プロファイル別エクスプロイト 第1回|コーリングステーション
はじめに
プレイヤープロファイルはノードロックのように単一ノードの単一の偏りを扱うのではなく、プレイヤーの傾向をまるごと相手にしたエクスプロイトを検証できます。プロファイルとカスタムレポートを組み合わせることで、よくいるタイプのプレイヤーをどうエクスプロイトすべきかという仮説を検証し、どうプレイすべきかの指針を見つけられます。
本記事では、コーリングステーションに絞ってどうエクスプロイトすべきかを探ります。そこでまずは、プレイヤープロファイルとは何か、何ができて何ができないのかを押さえておきましょう。
プレイヤープロファイルの限界
一律に適用される
「コーリングステーション」と聞けば、頭の中に何かしらのイメージが浮かぶはずです。プレイヤープロファイルの「Calling Station」はそのイメージをモデル化していますが、プロファイルはあくまで大雑把なものです。仕組みとしては、特定のアクションへのインセンティブをプレイヤーに上乗せします。コーリングステーションの場合、アルゴリズムはチェックとコールのインセンティブを増やし、ベットとレイズのインセンティブを減らします。
このインセンティブは、他の条件に関係なく、ポストフロップの全ての意思決定ポイントに一律で適用されます。現実の人間なら、あるタイプのハンド(たとえばオーバーペア)はベットしやすく、別のタイプ(ドローなど)はチェックしやすい、といった濃淡があるはずです。プロファイルには、その濃淡がありません。どのタイプのハンドも、まったく同じ度合いでベットやチェックに寄ります。
先のストリートを見据えない
プレイヤープロファイルは、先のストリートを見据えません。つまり、ターンでコールしすぎる相手への最適なターン戦略を計算するとき、その相手がリバーをどうプレイするかは一切仮定しません。ターンでベットし、コールされ、リバーのカードが開いて、いざリバーの最適戦略を計算する段になって初めて、「相手はコールしすぎる」という仮定が入ります。
本記事では、プレイヤープロファイルを指すときは英語表記の「Calling Station」、この特徴を持つ人間のプレイヤーを指すときはカタカナの「コーリングステーション」と書き分けます。プロファイルは現実の人間の振る舞いを完全には再現しない、という注意書きの代わりです。
検証の設定
- まず、UTG対BTNの100bb SRPを対象に、BTNがCalling StationのときとGTOの相手のときとで、フロップのCB戦略がどう違うかを比べるカスタムレポートを2つ作ります。
- 次に、特定のターンとリバーのシナリオを比較し、後のストリートで戦略がどう展開するかを確認します。
カスタムのポストフロップソリューションでは、プリフロップの開始レンジを自分で決める必要があります。 今回は、自分(UTG)のレンジにはこの設定のGTO戦略をそのまま使い、Calling Station(BTN)のレンジにはわずかな調整を加えます。混合戦略はすべて、レイズやフォールドよりコールを優先するよう単純化します。ポストフロップの重み付けほど大胆な調整にはなりませんが、人間がプリフロップをどう打つかについての強い仮定に頼らずにすみます。
OOPからのCB
コールしすぎる相手に、しかもOOPから、ベット頻度が上がるのはなぜでしょうか。
ここでは2つの要因が働いています。
- Calling Stationのプリフロップのコールレンジが弱すぎるため、こちらがフロップでエクイティアドバンテージを得やすくなります。相手が弱いハンドを持っている場面が増えるので、ベットのインセンティブが上がります。相手の選択肢は、そのエクイティを即座に捨てるか、コールして弱いレンジのままターンへ進むかです。こちらとしてはどちらでも構いません。
- Calling Stationがターンをどう打つかを仮定しなくても(前述のとおり、この仮定はフロップ戦略には入っていません)、相手はフロップと同じく、弱すぎるレンジのせいで不利な状態からターンを始めます。こちらがベットすれば、相手は同じ板挟みの状況になります。エクイティを捨てるか、弱いレンジでリバーを戦うかです。言い換えると、相手のコールしたレンジはエクイティも低く、EQRも低いので、こちらが多少弱いハンドでベットしていても、あまり気になりません。
たとえばQ♣6♦2♠でこちらがベットする一番低いクラスのエクイティがT♠8♠です。対するCalling Stationは9♠7♠。これに勝っているのはもちろん、相手のセカンドペア、サードペア、スモールポケットペアに対しても十分に戦えます。これらのハンドは、後のストリートでこちらのバリューベットにペイオフするか、ブラフにフォールドしてくれます。
ベットサイズ
注目したいのは、ベットがほぼ小さいサイズで、40%ポット以下がほとんどを占める点です。「コーリングステーションにはモンスターハンドを待って大きく打つのが一番」という神話は、これで崩れます。
モンスターハンドを待って大きく打つのは、コーリングステーションに勝つひとつの方法ではあっても、最も利益的な方法ではありません。
コーリングステーション相手には、特別強いハンドでなくても有利に立てるスポットがたくさんあります。それに、大半のコーリングステーションでさえ、小さいベットより大きいベットには多めに降りるべきだと分かっています。(ほぼ)確実な場面だけを待っていては多くの機会を逃しますし、モンスターハンドの稼ぎが最大になるとも限りません。序盤のストリートを小さいベットで進めれば、相手のレンジを広いまま保てて、とどめを刺す前に、レンジの下限からより多くのバリューを引き出せます。
小さいベットの原則にも例外はあります。ローペアボードなど、UTGのナッツアドバンテージが特に際立つ一部のフロップです。
ターンでのバレル
QJ5rは、GTOの相手よりCalling Station相手のほうがUTGのCB頻度が上がる良い例です。25%ポットのベットに限定すると、UTGはCalling Stationにはレンジの83%をベットします。GTOの相手には71%です。40%ポットのサイズも追加するとCalling Station相手にはそちらも多く使いますが、比較のため、ここではGTOの相手に最もよく使われる25%ポットに限定します。
フロップでは、Calling Station相手のほうがUTGのベット頻度が高くなるのを見てきました。ところがQ♥J♦5♣で25%ポットがコールされた後、2♠のターンでは、Calling StationよりGTOの相手へのバレルのほうが多く、ベットサイズも大きくなります。
アグレッションここで逆転するのは、なぜだと思いますか。
OOPからのCB
分からなくても心配は要りません(私も悩みました)。最終的にヒントになったのは、UTGのレンジ構成の比較です。
最も分かりやすい違いは、Calling Station相手のUTGのレンジには、エクイティの高いハンドが多く含まれている点です。
GTOの相手に対してUTGがはっきり多くベットするハンドは2種類あります。(1)ピュアブラフと、(2)シンバリューです。
(1) ブラフ
GTOに対してターンのブラフが増える理由は、いちばん分かりやすいところです。コーリングステーションはフォールドしにくく、残りが1ストリートしかない今、セミブラフのエクイティは目減りし、後でBTNを降ろせる望みも小さくなっています。加えて、GTO相手にはシンバリューベットが多いぶん、ブラフも増やすインセンティブが働きます。
(2) シンバリュー
シンバリューのほうは、少し難しくなります。Calling Station相手のほうがシンバリューを取れるはずだ、と思うかもしれません。
この区分に入るのは、主にセカンドペア(Jx)です。ベットしてコールされると、リバーのプレイに困ります。厄介なのは、チェックしてベットをされても同じく困る点です。OOPではポットコントロールをしにくく、チェックしてもリバーをタダで見られる保証がないため、一般的にはシンバリューベットを打つのが正解になります。
ところがCalling Stationはベット頻度が低いので、AJをチェックしてもタダでリバーを見られる可能性が高くなります。均衡でときどき選んでいた「まだましなほう」の選択肢を、あえて選ぶ理由が薄れます。
これが先ほどの問いの答えに繋がります。Calling Station相手にUTGのベットが減るのは、ベットされる機会が大幅に減ると考えられるからです。そのぶん、そこそこのハンドの多くは、エクイティを実現しやすいチェックを選びます。
リバーでのトリプルバレル
2♠のターンでUTGが67%ポットをベットし(レンジの分割が交絡変数にならないよう、均衡でしか使われない196%ポットの選択肢は外しました)、リバーに7♦が落ちたとします。ここでは、GTOの相手よりCalling Stationに対してのほうが、ベット頻度が高くなります。ターンとは違いましたが、これは予想どおりかもしれません。
ここには他にも面白い傾向があります。どこだと思いますか?
GTO相手には、UTGのレンジ上位は4つのはっきり異なる戦略を取ります。
- QQは、大きいベットにコールするBTNのレンジを強くブロックしているため、トラップとして小さくベットします。
- それ以外の強いハンド(AQより強いすべて)はオーバーベットします。
- コンボ数の多いAQは、ベットが来たらコールする前提で、ほぼチェックします。
- 残りのQxはブロックベットします(オールインにはほぼ降りる前提です)。
GTO相手には、UTGはほぼ25%ポットか150%ポットのどちらかでベットし、ミドルサイズを使うのはごく僅かです。
Calling Stationには、100%ポットと40%ポットのサイズが最もよく使われます。ブロックベットもあるものの、オーバーベットは一切ありません。Calling Station相手にこそ大きめのバリューベットを打ちそうなだけに、意外な結果かもしれません。
実際のところ、オーバーベットこそ使わないものの、UTGのバリューベットは強気になっています。先ほどの4つの戦略を、Calling Station相手で見直してみましょう。
- QQは、ブロックベットと大きめのベットを使い分けます。ルースさだけでなくパッシブさへのエクスプロイトでもあります。GTOと違って、ブロックベットにあまりレイズしてこないからです。
- AQより強い他のハンドは、ほぼチェックかポットサイズのベットで、オーバーベットはめったにしません。
- AQはチェックではなく、ほぼ40%ポットのベットをします。QQと同じく、ルースすぎてパッシブすぎる傾向の両方を突いた攻め寄りの調整です。
- 弱めのQxはブロックベットしますが、AJも頻繁にブロックベットに加わり、KJも少し頻度があります。前述のとおり、バリューの基準を下げるのは、Calling Stationへの最重要のエクスプロイトのひとつです。
それでも謎は残ります。JJやAAのようなハンドのバリューベットが、GTOの相手よりCalling Station相手のほうが小さくなるのはなぜでしょうか。
答えは、Calling Stationの前のストリートの打ち方にあります。強いハンドをスロープレイする頻度がずっと高いため、このラインでは、JJやQJのようなエクイティの高いハンドをGTOプレイヤーよりはるかに多く持ってリバーに到達します。コールしすぎる相手とはいえ、バリューベットのつもりでベットして、格上のハンドにコールされることもあります。パッシブなラインを通ってきたせいで、思いもよらない強いハンドがリバーに残っていることが多いからです。
ブラフ
もうひとつの神話も片付けましょう。「コーリングステーションには絶対ブラフするな」という定説です。
実際には、前のストリートでルースにコールしてくるぶん、Calling Stationは弱いドローやペアを偏って多く抱えたままリバーに到達します。BTNが多少しつこく残ってくることを考慮しても、UTGは、ミスしたドローにショーダウンでも勝てないような弱いハンドの多くをブラフにします。理由は2つあります。
- コーリングステーションはGTOよりコールが多い一方で、レイズは少なくなります。そしてブラフレイズは、ブラフに対する戦略として重要になります。
- 弱いハンドで打つ小さいブラフは、BTNがまともなハンドを降りてくれることを当てにしていません。相手も完成しなかったトラッシュを持っていて、それでもショーダウンならこちらのトラッシュに勝つ。その場面を拾えれば十分です。だからこそ、この理屈は自分の最も弱いクラスのハンドにだけ当てはまります。
UTGは、ATほどの強さのハンド(外れたKTやT9にはショーダウンで勝てるハンド)でも、より大きく強気のブラフを打ちます。ただし注意したいのは、このシミュレーションのCalling Stationは、リバーのポットサイズのベットに対してKQやAQのフォールドを混ぜてくる点です。現実の相手からそのフォールドを引き出せる見込みがないなら、強気のブラフにはブレーキをかけ、最強クラスのハンドでバリューを取ることに集中すべきです。
まとめ
ポーカーではよくあることですが、コーリングステーションへの「分かりやすい」エクスプロイトが、最善のエクスプロイトとは限りません。ブラフを全体的に減らすべきなのは確かでも、最弱のトラッシュでのリバーブラフや、序盤のストリートでのセミブラフは、依然として利益的です。
「モンスターハンドを待って、バリューベットで搾り取れ」は、はっきり言って悪いアドバイスです。実際には、コーリングステーション相手にはシンバリューベットを多くすべきで、サイズも大きい必要はありません。シンバリューベットもセミブラフも、大きいベットにコールするレンジより、小さいベットにコールするレンジに対してのほうがよく機能します。
また、トラップのチェックやブロックベット、脆弱なマージナルハンドでのターンリードといった、ブラフへの備えもあまり要らなくなります。コーリングステーション相手には素直にプレイするのが基本です。良いハンドはベットし、そこそこのハンドはチェックする。ただし、「ベットに値する強さ」の基準は下げるべきです。相手の「コールに値する強さ」の基準が低いからです。











