ディフェンスでレイズが果たす役割
「ポーカーにおけるディフェンス」は、想像以上に複雑な概念です。そもそも「何に対してディフェンスするのか?」という疑問があります。
ディフェンスという言葉は一般的に、相手のブラフを利益の出ないものにするプレイとして使われます。しかしそう定義した途端、別の疑問が生まれます——「ブラフとは何か?」
リバーなら答えは簡単です。リバーブラフとは、ショーダウンバリューがほとんどない弱いハンドでベットし、より強いハンドを降ろそうとするプレイです。
しかしフロップやターンでは話が変わります。エクイティがほぼゼロのハンドなど滅多に存在しません。相手の「ブラフ候補」の多くは実質的にセミブラフ——強いドロー、オーバーカード、ガットショットなど、様々な形をとります。各ハンドクラスへの理想的なディフェンスはそれぞれ異なるため、現実的な対応を考える際には、それぞれの理想の対応に折り合いをつける作業が必要です。さらに、シンバリューベットへの対応という問題も加わります。
「ディフェンス」とは、特定のハンドタイプのベットに対して相手をインディファレントにすることだけではありません。相手レンジのできる限り多くのハンドに、難しい判断を迫ることです。
この記事では、さまざまなベットに対するディフェンスにおいて、レイズが果たす役割を掘り下げます。まずはハンドバリューが固定されたシンプルなリバーから始め、続いてハンドバリューが変化する、より複雑なフロップのシナリオへと進みます。
リバーでのディフェンス
今回は、8人テーブル・100bbのキャッシュゲームを例に見ていきます。
UTGがミニレイズ、BTNがコールしてヘッズアップでK♥9♦6♦フロップです。UTGが65%ポットベット、BTNがコール。2♣ターンで両者チェックし、リバーはJ♠。UTGが66%ポットベットします。
まずここで、BTNのこのリバーベットへの対応について、以下のことを考えてみてください。
- BTNの最低ディフェンス頻度(MDF)はいくつか?
- BTNがこの頻度を下回るディフェンスしかしない場合、UTGはどうエクスプロイトできるか?
- BTNは主にコールとレイズ、どちらでディフェンスすると思うか?
- 66%ポットベットにMDFの公式〔1-ベット額÷(ベット額+ポット額)〕を当てはめると、〔1-66÷(66+100)〕=60%となります。BTNはレンジの約60%をディフェンスする必要があり、40%を超えてフォールドすると、UTGの最弱ハンドがブラフで利益を出せるようになります。
- BTNのディフェンスが不十分な場合、UTGの主なエクスプロイトはブラフ頻度を増やすことです。BTNの対応次第では、本来ベットするはずだったマージナルなバリューハンドの一部をチェックに回す調整も考えられます。
- 均衡では、BTNは主にコールでディフェンスします。ただし、バリューハンドのQT、ブラフのQQ/TTで構成される狭いレイズレンジも持ちます。UTGのQTを大きくブロックするハンドです。
BTNのフォールド頻度は約41%と、MDFが示す40%をわずかに上回っています。これはブロッカーの影響です。フォールド頻度が高めに見えるにもかかわらず、UTGはミスしたフラッシュドローではブラフしません。これらのハンドがBTNのフォールドレンジの多くをブロックしているからです。
レイズは何に対してディフェンスするのか?
レイズの役割を理解するには、その選択肢を封じて何が変わるか確認するのが効果的です。続きを読む前に、以下のことを考えてみてください。
- UTGのベット戦略を固定した場合(BTNのレイズ不足をエクスプロイトしないように)、レイズが禁止されたBTNのフォールド頻度は、先ほどの均衡と比べて増えるか、減るか、変わらないか?
- BTNのレイズ不足をエクスプロイトするために、UTGはどう戦略を調整できるか?
(1) BTNのフォールド頻度はわずかに増加します。UTGのベットレンジが固定された時点で、BTNはエクスプロイトされるリスクがなくなり、MDFを守る必要もなくなります。その結果、均衡ではブラフレイズとして機能していたQQやTTのEVが下がり、一部がフォールドへとシフトします。レイズを避けることは、相手にEVをプレゼントしているのと同じです。
(2) UTGはシンバリューベットの頻度を増やし、それに比例してブラフでバランスを取るようになります。
これら2つの関係を押さえておくことが重要です。
BTNのリバーフォールド頻度が、UTGのリバーブラフ頻度を決めます。
ブラフはコールされても、レイズされても負けます。そのため、BTNのフォールド頻度がほぼ同じである限り、BTNがコールとレイズをどの割合で使おうとも、UTGのブラフ頻度は変わりません。
BTNのレイズ頻度が、UTGのバリューベット頻度を決めます。
UTGのシンバリューベットはレイズされるのを最も嫌います。ブロッカー次第ですが、バランスのとれたポラライズされたレンジからのレイズは、シンバリューベットをEVゼロのブラフキャッチャー(コールとフォールドの混合)、あるいはわずかに有利なコールのどれかに変えてしまいます——コールレンジ相手よりもEVが大幅に下がります。
均衡では、マージナルなハンドはバリューベットとチェック(ブラフを誘うため)の間で混合されがちです。レイズのリスクが下がると、そのバランスはベット寄りに傾きます。
リバーより前のストリート
フロップやターンでは、状況はさらに複雑になります。K96ttのフロップでUTGが65%ポットのCベットを打った際のBTNの対応を考えてみましょう。以下の問いに、自分なりの答えを出してから読み進めてください。
(1) BTNのフォールド頻度はMDFが示す40%をわずかに上回っており、UTGはどんなハンドでもベットが利益的になる計算です。それでもUTGは弱いハンドではチェックすることが多く、最弱ハンドの5♠4♠はピュアチェックです。にもかかわらず、なぜBTNはこの有利なブラフの機会を活かさないのでしょうか?
(2) UTGのベットレンジをノードロックしてエクスプロイトできないようにした場合、レイズの禁止がBTNのフォールド頻度に与える影響はどうなるでしょうか?レイズできない場合、BTNのフォールド頻度は増えるか、減るか、変わらないか?
(3) このスポットでBTNがフロップでレイズしない場合、UTGはCB戦略をどう調整してエクスプロイトできるか?
(1) MDFの公式から導き出されるのは、EVゼロのハンドでブラフした場合に相手をインディファレントにするディフェンス頻度です。しかしリバー以前にEVゼロのハンドはほとんど存在しません。5♠4♠でさえ13.6%のエクイティと0.49bbのEVを持っています。BTNのディフェンスがMDFを下回っているということは、ブラフが利益的になることを意味しますが、それがブラフすることが最善手であることを意味するわけではありません。
弱いハンドをチェックする価値の一部は、後のストリートでハンドが改善する可能性から来ています。また、後のストリートでブラフする可能性からも価値が生まれます。価値がないように見えるハンドでも選択肢は多く、最初に目についた選択肢に飛びつかず、すべての選択肢を検討することが重要です。
(2) レイズが禁止された場合、BTNのフォールド頻度は約39%に減少します。リバーではレイズできない場合にフォールドが増えましたが、フロップのダイナミクスははるかに複雑で、逆の結果をもたらします。ターンやリバーがまだ残っているため、BTNがフロップで一切レイズしないという戦略は、その後のすべてのノードにおける両プレイヤーの判断に影響を与えます。
レイズレンジがなくなると、BTNのコールレンジは相対的に強くなります。これによりUTGは後のストリートでより慎重でパッシブなプレイを強いられ、本来フォールドすべきだったBTNの弱いハンドに+EVのコールが生まれます。
つまり、BTNがレイズレンジを持たないことで、フロップでレイズしなかったことによって失ったEVを取り戻そうとするかのように、よりマージナルなハンドでコールを続けざるを得なくなります。
(3) UTGはベット頻度を増やすべきで、特にセミブラフとシンバリューベットが最大の恩恵を受けます。これらはレイズされた時に最も損をするハンドだからです。UTGの強いハンドはむしろ若干不利になります——フロップで強いハンドを作った時にはレイズを期待しているからです。
BTNのレイズの選択肢をなくしてコール頻度が増えた場合、UTGのベット頻度は33%から47%に増加します。さらにBTNのコール頻度を58.3%に固定しレイズも禁止した場合、UTGのベット頻度はさらに64%まで増加します。
まとめ
MDFはあくまで大まかな指標です。EVゼロのハンドに対するディフェンス頻度を示すものに過ぎず、EVゼロのハンドはリバー以前にはほとんど存在しません。
MDFにはもう一つ限界があります——どうディフェンスするかについては何も教えてくれないのです。GTOの核心的な目標は、EVゼロのブラフだけでなく、相手のレンジの多くのハンドに対してインディファレントな状態、つまり良い選択肢を奪い続ける状態を作り出すことです。
レイズはシンバリューベットに対するディフェンスの重要な要素です。リバー以前では、セミブラフに対するディフェンスとしても重要な役割を果たします。
ブラフはレイズレンジの重要な構成要素でもあります。リバーの例でのQQやTTと同様に、レイズはコールでは利益が出ないハンドでも、利益を出しながらディフェンスできる手段になります。
ナッツだけをレイズしても、相手のシンバリューベットを抑止することはできません。相手はレイズに対して安心してフォールドできてしまうからです。さらに、ブラフレイズで利益を出せるハンドの多くはコールできるほど強くないため、レイズレンジにブラフが含まれていないと相手のブラフのEVが上がってしまいます。
ディフェンスはコールだけでは完成しません。レイズがあってこそ、相手のレンジ全体に対してプレッシャーをかけ続けることができるのです。
ブラフレイズの選び方をさらに学びたい方は、GTO Wizard契約者向けにDonk Orleoneの戦略動画ありますのでぜひご覧ください。












