得することができればコールして良いかを示している
- $5コールした場合は、長期的にみて$5ドルを獲得しなければいけない
- 後のストリートがある場合、エクイティだけをみてコールすることは間違っていることがある
- ポットオッズは期待値の方程式から導き出すことができる
翻訳:Ayumu