リンプポットをどうプレイするか
以前、とある人がDiscordでリンプ戦略について投稿していました。リンプへの対応を知るプレイヤーが少ない点はメリットですが、同時にリンプ戦略を正しく使えるプレイヤーがいない点はデメリットだという内容です。エクスプロイトの観点から見ると面白いテーマです。
この記事ではカスタムソリューションを使い、「Limp First In(LFI)」戦略への対応方法を見ていきます。
リンプ
プリフロップで誰もレイズしていないときに、BBと同じ額を出してコールすること。
GTO Wizardでプリフロップリンプが使われる場面
リンプが基本戦略となる場面もあります。
- SBからプレイする場合
- エフェクティブスタックが7bb未満の場合
- ヘッズアップの場合
- トーナメント序盤でショートスタックの場合
- 前のプレイヤーがすでにリンプしている場合
リンプを使う場面について詳しく知りたい方は、Matt Huntの戦略動画「The Hidden Power of Limping in MTTs」をご覧ください。
ここからは、上記以外の場面でリンプ戦略をエクスプロイトする方法を見ていきます。具体的には、チップEVソリューションで最初のプレイヤーが100%の「Raise First In(RFI)」戦略を使う場面を検証します。
プリフロップでリンプポットになった場合、ポストフロップ戦略に影響する主な要素は3つあります。
- エフェクティブスタック
Stack-to-Pot Ratio(SPR)が低くなると、ポストフロップ戦略は大きく変わります。これはプリフロップでRFIしたポットでもLFIしたポットでも同じです。エフェクティブスタックと、リンプまたはレイズするプレイヤーの人数が同じ場合、リンプポットのSPRはレイズポットより少し高くなります。 - 最初にLFIしたプレイヤーの想定リンプレンジ
LFIはGTO戦略ではない場合、そのプレイヤーとの過去の対戦をもとにレンジを推測するしかありません。たとえば、ローステークスのトーナメントでは、弱いスーテッドハンドや低いポケットペアをLFIするプレイヤーもいれば、レンジ全体をリンプするプレイヤーもいます。 - リンパーの後にコールするプレイヤーの人数
プリフロップでポットに参加するプレイヤーが増えるほど、全体の戦略は大きく変わります。現在、カスタムソリューションで解析できるポストフロップのチップEVはヘッズアップだけです。そのため、ここでは最初のリンパーとBB以外が全員プリフロップでフォールドしたポットを扱います。
Stack-to-Pot Ratio(SPR)
エフェクティブスタックをポットサイズで割った値。インプライドオッズやメイドハンドの相対的な価値を測るために使われます。
現在のツールで検証できるのは項目1と2です。複数のリンプコーラーを扱えるプリフロップのカスタムソリューションがGTO Wizardに実装されたら、項目3も取り上げます。
ディープスタックのポストフロップ比較
まず、チップEVソリューションの100bbで、リンプポットとレイズポットの戦略を比較します。ここでは、T74レインボーにおけるRFIに対するBBの対応と、100bbのLFIに対するBBの対応を比較します。
RFI
Raise First In。誰もポットに参加していない状態で、最初にプリフロップレイズすること。
LFI
Limp First In。最初にプリフロップでリンプすること。
上の画像は、全員が100bbを持つチップEVで使われるLJの標準RFIレンジです。
LJのレンジに対して、BBは上のレンジでディフェンスします。
BBはLJのオープンにコールした後、T74レインボーでレンジ全体をチェックします。BBがチェックすると、LJは上のCベット戦略を使います。このボードでは、主にオーバーベットを使用しています。後のソリューションで最も一般的なベットサイズと比較するため、ここでは低頻度の66%ポットCベットを使用します。
このベットサイズに対しては、BBはペアとドローでコールし、強いドローと役のあるハンドでバリューレイズします。次に、LJのCベット戦略とBBの対応が、プリフロップでリンプした場合にどう変わるかを見てみます。
以下は同じソリューションですが、LJがプリフロップでレイズせず、リンプした場合です。この例でLJがリンプに使うのは、前の例でプリフロップレイズに使っていたレンジと同じです。BBがプリフロップでレイズするのは、前の例で3ベットしていたハンドだけです。
上の画像は、RFIに対するBBのコールレンジをもとにした、LJのリンプに対するチェックレンジです。8maxトーナメントのプリフロップAI解析が利用できるようになれば、プリフロップリンプへの最適な対応を検証できます。
ポットサイズが小さくなったことで、LJのCベット戦略は大きく変わり、それまで優先されていた150%ポットのCベットを使わなくなりました。代わりに、33%ポットと67%ポットを組み合わせるピュアCベット戦略を使います。奪い合うポット内のチップが少なくなったためです。
上のLFIとRFIを比較すると、すぐに3つの違いが確認できます。
- リンプポットはSPRが高いため、LJには広いレンジでCベットするメリットがさらにあります。より広いレンジでポットを大きくしていきます。
- ベットサイズが小さければ、BBは広いレンジでフォールドします。そのため、33%ポットと67%ポットは、大きいベットサイズよりも効率よく相手のエクイティを奪えます。
- リンプポットではLJのCベット頻度が高いため、BBもレイズを増やします。BBは、オーバーカードや弱いバックドアドローなど、ある程度のエクイティがあっても、レイズされたらディフェンスできないハンドをフォールドさせる目的で行います。
ショートスタックのポストフロップ比較
次は、同じLJ vs BBをエフェクティブスタック20bbで見てみます。
ここでも、LJの標準的な20bbのオープンレンジを使用します。100bbで使っていた2.3bbではなく、エフェクティブスタック20bbでは2bbでオープンします。
上の画像は、このオープンサイズに対するBBの対応です。戦略の中心はコールまたはオールインです。
100bbの例と同じく、BBはOOPであるため、コール後にレンジ全体でチェックします。BBがチェックすると、LJは上のCベット戦略を使います。LJはオープンレンジから22-44のポケットを外していますが、SPRとポストフロップのポットサイズが小さいため、Cベットのベットサイズも小さくなります。また、エクイティを守りながら、BBがターンで広くリードするのを防ぐため、マージナルハンドからTTのようなナッツ級のハンドまで一部をチェックバックします。
上の画像は、75%ポットCベットに対するBBの対応です。前の例で使った66%ポットCベットに最も近い比較対象となります。SPRが低いため、BBはトップペアや強いドローでオールインします。一方、ツーペアなどの最も強いハンドはコールに回します。その後のストリートでもベットを続けるLJレンジの大部分をドミネイトしているためです。
次に、BBがオープンへのコールレンジと同じレンジでチェックすると仮定し、LJのRFIレンジをそのままLFIレンジとして使用した場合を比較します。
RFIとLFIのプリフロップレンジを揃えるため、前の例でBBがレイズまたはオールインしていたハンドを、このソリューションから除外しています。
ポストフロップのポットサイズが小さくなったことで、LJはほぼピュアな67%ポットCベット戦略へ切り替えます。一部のハンドはチェックも組み合わせますが、基本的には大きくベットします。ポットがスタック全体に占める割合が大きいためです。
ポットに対するCベットサイズは大きくなっていますが、LJのCベットレンジが広いため、BBはRFIの例より広いレンジでコールします。また、フロップで小さいポットをすぐ獲得するメリットが小さいため、先ほどのオールインレイズに代わり、小さい3ベットが増えます。
前の例と同じく、いくつかの傾向がすぐに確認できます。
- SPRが大幅に低くなるため、LJは100bbで見られた複数サイズの混合戦略ではなく、主に1つのベットサイズを使います。ディープスタックよりも、20bbではLJのレンジアドバンテージがそれほど大きな意味を持たないためです。
- 100bbでは、BBがコールまたはレイズするハンドが20bbより12%多くなっていました。その代わり、ショートスタックではオールインのチェックレイズも一部使います。SPRが低いため、BBは強いドローのEQRを最大限に高めながら相手のエクイティを奪い、脆弱なトップペアをオーバーカードからプロテクトします。
- リンプポットにおけるBBの戦略はほとんど変わらず、頻度の差は1~2%だけです。リンプポットではSPRが高く、LJのCベットサイズも小さいため、すぐにオールインするメリットが小さくなります。
1つの例からですが、今後のリンプポットでのプレイに使えそうなポイントを2つご紹介します。
- 一般的に、ディープスタックのリンプポットでは、レイズポットよりもローペアでチェックレイズする頻度が高くなります。BBでは、より広いレンジでチェックレイズしてください。特に、リンプした相手がCベットしすぎている場合に有効です。
- SPRが低いリンプポットでは、オールインのチェックレイズを避け、小さいレイズサイズと広いコールレンジを使います。BBのチェックレイズ戦略は、100bbでも20bbでもほぼ同じです。
ここまでのポイントを確認するため、T74におけるLFIポットのポストフロップ戦略を、複数のスタックサイズで比較します。以下は、6種類のエフェクティブスタックにおけるLJのフロップ戦略とBBの対応です。
スタックサイズ別のLJ戦略
67%ポットCベットに対するBBの対応
50bb以上の場合
- LJはポジションアドバンテージが大きくなるため、小さいベットサイズを使い、広いレンジでCベットします。
- LJの広いCベット戦略に対し、BBも広いレンジでレイズします。LJのベットレンジが弱くなるほど、BBはレイズを増やし、そのレンジ下部のエクイティを奪えます。
30bb以下の場合
- LJが広いレンジでプレイし続けるメリットが小さくなるため、戦略はさらにポラライズします。LJはレンジ上部を中心に広いレンジでプレッシャーをかけ、小さい33%ポットベットも一部組み合わせてバランスを取ります。
- LJのCベットレンジが強くなるため、BBがレイズするメリットは小さくなります。BBはレンジの一部だけをレイズし、コールを増やして弱いドローのEQRを高くします。
まとめ
リンパーをうまくエクスプロイトできる戦略がなければ、リンプポットでプレイするのは難しいでしょう。この記事で確認したポイントは以下のとおりです。
- LFIしたプレイヤーはBBに対してポジションアドバンテージがあるため、エフェクティブスタックが50bb以上なら広いレンジでCベットします。BBは広いレンジでレイズし、リンパーの広いCベット戦略を利用します。
- エフェクティブスタックが30bb以下になると、ポジションアドバンテージが小さくなるため、リンパーはレンジの一部をチェックバックします。BBは、LJのCベットレンジが強くなるためレイズを減らす一方、コールを増やしてEQRを高くします。
- 相手のLFIレンジが広くてもタイトでも、BBはポストフロップ戦略を変えません。ただし、1つだけ例外があります。広いLFIレンジには相手のレンジにもローペアが多く含まれるため、BBはローペアをレイズよりもコールに回します。
- LJのプリフロップリンプレンジを検討するときは、相手の想定レンジがタイトになるほどコールを減らし、レイズを増やします。フロップで強いハンドになったときにプロテクションが必要となり、タイトなリンパーが持てないコンボをこちらが多く持つためです。たとえばT74では、74やT7が該当します。
ただし、ここまでの考察はいくつかの仮定に基づいており、実戦では状況が変わります。相手のプリフロップのLFIレンジをどう想定するか、また、相手のポストフロップ戦略がこの記事の想定とどう異なるかに合わせて調整しなければなりません。





















