相手のタイプで変わるオールイン戦略
先日、GTO Wizardでカスタムマルチウェイプリフロップソルビングのリリースがあり、ちょうどとあるテーマを検証したく、さっそく新機能を試してみることにしました。
それは、ショートスタックでのプレイです。中でも「オープンする時に、ミニマムレイズとオールインをどう使い分けるべきか」についてです。MTTでスタックが25bb以下のショートスタックになると、ソルバーはプリフロップでオールインレンジを作り始めます。特にレイトポジションでは多く見られます。
オールインが最も得なハンドもあれば、通常の(オールインではない)オープンのほうが良いハンドもあります。これが相手の傾向によってどう変化するのか、今回は検証してみます。コーリングステーション相手にはオープンオールインを増やすべきか、それともミニマムレイズが得か。ニットが相手だと、全体の頻度はどう変わるのか。カスタムプリフロップソルビングを使うことで、こうした問いを検証できます。
ミニマムレイズか、オールインか
新機能の使い方に入る前に、まずはGTO戦略を見ておきましょう。エフェクティブスタック20bbで、BTNまでフォールドで回ってきたときのBTNのレンジ(チップEV)です。ビッグブラインドアンティありの設定です。
42.5%というかなり広いオープンレンジで、そのうち約4分の1がオールインです。
スモールペアでオールインするのは、残り3人の中ではベストハンドでありながら、ポストフロップでエクイティを実現しにくく、オーバーカードを降ろす利益が大きいからです。フロップが開いた後は、まだベストハンドかもしれないのにフォールドを強いられる場面が多くなります。
Axも似た理由でオールインします。現時点ではベストハンドであることが多い一方、フロップが開くとなかなか。ただしスモールペアとの大きな違いとして、Axはブロッカー効果が強く、プリフロップでポットを取れる可能性が高くなります。
そしてもう一つ、ミドルのスーテッドコネクター(JTsやT9sなど)と呼べるハンドがあります。非常に多機能なハンドです。自分より強いハンドを降ろせて、コールしてくる最強クラスのハンドの一部をブロックし、コールされてもほとんどのにそれなりのエクイティがあります。
次にオールインに対するSBのコール/フォールドを見てみます(BBの反応もほぼ同じです)。
まず、SBはAxの一部をフォールドします。自分がオールインしたAx lowにとってはありがたい結果です。KJも多くはフォールドするので、JTs系のハンドにとっても良いでしょう。さらにQ7sや96oのようなオーバーカードを大量にフォールドさせるので、スモールペアにとっては嬉しい結果です。
コールしてくるハンドを見ると、Aが多く含まれていることがわかります。こちらのAxは、相手のAxをします。またコールレンジの大半はペア未満なのでスモールペアでも勝ち目が十分にあります。そして、コールしてくるのはポケットペアかAxがほとんどで、スーテッドコネクターのブラフ(T9sなど)は、これらに対してまだ意外と戦うことができます。
ここでまず、BTNのミニマムレイズに対するSB(1枚目)とBB(2枚目)の反応をざっと見ておきましょう。
SBは、ほぼオールインかフォールドの戦略となります(オールインするのは上位26.5%のハンド)。ショートスタックなので、スタックを賭けリスクは相対的に小さく、OOPであるためコールの価値は下がります。BBにとってはコールがずっと現実的な選択肢になるため、レイズ頻度はSBに迫るもののわずかに届きません。より魅力的なオッズでコールでき、後ろから横槍を入れられる心配もありません。70.5%のハンドがコールを選びます。
GTO Wizardのプレイヤープロファイル
新しいプリフロップノードロックの最も便利な点のひとつが、プレイヤーにプロファイルを適用し、GTOからの逸脱を考慮して計算できることです。複数のプレイヤープロファイルがあり、本記事ではコーリングステーション、ニット、マニアックを使います。自作のカスタムプロファイルも作れます。プリセットの一覧が以下です。
今回は、エフェクティブ20bb・ビッグブラインドアンティありのBTN対SB対BBのスポットで、何個かのシミュレーションを検証します。ブラインドの片方または両方にプロファイルを適用し、エクスプロイトする側のBTNが戦略をどう変えるかを確かめます。最初はニットです。
相手がニットの場合
ニットの特徴は、パッシブで、アグレッシブなアクションに対してよく降りることです。GTOと比べて、フォールドが増えレイズが減る形で現れるはずです。
以下は、ニットが1人または2人いる各組み合わせに対する、BTNのオープンの全パターンです。
全体として、オープン頻度は上がります。ニットが降りすぎるなら、レイズを増やすことで、相手がテーブルに残EVを拾えます。
一方、オープンオールインの割合は、ほとんどのケースで小さくなります。それミニマムレイズで相手が十分すぎるほど降りてくれるなら、全スタックを賭けるようなリスクの大きいアクション選びにくくなります。リスクとリターンの釣り合いは、ミニマムレイズよりオールインのほうがずっと悪いからです。そして、ニットは3ベットの頻度も低いため、BTNの脆弱なハンドがフロップを見て、エクイティを実現できる機会が増えます。
両方がニットだと、アグレッシブなアクションの頻度は大幅に上がります。ルースにする動機が実質2倍になる、オープンする側にとって夢のようなスポットです。
普段オープンオールインするハンドは、いずれも自分がオールインを被せられるのを嫌うハンドです。ニット相手ならその心配が大きく減るため、BTNのオールインは少なくなります。
最後に注目したいのは、ニットが1人の場合、BBがニットのときのほうがが大きくなる点です。BBはそもそもディフェンスレンジがずっと広く、参加してくる可能性が最も高いプレイヤーです。そのBBがエクスプロイト可能なら、こちらの調整が大きくなるのも頷けます。
相手がコーリングステーションの場合
同じ手順で、今度はプロファイルをコーリングステーションに替えます。過度にパッシブで、なかなか降りないプレイヤーです。
こちらは少し面白い結果です。まず、SBがコーリングステーションのとき、全体のレイズ頻度は上がります。ところが、BBにコーリングステーションが座ったとたん、レンジは絞られます。前述のとおり、BBはSBよりずっと参加しやすいポジションです。そのポジションにコーリングステーションが座れば、こちらの戦略がGTOから大きく離れるのは理にかなっています。
エクスプロイト可能なプレイヤーが(SBのような手前の席ではなく)BBに座っているときのほうが、こちらの戦略はGTOから大きく離れる。
特定のハンドクラスに注目する
また、コーリングステーション相手にはスモールペアと弱いAxのオールインがやや増え、スーテッドブロードウェイでは逆に減る点も見逃せません。スモールペアは、レンジ1つが相手でもエクイティの実現に苦労するハンドで、レンジ2つが相手ならなおさらです。だからこそオールインで、最低でもヘッズアップに持ち込み、できればそのまま取り切るのが得策になります。
ブラインドの2人がコールしすぎるぶんブロッカーの価値も上がるので、Axのオールインが増えます。一方のスーテッドブロードウェイは、ルースすぎるレンジを相手にマルチウェイで戦うのがまさに得意なハンドなので、通常のオープンのほうが成績が伸びます。コーリングステーションがミニマムレイズに余分にコールしてくるハンドの多くを、スーテッドブロードウェイはドミネイトしているからです。
両方がコーリングステーションのときにオープン頻度が上がるのも、同じ理由だと考えています。大きくなったポットで、ポジションを活かして、エクスプロイト可能な2人からポストフロップのEVを稼げます。フォールドエクイティで失うぶんは、お釣りが来るほど取り返せます。
相手がマニアックの場合
今度のリークはレイズのしすぎで、全体的にギャンブルにも走りやすいタイプです。
マニアックが絡むと、全体のレイズ頻度は最も大きく下がります。レイズを被せられる展開を避けたいハンドは多く、その展開が今や格段に起こりやすくなっているからです。ここでは、そうしたハンドを最初からプレイしないこと。極端な例として、マニアック2人が相手のとき、BTNのミニマムレイズは約10%と、GTOの3分の1まで減ります。
最も大きな違いは、オールインが大幅に増えることです。後ろのプレイヤーがアグレッシブになるほど、オープンオールインの頻度も上がる傾向が見て取れます。SBがマニアックだと少し増え、BBがマニアックだとさらに増え、両方がマニアックのときに最多になります(ミニマムレイズを上回るほどです)。
このシチュエーションはサテライトと似ています。オールインを被せられて飛ぶかどうかのスポットでは、先手を打って自分からオールインするようになります。相手にとっても、オールインを突きつけられるのは同じくらい嫌なはずです。オールインするハンドの種類は変わらず、頻度だけが上がります。
相手にブラフがない場合
カスタムプロファイルは非常に便利で、ここまでで多くのことが分かりました。ただし注意したいのは、ここでのプロファイルはハンデを抱えたなりに最適化してくる点です。現実で出会うニットやコーリングステーション、マニアックよりも、ずっと「注意深く」、戦略も柔軟です。実際のプレイヤーは、もっと戦略の変更に対して気付かず、あまり対応してきません。
実際の相手の手の内をしっかり読めているなら、それをカスタムプリフロップソリューションにノードロックして対応を見るべきです。
ライブのソフトなテーブルでよく見かけるリークで、実際に検証してみましょう。プリフロップの3ベットをバリューハンドだけで行い、ブラフを一切入れないプレイヤーです。オープンに対する2人の反応を、次のようにノードロックしました。
今回も、考えられる全パターンで特定の設定しました。SBだけブラフなし、BBだけブラフなし、両方ブラフなし、の3通りです。
各シナリオの戦略を見る前に、一度どう変化するのか考えてみましょう。
どちらの組み合わせに対して、より広くオープンすべきだと思いますか。SBにプリフロップのブラフがないときでしょうか、それともBBのときでしょうか。理由もあわせて考えてみてください。
まず、オープンレンジの広がり方に注目してください。マニアック2人が相手のとき、AIソルバーのオープンは約11%でした。ところがプリフロップでブラフしない2人が相手なら、76%までオープンを広げられます。
ソルバーは、SBがブラフしないときに、より広くオープンします。SBは、オールインを多くするポジションだからです。均衡では、コールでアクションを閉じたがるBBと比べて、SBのほうがオープンにレイズすることが多くなります。そのSBがバリューのみのレイズに固定されると、(GTOと比べた)アグレッシブなアクションの減り幅が最も大きくなるため、こちらは最大限オープンを広げられます。
肝心なのは、戦略からオールインがほぼ消えている点です。プリフロップでブラフレイズに降ろされる心配が、もう無いからです。コールされればレンジはキャップされていると分かり、オールインされればレンジの最上位だと分かるので、こちらもレンジの最上位以外をすべて降りればすみます。オールインでプリフロップのポットを取りにいく理由はもはや無く、むしろ積極的にポストフロップへ進めたい状況です。
ニットとマニアックが同卓した時
最後の検証として、2種類のプロファイルを混ぜてみます。SBにニット、BBにマニアックを置きます。
結果を見る前の仮説では、2つのタイプは実質的に打ち消し合うだろうと思っていました。ニットにはオープンを増やしたく、マニアックには減らしたいので、GTOに近いところへ落ち着くはずだ、と。
この仮説は、全体の頻度で見ればそう外れていません。GTOのオープンが42.5%のところ、この2人が相手なら41.8%です。ところがオールインに限ると、大きな違いが出ます。エクスプロイト可能な相手が2人いると、オールインは大幅に増えます。マニアックの影響でしょう。ソルバーから学んだ大きな教訓のひとつが、「リレイズされる展開は極力避ける。エクイティを捨てて降りるのは高くつくから」という考え方です。エクイティを奪われるこの側面があるため、こちらの戦略への影響は、ニットよりマニアックの存在のほうが大きくなります。
ポジションも非常に重要です。ニットとマニアックを入れ替える(ニットをBB、マニアックをSBにする)と、BTNのオープン戦略は下記のようになります。
こちらはGTOソリューションにかなり近く、全体のオールインレンジはむしろわずかに増えています。正反対のプロファイル同士が打ち消し合う、という当初の読みは、今回のほうがずっと近い結果になりました。ここでもやはり、最も参加しやすいプレイヤーであるBBのリークへの適応が優先される、と言えそうです。
まとめ
どこまで広くオープンできるかを決める最大の要因は、相手の3ベットのアグレッシブさです。ニットでもコーリングステーションでも、プリフロップでブラフしないプレイヤーでも、広くオープンできました。共通するのはパッシブさです。相手が過度にアグレッシブなときだけ、多くのハンドでエクイティを実現できなくなり、オープンは控えめになります。
オールインの主役は、エクイティは十分にあるのに、それをうまく実現できないハンドです。後ろにアグレッシブなプレイヤーがいるときや、なかなか降りないプレイヤーが複数いるときは、オールインを増やす方向に戻ります。プリフロップでポットを取り切れれば十分ですし、リレイズされたり、扱いにくいハンドをポストフロップでプレイしたりせずにすみます。
最後に、明確なリークを持つプレイヤーが複数残っている場合は、最もアクションしてきやすいプレイヤーに合わせて調整します。多くの場合はブラインドの2人です。すでにチップを投じているからです。そして当然、最も対戦しやすいのは、一番良いオッズでアクションを閉じられるBBです。




















































