なぜ自分のソリューションはGTO Wizardと一致しないのか?
あるスポットを自分で計算し、GTO Wizardと比較したところ、戦略が一致しませんでした。これは何が起きてるんでしょうか?まったく同じ結果にならないのでしょうか?
これは、GTO WizardのDiscordサーバーで特によく寄せられる質問の1つです。
この記事では、初期条件やソルバーのアルゴリズムが少し違うだけで、出力される戦略が大きく変わる理由を検証します。
同じ条件で比較する🍎🍏
ソリューションを比較する前に、まずは条件が揃っているか確認してください。
次の5点を確認します:
- 同じプリフロップレンジを使っているか?
- 同じベットサイズを使っているか?
- 同じレーキ設定を使っているか?
- 同じSPRを使っているか?
- 十分な精度まで計算したか?
初期条件が少し変わるだけでも、バタフライ効果によってソリューションの出力が変化することがあります。ソルバーの出力には、カオス理論のような性質があります。まず、初期条件の違いによって戦略が大きく変わる例を確認します。
では、まったく同じ条件を使った場合はどうでしょうか?
戦略上よく似たスポットでも、ソルバーのアルゴリズムが違えば異なる戦略を出力することがあります。ただし、どちらかの戦略が優れているとは限りません。見た目が大きく異なる戦略でも、実際には極めて近いことがよくあります。EVとエクスプロイトされやすさも、ほぼ同じ水準です。
初期条件が戦略を変える仕組み
例1)ブラインド vs ブラインド:リンプあり/なし
プリフロップレンジが異なれば、ポストフロップ戦略も変わります。それぞれ異なるプリフロップのベットサイズを前提に作られたレンジを使っているなら、同じレンジにはなりません。
SBのRFI比較:500NLキャッシュゲーム、100bbディープ
SBのオープンレンジを、リンプあり/なしで比較します。左がGeneralソリューション、右がSimpleソリューションです。
リンプ戦略によって、RFIは少しポラライズしたレンジになります。左のオープン戦略と比べると、右の戦略には9~T付近の中程度のカードが割合として多く含まれ、ローやハイのカードはわずかに少なくなっています。
たとえばQT8のフロップでは、Generalソリューションが55%の頻度でチェックするのに対し、リンプがなく中程度のカードが多いSimpleソリューションは46%しかチェックしません。
General(プリフロップのリンプあり)
Simple(プリフロップのリンプなし)
例2)SB vs BTNの3ベットポット:異なるプリフロップの3ベットサイズ
Complexソリューションでは、小さい10bbの3ベットサイズと、よりリニアなレンジを使います。3ベットサイズが小さいため、BTNのコールレンジは広くなります。Complexでは複数の小さいベットサイズも使え、このフロップではそれらが戦略に影響します。こうした要因によって、ComplexではSBのCB頻度が高くなり、72%になります。
Generalソリューションでは、大きい12bbの3ベットサイズと、ややポラライズしたトップヘビーなレンジを使います。ベットサイズが大きいため、BTNのコールレンジはタイトになります。Generalで使える最小のベットサイズは33%ポットであり、チェック頻度が高くなります。これらの要因によって、SBのチェック頻度が高くなり、CB頻度は48%になります。
例3)BTN vs BBのSRPレポート:小さいベットサイズあり/なし
この例では、GeneralとBasicで全フロップのCB頻度を比較します。
Generalソリューションで使えるフロップの最小CBサイズは33%ポットであり、ベット頻度が低くなります。BBは大きくポラライズした3ベットサイズを使うため、プリフロップのコールレンジが少し強くなります。戦略上異なる1755種類すべてのフロップでは、BTNのCB頻度は約53%です。
Basicソリューションで使えるフロップの最小CBサイズは27%ポットであり、ベット頻度が高くなります。BBはプリフロップで小さくリニアな3ベットサイズを使うため、コールレンジが少し弱くなります。戦略上異なる1755種類すべてのフロップでは、BTNのCB頻度は合計で約64%です。
注意:ベット頻度が高くても、優れたソリューションであるとは限りません。
ここで、ポーカープレイヤーによく見られる認知バイアスについて触れておきます。ベット頻度が高ければEVも高くなり、そのソリューションは優れていると考えがちですが、実際には違います。
たとえば、BTN vs BBのSRPでAK6rのようなフロップを計算するときに、小さいベットサイズだけを与えると、ソルバーは高頻度でベットします。そこへオーバーベットを追加すると、すべてのバリューをオーバーベットのラインへ移し、チェック頻度が大幅に高くなります。つまり、オーバーベットを追加した戦略の方がEVは高いにもかかわらず、チェック頻度も高くなります。
GTO Wizardのソリューションを再現する
初期条件によって戦略が大きく変わることを確認したので、次はGTO Wizardのシミュレーションを再現します。
この例では、JT5におけるUTG vs BBのSRPを使います。UTGが2.5bbにオープンする500NL General 2.5xソリューションです。自分のソルバーでソリューションを再現するには、次の手順に従ってください。
ツリーの設定
- 上のリンクにある「Ranges」タブから、レンジを直接コピーします。
- ポットを5.5bb、スタックを97.5bbに設定します。
- 後のストリートのオーバーベットを含め、元のソリューションと同様のベットツリーを使います。
- レーキを5%、キャップを0.6bbに設定します。
- 精度をポットの0.3%に設定します。
PioSolverを使う場合は、これらの条件をツリービルダーへそのままコピー&ペーストできます。ただし、GTO Wizardのツリーを完全に再現したものではありません。たとえば、このボードでは使われないドンクベットを省いています。
ツリーを小さくする必要があるなら、使われないベットサイズや戦略上よく似たサイズを省いてください。リバーの複雑さがフロップへ与える影響は、ターンの複雑さより小さくなります。現在のプレイから離れたノードほど、今の判断への影響は小さくなります。
異なるソルバーの結果を比較する
この検証では、上記とまったく同じ条件を使い、GTO Wizard、GTO+、PioSolverの出力を比較します。
GTO Wizard
GTO+
PioSolver(CFRアルゴリズム)
結果の比較
なぜ3つのソルバーから、3通りの結果が出るのでしょうか?
このボードを選んだのは、複数の戦略がほぼ同じEVになるスポットだからです。3つの戦略はすべてプレイできます。どの戦略も、エクスプロイトされる最大値は0.017bbです。これは開始時の5.5bbポットの0.3%に相当します。
正しい戦略は1つとは限らず、複数あることも珍しくありません。
この概念を半円にたとえて考えてみます。円周上の各点が、それぞれ異なる戦略を表します。隣り合う2つの点でも、同じ期待値を持つまったく異なる戦略かもしれません。各点の高さは、そのソリューションがどの程度優れているか、より正確にはどの程度エクスプロイト可能かを表します。拡大するほど、どの戦略が優れているかを見分けるのは難しくなります。
3つのアルゴリズムから同じ戦略を出力させるには、極めて高い精度まで計算する方法があります。ただし、一般的な水準をはるかに超えており、GTO Wizardのような巨大なソリューションライブラリで実行できる範囲でもありません。同じ期待値を持つ複数の均衡が存在する可能性もあるため、それでも同じ出力になる保証はありません。
実戦上、GTOソリューションが常に1つの明確な戦略へ定まるとは限りません。正しいプレイが複数存在することもあります。
この考え方は、ほぼすべての戦略ゲームに当てはまります。たとえば、次のチェスの局面は47プライまで極めて高い精度で計算されています。ソルバーでは、d6、e6、Nf6の3つすべてが同じ期待値0.0になります。それぞれ狙いや戦略は異なりますが、最高レベルでもすべてプレイできます。
ここから何を学ぶべきか?
スポットによっては、同等の戦略がいくつも存在します。入力条件が研究対象の状況を正しく再現していれば、使用するソリューションの細部はそれほど重要ではありません。
特定のノードで正確な戦略にこだわるのではなく、次の3点に注目してください。
- 選んだ戦略をどれだけ正確に実行し、その後のストリートまで一貫してプレイできるか
- 戦略の根底にあるGTOの原則を理解する
- GTO戦略を生み出すエクスプロイトの構造を理解する
まとめ
GTOソルバーの出力が持つカオス的な性質を初めて知った時は、難しく学習から遠ざかるように感じられます。しかし目標はソリューションを暗記することではなく、その戦略の背後にある考え方を理解することです。
丸暗記は不可能なだけでなく、ほとんど役に立ちません。根底にある原則へ注目すれば、初めて遭遇するスポットでもレンジの組み方がはるかに分かりやすくなります。エクスプロイトな調整をするにも、原則の理解が欠かせません。
目標は、戦略の背後にある考え方を理解することです。
GTO Wizardでは、レーキ設定、ベットサイズ、スタックサイズなど数多くのソリューションを提供しています。似たソリューションを比較し、戦略が変わる理由を確認しましょう。ソリューションの違いと、それぞれの変化がどう組み合わさって異なる戦略を生むのかを考えてください。「何を」より「なぜ」を理解することが重要です。ソリューションを比較すれば、長期的にはGTOをさらに深く理解できます。















