MDFとAlpha
最低ディフェンス頻度(MDF)とAlphaは、特定のベットサイズに対してどれほど広くディフェンスする必要があるかを示す指標です。
- 広くディフェンスしすぎると、相手のバリューベットに大きくエクスプロイトされます。
- タイトにディフェンスしすぎると、相手のブラフに押し切られます。
優れた戦略では、相手のブラフがインディファレントになる最低限の頻度でコールします。
この指標は実戦で使ううえでいくつか問題を抱えていますが、ポーカー理論の基本として広く使われています。
最低ディフェンス頻度とは?
最低ディフェンス頻度とは、相手が持つエクイティ0%のハンドを、ブラフとギブアップでインディファレントにするために必要なコール頻度です。
MDFによって、相手はどのような2枚のカードでも利益的にブラフできなくなります。 ブラフに押し切られないためには、最低限必要な頻度でディフェンスしなければなりません。
MDFは、相手のエクイティ0%のブラフでEVが0になるように設計されたリスク・リワード計算です。
「ディフェンス」に含まれるアクション
ディフェンスとは、そのハンドで参加を続けることです。レイズでディフェンスすることも、コールでディフェンスすることもできます。どちらもディフェンスに含まれます。
MDFの注意点
MDFは、相手のオーバーブラフを防ぐための盾として考えてください。本題に入る前に、ここだけは明確にしておきます。
相手のブラフが足りない場合、MDFを決して使わないでください。
相手が明らかにブラフ不足なら、そのブラフのEVを0にしようとしても意味がありません。盾を下ろし、バリューヘビーな相手には多めにフォールドしてください。 MDFは、相手のブラフに押し切られないための盾としてのみ使います。
Alphaとは?
最低ディフェンス頻度(MDF)が自分を守る盾なら、Alpha(α)は攻撃に使う剣です。
AlphaはMDFと逆の計算です。エクイティ0%のハンドでブラフしたとき、少なくともブレークイーブンにするために必要な相手のフォールド頻度を示します。
Alphaは、自分のブラフをブレークイーブンにするために必要な相手のディフェンス頻度を求めるリスク・リワード計算です。 相手のディフェンス頻度が低いなら問題ありません。ディフェンス頻度が高いなら、そのブラフを見直した方がよいでしょう。
Alpha=1−MDF
MDF=1−Alpha
計算方法
公式
リスクとリワードの計算では、ポットに対するベットサイズから、ブラフをインディファレントにするために必要なディフェンス頻度を求めます。
MDFとAlphaの計算式は簡単です。
Alpha(α)=リスク/(リスク+リワード)
リスク= ブラフでリスクにさらす額
リワード= 相手がフォールドした場合に獲得する額
ベット額とポット額を使う別の公式もあります。この公式はレイズには使えないため(後述)、私は推奨しません。 最初のベットにしか使えませんが、参考として掲載します。
MDF=ポット/(ベット+ポット)
Alpha=ベット/(ベット+ポット)
例題1
$100のポットに$60をベットしました。AlphaとMDFを求めます。
- リスク=$60(ブラフで$60をリスクにさらす)
- リワード=$100(相手がフォールドした場合に獲得する額)
Alpha(α)=リスク/(リスク+リワード)
Alpha(α)=$60/($100+$60)
Alpha(α)=37.5%
ブラフをブレークイーブンにするには、相手を少なくとも37.5%フォールドさせる必要があります。
MDFは1−αで求められます。
今回はMDF=1−37.5%=62.5%です。自分のブラフをブレークイーブンにするには、相手がレンジの少なくとも62.5%をディフェンスする必要があります。 相手のディフェンス頻度がこれより低ければブラフは利益的になり、高ければ損失が出ます。
例題2
$100のポットに$60をベットしたところ、相手に$200までレイズされました。自分のMDFと相手のAlphaを求めます。
相手は$100+$60のポットを獲得するために、$200をリスクにさらしています。
Alpha(α)=リスク/(リスク+リワード)
Alpha(α)=$200/($200+$160)
Alpha(α)=55.5%
MDF=1−α=44.5%
相手がどのような2枚のカードでも利益的にブラフレイズできないようにするには、自分のベットレンジの44.5%をレイズに対してディフェンスする必要があります。反対に、相手がピュアブラフで利益を出すには、自分のベットレンジを少なくとも55.5%フォールドさせなければなりません。
早見表
ベットサイズに対するAlphaとMDFを見積もるために、早見表を使うプレイヤーもいます。次の表を利用してください。最初の列でベットサイズを確認し、3列目と4列目から対応するAlphaとMDFを見つけます。
注意:この数値を使えるのは最初のベットだけです。レイズされた場合はMDFとAlphaが変わるため、ポットに対するベットサイズの割合だけでは求められません。
EVの計算
MDFとAlphaが示すのはブレークイーブンポイントだけです。簡単なEVの公式を使えば、ピュアブラフが実際にどれほど利益的なのかを計算できます。相手のコールレンジの広さに応じて、利益がどう変化するかも確認できます。
ピュアブラフのEVは、次の式で表せます。
EV(ブラフ)=(フォールド%×ポット)−(コール%×ベット)
相手がフォールドした場合はポットを獲得し、コールされた場合はベット額を失うため、この式が成り立ちます。ここでは、ブラフがコールされると必ず負けると仮定します。
例題3
リバーで125%ポットのピュアブラフをオーバーベットし、相手がレンジの40%でコールするとします。この計算ではポットを$100とします。
EV(ブラフ)=(フォールド%×ポット)−(コール%×ベット)
EV(ブラフ)=(60%×$100)−(40%×$125)=$10
相手がフォールドしすぎているため、このブラフのEVは$10です。
では、ブラフのEVを$0にするには、相手がどれほどフォールドする必要があるでしょうか?
Alpha=リスク/(リスク+リワード)=125/225=55.5%
つまり、相手がレンジの44.5%をディフェンスすれば、このオーバーベットブラフはブレークイーブンになります。実際には相手が僅かにフォールドしすぎているため、ブラフが利益的になります。
グラフ
相手のフォールド頻度に応じてブラフの利益がどう変わるか、グラフにしてみましょう。
- グラフの左側へ行くほど相手のフォールド頻度が下がり、ブラフの損失は大きくなります。グラフは下がり、最大損失はブラフでリスクにさらした額になります。
- グラフの右側へ行くほど相手のフォールド頻度が上がり、ブラフの利益は大きくなります。グラフは上がり、最大利益はポット額になります。
幾何学的には、(0, −125)と(1, 100)の間に直線を引けます。この直線とx軸が交わる点が、ブラフをブレークイーブンにするために必要なフォールド頻度です。この交点がAlphaにあたり、今回は55.5%です。
グラフを色分けします。
右側は、相手が55%より多くフォールドする+EVの領域です。左側は、相手のフォールド頻度が55%未満になる−EVの領域です。
MDFの限界
ここで大きな問題を取り上げます。MDFは単独ではうまく機能せず、その使い道を大きく制限する前提を1つ置いています。
MDFでは、ブラフにエクイティがないと仮定します。
ほとんどの場合、この仮定は実戦に当てはまりません。実際のポーカーでは、リバーより前のブラフに通常ある程度のエクイティがあります。たとえば、ドローでセミブラフできます。ドローのないハイカードでも、相手のバリューレンジの一部には勝っています。
この点を考慮すると、戦略はどう変わるでしょうか?
チェックバックにエクイティがある場合
ブラフするハンドをチェックバックしてもエクイティがあるなら、そのEVを$0にする必要はありません。代わりに、ブラフとチェックをインディファレントにすることが目標です。
たとえば、相手がリバーで役のあるハンドをブラフに回している場合、ブラフに勝てるハンドだけにMDFを適用します。 ブラフキャッチャーではないハンドは、相手にチェックバックされても負けるため、MDFに合わせてディフェンスする意味がありません。
例題
相手がリバーでIPからポットサイズのオールインをしました。相手のブラフには、チェックバックした場合に20%のエクイティがあります。ブラフとチェックをインディファレントにするには、どれほど広くディフェンスすべきでしょうか?
目標は、相手のブラフEVとチェックバックEVを等しくすることです。 チェックバックのEVはポットの20%だとわかっています。
ブラフEV=0.2(ポット)=(フォールド%×ポット)−(コール%×ベット)
0.2=(1−コール%)−コール%
コール%=40%
エクイティ0%のブラフなら、50%でコールします。しかし、今回は相手のブラフにショーダウンバリューがあるため、通常より多くフォールドし、レンジの40%だけディフェンスできます。言い換えると、相手のブラフにはチェックした場合のエクイティがあるため、利益的なブラフを許して構いません。
🎯目標:相手のブラフEV=チェックEV
チェックEV=ポットの20%
ブラフEV=ポットの20%(ディフェンス頻度をMDFより下げた場合)
要約:相手がショーダウンバリューのあるハンドをブラフに回している場合は、MDFより少なくディフェンスします。
コールされてもブラフにエクイティが残る場合
相手がターンでポットサイズのオールインをしました。ブラフはすべてドローで、自分のコールレンジに対して20%のエクイティを持ちます。このドローをターンでチェックした場合のEVも、ポットの20%です。ドローをベットとチェックでインディファレントにするには、どれほど広くディフェンスすべきでしょうか?
目標は、相手のターンブラフEVとチェックEVを等しくすることです。チェックバックのEVはポットの20%だとわかっています。
EV(ブラフ)=EV(チェック)=ポットの20%
コールされた場合のエクイティをEVの式に加える必要があります。
0.2=(フォールド%×ポット)+コール%((勝率×(ベット+ポット))−(負ける確率×ベット))
0.2=(1−コール%)+コール%(20%×2−80%)
コール%=57%
ドローにはコールされた場合のエクイティがあるため、ピュアブラフよりもブラフのリスクが低いと考えると理解しやすくなります。
エクイティ20%のドローでポットサイズのオールインをした場合、エクイティ0%のピュアブラフで75%ポットのオールインをする場合と、ほぼ同じリスク・リワード比になります。その意味では、ベットサイズが小さいのとほぼ同じです。
ドローの多いボードで大きくベットできることが多いのも、同じ理由です。ただし、実戦で強いドローをインディファレントにしようとする場面はほとんどありません。
GTOはMDFに従うのか?
Complexレポートを使い、GTOのフォールド頻度(青)と、MDF/Alphaから想定されるフォールド頻度(赤)をグラフにしました。このレポートには、戦略的に異なる1755種類のフロップがすべて含まれています。平均すると、BBはフロップでどのベットサイズにも一貫してフォールドしすぎています。
同じレポートをSB vs BBのSRPでも確認します。この場合はディフェンダーがIPにいるため、平均するとMDFにかなり近い頻度でコールします。
MDFより少なくディフェンスする場合
MDFより少なくディフェンスする戦略は理論上よく見られ、多くのスポットで最善になります。MDFどおりにコールすると、チェックバックでEVが0を上回るハンドを相手がブラフに回す動機を奪ってしまいます。
ナッツとエアーしかないトイゲームなら問題ありませんが、ブラフにエクイティがある実戦のポーカーでは問題になります。多くの場合、ディフェンス不足の方がディフェンス過多よりエクスプロイトされにくくなります。
一般に、次の状況ではMDFより少なくディフェンスします。
- フロップまたはターンでOOPにいる場合(IPのブラフにはチェックバックEVがある)
- 相手が役のあるハンドをブラフに回している場合(ブラフに勝てるハンドだけにMDFを適用する)
- 相手のチェックバックにEVがある場合
- エクスプロイトとして、バリューヘビーな相手に対応する場合
例を見てみましょう。QQ3rにおけるCO vs BBのSRPです。このボードではCOのブラフの大半にかなりのエクイティとEVがあります。さらに、BBはエクイティを実現できません。そのため、BBはこのフロップで大幅にフォールドを増やす必要があります。
COが33%ポットのCBを打ちます。MDFではBBがレンジの75%をディフェンスし、このベットサイズにフォールドするのは最大でも25%です。しかし、ソルバーではレンジの半分近くをフォールドしています。
MDFより多くディフェンスする場合
MDFより多くディフェンスする戦略はあまり見られませんが、理論上は適切なスポットもあります。一般に、アグレッサーのブラフがコールレンジに対してエクイティを維持するスポットでは、ディフェンス頻度が高くなります。エクスプロイトとしては、相手がオーバーブラフしている場合にディフェンスを増やせます。
一般に、次の状況ではMDFより多くディフェンスします。
- ドローの多いボードで早いストリートにオールインされた場合
- IPにいて、相手がコールレンジに対してエクイティを維持するドローでブラフしている場合
- チョップになるボード
- エクスプロイトとして、ブラフヘビーな相手に対応する場合
興味深い例を見てみましょう。BTN vs BBの4ベットポット(4BP)で、BTNがフロップで134%ポットのオールインをするスポットです。MDFでは、BBはレンジの134/234=57%をフォールドし、約43%をコールします。しかし、ソルバーでは約10%多くコールしています。
まとめ
最低ディフェンス頻度は、相手のブラフに押し切られないための盾です。Alphaは、特定のベットサイズでブラフするリスクを正当化するために、相手をどれほどフォールドさせる必要があるかを判断する剣です。
ブラフに価値がないと仮定しているため、この指標は完璧ではありません。 それでも、どれほど広くディフェンスすべきか、どれほどの頻度で相手をフォールドさせる必要があるかを大まかに判断する指針として役立ちます。相手がオーバーブラフまたはブラフ不足だと考える場合は、エクスプロイトとして調整してください。MDFに頼りすぎてはいけません。
GTO戦略はIPではMDFに近くなりますが、平均するとOOPでは一貫してMDFより多くフォールドします。
この指標には明確な価値があり、記事で紹介した以外にもさまざまな使い方があります。たとえば、異なるラインのおおよそのバリューしきい値を求める場合にも使えます。
この記事を通じて、AlphaとMDFの理論と実戦での使い方への理解が深まれば幸いです。













