3wayポットでコーリングステーションをエクスプロイトする
はじめに
以前私が書いた記事「3ウェイポットで挟まれたときの戦い方」では、CO・BTN・BBの3wayポットのGTOソリューションを検証しました。Ts7h4sのフロップで、BTNはCOの小さいCBに対してレイズすることでBBのフォールドを最大40%も増やせるため、レイズに傾く、という話をしました。
こういった話をしたところ、Chrisという読者から指摘が届きました。実際の人間のプレイヤーは、BBでそこまでタイトにフォールドしないのではないか。そうだとしたら、BTNの戦略はどう変わるのか。ではこの件について深掘りしましょう。
仮説の検証
Chrisの質問は、ひとつの問いに答えると、そこから新たな問いや仮説が生まれてくるという良い例です。そしていざ検証してみると、口で言うほど単純ではないと痛感しました。
Chris自身は仮説を示していなかったので、「人間の相手がそんなに降りるはずがない」と疑う人に代わって、私が立ててみます。
BTNのレイズの利益はBBの大きなフォールドから生まれている。だとすれば、BBがなかなか降りないプレイヤーなら、BTNのレイズ頻度は下がるはずだ。
初めは簡単に思えました。BBにコーリングステーションのプレイヤープロファイルを適用し、他の設定はそのままにして、COのCBに対するBTNの反応を元のシミュレーションと比較する。それだけです。
後ろにコーリングステーションがいると、BTNはCBへのコールを減らし、レイズとフォールドの両方を増やします。レイズするときは引き続き小さいサイズを好みますが、66%ポットのレイズ頻度は、BBがGTOプレイヤーのときの2倍になります。
ただし、ここには見逃せない点があります。
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BBがコーリングステーションだと、COのCB戦略も変わります。元のシミュレーションでは、COは25%ポットと50%ポットを使い分け、小さいほうをやや好んでいました。ところがBBがコーリングステーションになると、ほぼ100%50%ポットベットをします。COのベットレンジの変化は交絡変数となり、BTNの戦略の変化のどこまでがBBによるものなのか、切り分けを難しくします。
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コーリングステーションのプロファイルを適用しても、BBはBTNのレイズに対して、ドローやトップペアをかなりフォールドします。つまりこの実験では、Chrisの疑問に完全には答えられていません。
ただし、どちらの点も、この検証が「失敗」だったことを意味するわけではありません。ポッドキャストで相方を務めるCarlos Welchの口癖を借りましょう。
ソルバーは、質問にはいつも正しく答える。正しい質問を投げかけるのが、あなたの仕事だ。
今回私が投げかけたのは、「BBが少しルースパッシブで、COがそれに合わせて大きいベットサイズを使えるとしたら、小さいCBへのBTNの対応はどう変わるか」という質問でした。質問として悪くはありませんが、この検証を始めるきっかけとなった質問とは別です。やり直しましょう。
サイズをひとつに固定する
新しいシングルサイズソリューションを使えば、COがCBサイズを変えてしまう問題を取り除けます。COは、BBがコーリングステーションであることに合わせてCB戦略調整しますが、複数のサイズを使い分ける心配はなくなります。
シングルサイズソリューションにプレイヤープロファイルは適用できませんが、ベットオプションを揃えたカスタムソリューションを作れば、実質的に同じことができます。トップペア、オープンエンドのストレートドロー、フラッシュドローを一切フォールドしないようにノードロックして、BBを極端にルースなプレイヤーに仕立てます。
すると最初の検証と同様に、BTNのフォールドはわずかに増えます。そして今回は、レイズが大幅に増えます。GTOプレイヤーが後ろにいる場合は13%のところ、ルースなBBには19%のハンドでレイズします。
この差の一部はCOのベット戦略の変化から来ている可能性もあります。COのベット頻度は、GTOのBB相手で23%、コーリングステーションのBB相手で31%です。しかし、レンジの中身(Best/Good/Weakハンドの比率)はほぼ同一で、COのエクイティはどちらも変わりません。
つまり、BTNが増やしたレイズは、コーリングステーションのBBを狙い撃ちにしたものだと考えられます。何をしようとしているのか、詳しく見ていきましょう。
BTNのレイズ戦略
BBが極端にルースな場合、BTNはスロープレイを減らし、シンバリュー寄りのレイズを増やします。BBがGTOなら、BTNは77と44をほぼスロープレイします(プリフロップのコールレンジにTTは含まれない)。BBのトップペアを降ろしたくないからです。ところがBBが「トップペアを絶対にフォールドしない」とノードロックされると、これらのハンドはレイズ候補に変わります(スペードを含まない77のコンボだけは例外)。
また、後ろにコーリングステーションがいると、BTNはAT、KT、QTのレイズも増やします。一方でJTだけは、わずかにレイズ頻度が下がります。
この理由は直感に反するかもしれません。GTOのBBは、レイズに対してTxの大半をフォールドします。一部のKTさえ降ります。つまりこの相手にJTやQTでレイズすると、ドローのエクイティを奪えるだけでなく、ときには自分をドミネイトするトップペアまで降ろせます。これ以上ない結果です。
相手がコーリングステーションだと、QTのレイズにそうしたフォールドエクイティはありません。代わりに、自分がドミネイトしているトップペアがコールしてくれます。ドローのエクイティを奪えるに越したことはありませんが、コールされても大した問題ではありません。ドローの多くはアウツが8枚以下だからです。一方、BBがQTさえ降りないとなると(KTならなおさらです)、JTのレイズは旨味が薄れます。ドミネイトしているトップペアからコールをもらえることはあっても、ドミネイトされているハンドにレイズしてしまうリスクを埋め合わせるほどではありません。
エクイティを奪うということ
以前の記事では、BTNがCOのCBをレイズするインセンティブの多くは、BBのエクイティを奪うことにある、と論じました。ところが今回見たとおり、ドローを追う機会を絶対に手放さないルースなBBが相手だと、BTNはむしろアグレッシブにレイズします。この記事の内容を撤回すべきでしょうか。
いいえ。むしろ、相手のエクイティを奪うことについて学ぶ良い機会です。
相手が降りてくれると得だからといって、コールされたら損だとは限らない。
BTNがレイズで本当にやっているのは、BBがエクイティを実現するために払う代償を引き上げることです。BBが合理的で利益を重視するプレイヤーなら、こうしたレイズに対し、たとえBTNのレイズレンジに対して十分なエクイティを持つハンドでも、先ほどのドローやトップペアを正しくフォールドします。安いコールでエクイティを実現させてしまうより、ここで奪うほうがBTNには得だからです。
BTNにとってさらにありがたいのは、利益にこだわらないBBが、エクイティの実現に高すぎる代償を払ってくれる場合です。ここでBTNには、新しいレイズの動機が生まれます。エクイティを奪うためではなく、ルースなプレイヤーのミスから利益を上げるためのレイズです。
エクイティアドバンテージがあるときのベット(今回ならレイズ)は、必ずしも相手の反応をエクスプロイトするためではありません。本質は、どう応じても良い結果にならない板挟みに相手を追い込むことにあります。相手はエクイティを諦めてフォールドするか、高すぎる代償を払うかの二択を迫られます。片方はもう片方よりましでも、どちらも「安くエクイティを実現する」には遠く及びません。そしてBTNがレイズしなければ、その機会を相手に与えてしまいます。









