プロファイル別エクスプロイト 第3回|マニアック
マニアックとは?
ポーカーテーブルで何をもって「マニアック」と呼ぶかは、人によってイメージが異なるでしょう。アグレッシブすぎる、不利なポジションから弱いハンドでプレイする、一度参加したポットを簡単には諦めない、といったプレイヤー像を思い浮かべるかもしれません。ハンドが良くなることを期待してオッズに合わないコールをしたり、トラッシュハンドでポットへ大きくベットし続けたりするプレイヤーも当てはまります。
プレイヤープロファイルの「Maniac」は、シミュレーション内のインセンティブを調整することで、このタイプをモデル化しています。一般的な意味でのマニアックと区別するため、以下ではプロファイル名を英語の「Maniac」と表記します。Maniacは、ベットするとポットの+6%、コールすると+3%の追加報酬を得る一方、フォールドするとポットの-6%が追加で差し引かれます。
Maniacは単にアグレッシブすぎるだけでなく、簡単にはフォールドしません。同じ特徴を持つコーリングステーションへの対応と似た部分がありますが、違うのはコーリングステーションがパッシブすぎるのに対し、Maniacはアグレッシブすぎることです。
こうしたシンプルなモデルが役立つのは、変数の調整に合わせて戦略をどう変えるべきかを検証できるからです。ただし、シンプルなモデルでは人間の心理の複雑さを完全には再現できません。実際のマニアックは大きなベットサイズを好むかもしれませんが、Maniacではベットサイズによってインセンティブは変わりません。むしろ、GTOではチェックするハンドでベットした場合に失うEVは、大きくベットするより小さくベットする方が少ないため、小さいベットサイズを頻繁に選びます。
GTO戦略は、勉強していないプレイヤーの戦略よりアグレッシブになる傾向があります
マニアックに見える相手が、実はGTOを理解した上手いプレイヤーである可能性もあります。GTO戦略は、勉強していないプレイヤーが取る戦略よりアグレッシブになる傾向があります。そのような相手とのプレイに慣れていれば、GTOでプレイする相手がマニアックに見えるかもしれません。
この記事では、さまざまな場面でManiacにどう対応するかを検証します。 よくあるPFR vs BBのスポットも扱いますが、最初に見るのは3ベットポットのOOPです。コーチとして多くのプレイヤーを見てきた経験から、この状況に悩む人は多く、マニアック相手では他のタイプより頻繁に起こります。
プリフロップ
以下のレポートとシミュレーションでは、すべて100bbのノーリミットキャッシュゲームを採用しています。ただし、ここから得られる多くのことは、他のフォーマットでも使えます。キャッシュゲームでもトーナメントでも、さまざまな場面で使えるマニアックへの対応を深掘ります。
今回のシミュレーションでは、プリフロップ戦略にエクスプロイト調整を一切加えず、各スポットに応じたGTOレンジでフロップへ進みます。そのため、Maniacの3ベットレンジもGTOのままです。仮に過度に広い3ベットレンジを使う設定なら、GTOのコール戦略ではなく、4ベットを増やすなど、よりエクスプロイト寄りの戦略で対応するのが理想です。左隣にマニアックがいると分かっている場合は、COのオープンレンジも狭めた方がよいでしょう。こうしたManiac用の調整を加えているのは、ポストフロップのレポートだけです。
もう1つ注意点があります。プレイヤープロファイルは先のストリートを見据えて計算しません。つまり、フロップ戦略を計算する際、ソルバーはManiacがターンでアグレッシブすぎる戦略を取ることまで考慮していません。実戦では、マニアックが後のストリートでもベットを続けすぎると想定し、ここで示す戦略よりややタイトにプレイした方がよいかもしれません。
これは少し直感に反します。通常、相手が先のノードでミスをすると分かっていれば、そのノードへより高い頻度で到達するインセンティブが生まれるからです。ターンでベットしすぎると予想できるなら、フロップでスロープレイをやや増やすメリットもあります。しかし、最も弱いハンドでのフロップコールは、Maniacのミスから利益を得られません。Maniacがベットを続けすぎると分かっていても、そのようなハンドは後のベットでフォールドさせられてエクイティを奪われることが多く、フロップでフォールドに回した方が高いEVになる場合があります。Maniacのような相手には、強いハンドのEQRは高くなりますが、最も弱いハンドのEQRは低くなります。この点を調整しなくても長期的な収支はプラスになりますが、相手のミスを見越して戦略へ反映すれば、さらにEVを高くできます。
3ベットポットでCベットされた場合の対応
BTNのGTO 3ベットレンジに対し、COは約5%のフロップでドンクベットしますが、Maniac相手には100%チェックすると仮定します。Maniacはフロップでほぼ一切チェックバックしない一方、GTOなら20%近くチェックバックするためです。そもそもフロップでドンクベットするのは、相手にチェックバックさせないためです。Maniacはいずれにせよチェックバックしないので、こちらがアグレッシブに動く前に、相手に広すぎるレンジでポットへチップを入れさせる方がよいでしょう。
ManiacはCベットを打ちすぎますが、COの対応はGTO相手と大きく変わりません。フォールドを僅かに減らし、レイズを僅かに増やします。
この結果からは、フロップのCベット頻度が高すぎても、それほど大きなミスではないと考えられます。GTOでBTNがチェックするハンドの大半は混合戦略となるため、ベット頻度を上げても戦略はそれほどエクスプロイトされやすくなりません。
一方、チェックがBTNの戦略で重要になるフロップでは、COの調整も大きくなります。A♥3♥2♥は、GTOでBTNのチェック頻度が最も高いフロップです。GTOなら35%チェックバックし、明確に中程度の強さであるKKやA8も、必ず、またはほぼ必ずチェックします。それに対し、Maniacのベット頻度は94%です。
COのフォールド頻度はどちらの相手にもほぼ同じですが、Maniacにはレイズ頻度が大幅に高くなります。
少なくとも3ベットポットでは、Maniacがアグレッシブなミスをするまでは、こちらもアグレッシブなプレイを控える傾向があります。一度ミスをした後は、そのミスに対してエクスプロイトします。
ManiacへのCベット
次は、CO vs BBのSRPを見ていきます。COのCベット戦略のみを比較するため、BBのドンクベットを無効にし、どちらの設定でも同じレンジでCベットノードへ到達するようにしています。
Maniacに対するCOのCベット頻度は、やや低くなります。
Cベットする場合は、小さいベットサイズを選ぶ頻度が高くなります。
ここでは、レイズに対しコールできないハンドのエクイティを奪われないようにするため、パッシブなプレイを選んでいます。
Maniacに対するCOのベットレンジはGTO相手より僅かに強いものの、小さいサイズのチェックレイズに対する対応はほとんど変わりません。3ベットポットでCベットされた場合と同じく、フォールドをやや減らし、レイズをやや増やします。
まとめ
マニアックへの対応では、「攻めには攻めで対抗する」が役立つ指針ですが、それだけでは最適な調整になりません。相手の攻めを先回りし、対応できないアグレッシブなアクションを許す隙を作らないことも必要です。
マニアックがアクションする前
相手が広すぎると考えられるレンジでアグレッシブなアクションをする前は、こちらが普段よりタイトかつパッシブにプレイすることを検討してください。最も強いハンドでは、相手を「泳がせる」ことで、弱いハンドからチップを引き出せます。一方、マージナルなハンドでは、後のアグレッシブなアクションにディフェンスできない可能性があるため、ポットへチップを入れない方がよいでしょう。最も弱いハンドでは、GTO相手ほどフォールドを期待できないため、ブラフを減らします。
マニアックがアクションした後
マニアックにベットやレイズをされた後は、シンバリューを取り、相手のエクイティを奪うために、アグレッシブな対応を積極的に検討します。前のノードでパッシブにプレイしたことで、こちらは強いハンドをより多く残したままこのノードへ到達し、同時にマニアックは中程度のハンドを多く持ちすぎています。このレンジ構成があるからこそ、こちらもアグレッシブに対応できます。
相手がミスをした後に仕掛けるエクスプロイトには、相手がどう対応するかにあまり左右されないというメリットがあります。広すぎるレンジでポットへチップを入れた時点で、相手は本来そこへ到達しないはずのハンドでもアクションを選ばなければなりません。フォールドしてエクイティを放棄するなら、こちらにとって好都合です。マニアックらしくコールやレイズをしてきた場合も、こちらのレンジには強いハンドが十分に含まれているため、そこから利益を得られます。広すぎるレンジでベットやレイズをしている以上、その後も安定して強いハンドを持つことはできません。












