
この記事は、私のポッドキャスでMarkが「ショーダウンを買う」という考えについて議論したとこから生まれました。この考えは彼の説明によると、フロップでCベットをし、ターンでレンジの中間に位置するハンドでポジションを活かして小さなベットをし、リバーではチェック/チェックの展開を狙うというものです。このプレイの意図は、中程度の強さのハンドに対してプロテクションをしたり、場合によってはわずかなバリューを狙ったり、リバーでポラライズされたレンジでのベットをされるリスクを避けることにあります。
Markによると、この考えはAlex “Assassinato” Fitzgeraldから得たもので、他のコーチたちは「バランスが取れておらず、チェックレイズに対して脆弱」と一蹴しているとのことです。これを受け、この記事では以下の2点について検証していきます。
- 「ショーダウンを買う」はGTO戦略(Game Theory Optimal)の一部となることはあるのか? もしそうなら、どのような場合か?
- GTO戦略ではない場合、相手のチェックレイズが少ない状況ではエクスプロイトとして機能するのか?
理論
通常、ベットレンジは後のストリートになるにつれてよりポラライズされます。フロップでは、中程度の強さのハンドが、相手レンジの最も弱いハンドに対してエクイティを否定することがベットする理由となっています
しかし、ターンではさらにバレルを打つインセンティブは低下します。相手がすでに弱いハンドをフォールドしていること、そして残された弱いハンドが次のストリートでドローを引ける可能性が大幅に低くなるためです。

通常、ベットレンジは後ろのストリートになるにつれてポラライズされます。
特にIPのプレイヤーは、チェックでそのストリートを終えられるためこの傾向がより顕著になります。ターンで中程度の強さのハンドがエクイティを否定する効果は僅かであり、そのリスク(レイズ)に対して見合わないことが多いでしょう。
例:ボードがQ942rの場合
下記のシチュエーション(MTT, ChipEV)では、BTNが大部分のレンジで20%または33%の小さなサイズのCベットをします。J9sを持っていた際、BTNはチェックもしますが、基本的にはベットしており、98sや33といった弱いペアも同様の扱いとなります。

これらのハンドは薄いバリューまたはプロテクションを兼ねたベットです。大きなポットを狙えるほどの強さはありませんが、これらのペアは相手に対して優位なことが多く、より弱いハンドにコールしてもらえる他、BBの最も弱いハンド(少なくとも1枚のオーバーカードがある)のエクイティを否定する効果もあります。
フロップで小さなベットをし、例えば2♠のような何も変化をもたらさないターンカードが出た場合、BTNのターン戦略は大きく変わります。ターンではオーバーベットがよく使われ、J9sやその他の弱いペアはこのレンジにほとんど入らなくなります。

ダイナミックなボード
先ほどのQ942rボードでのJ9は、実際のところターンでの脆弱性はそれほど高くありません。ATやAJなどの2枚のオーバーカードをフォールドさせることはできますが、全体としてはエクイティを否定するメリットは大きくありません。
例:ボードが4448の場合
一方、ボードが4448のような場合はどうでしょうか。4448のボードは非常にダイナミックで、特にBTN対BBにおいて顕著に現れます。BBがフロップでのベットにコールした後でも、ターンでは両者ともにペアがない広いレンジを持っているため、BTNのレンジ中間部はより脆弱となります。その結果、BTNのターンでのCベットレンジは、Q942の時のようなオーバーベットではなく、より広くリニアなレンジになります。

スタックが浅い場合(30bb)
最初の例のQ942のボードではターンでオーバーベットを使うため、J9はチェックとなります。J9は薄いバリューのハンドであり、ベットサイズが大きくなるほど、J9が勝っているハンドからコールされる可能性は低くなります。もちろん、J9で小さいベットを選ぶことも可能ですが、その場合、相手に小さなベットに対してレイズするインセンティブを与えてしまいます。ソルバーは、シンバリューベットをする際に強いハンドを含め、チェックレイズでエクスプロイトされないようバランスを取ります。
しかし、その調整を行うと、結果的にオーバーベットをしないハンドが出てきて、ソルバーが本来意図するプレイとは異なります。つまり、小さなサイズのベットレンジで得られる価値が低いということになります。非常に強いハンドは限られているため、強いハンドは小さいベットレンジにトラップとして使うよりも、オーバーベットレンジで使った方が(より多くのブラフも含められるため)効果的となります。
ただ、スタックが30bbのように浅い場合、BTNは強いハンドでオーバーベットするインセンティブが低下します。30bbのスタックでは、BTNはターンで依然として主にオーバーベット(ターンが2♠の場合)をしますが、200%ポットサイズのベットは使いません。一方で、83%ポットサイズは60bbの時よりもかなり頻繁に使用され、そのレンジで特に目立つハンドがJ9とK9とです。

エクスプロイト
Mark(あるいは彼が相談したコーチたち)の仮説では、ターンで中程度の強さのハンドでベットしない主な理由は、チェックレイズのリスクがあるためです。これを検証するため、BBがターンでチェックレイズしないようにノードロックしたカスタムソリューションを使用します。
このソリューションでは、フロップで20%ポットCベットをした後、ターンで50%または200%ベットの選択肢を追加しています。右側に示される均衡戦略では、50%の小さいベットは一切採用されません。しかし、BBが50%ベットに対してレイズしない(さらにドンクベットもしない)時、BTNは時折50%ベットを採用するようになります。この50%ベットを選ぶハンドは、主にJ9、K9、TTといったシンバリューハンドとなっています。

ただし、これらのハンドは依然としてベット頻度が100%にはなっていません。チェックレイズのリスクが「ショーダウンを買う」際の抑止要因ではあるものの、他にも望ましくない理由が存在することを示唆しています。
まとめ
BTNがQ942のボードでJ9を持っている時、ポットに「あと1回ベット」をしたいと考えます。その場合以下の3通りに分かれます。
- ターンでベットし、リバーでチェック
前述の通り、これはチェックレイズのリスクを伴いますが、同時にBBの弱いハンドに対してエクイティを否定するメリットもあります。 - ターンでチェックし、リバーでベット (相手がリバーでチェックした場合)
この方法は、リバーでJ9がバリューベットできなくなるリスクがあります。しかし、そうではないカードが落ちたときは、BTNがターンでチェックしたことにより、BBがベットにコールするインセンティブが高まります。 - ターンでチェックし、リバーで相手のベットにコール
BBのベットが非常に大きい場合やリバーが特に危険な場合はよくないですが、ほとんどの場合、ターンでチェックバックした後、J9はリバーで十分利益のあるコールができます。ターンのベットにコールしていたであろうハンドはリバーで自らバリューベットをし、またチェックすることでブラフも引き出すことができます。
つまり、フロップ後に自分のハンドがポットにあと1回分しかベットできないと判断した場合、その1回分のベットは、ターンでチェックしてからリバーでコールするか、リバーで自らバリューベットをするのが効果的です。チェックを選ぶ理由は、単に「安いショーダウンを買う」ためではなく、望む形でベットしたいという意図にあります。
フロップ後、もし自分のハンドがあと一度だけベットできる程度の強さであるなら、その一度のベットは通常、ターンでチェックを選んだほうが良いでしょう。
例外もある
ただし、例外も存在します。特に、自分のハンドが相手のフォールドから大きな利益を得る場合(例:4448のボードでBTNレンジ中間のハンドの場合)は、チェックレイズのリスクよりもフォールドエクイティを狙う方が利益的となる場合があります。
ターンでシンバリューベットをするかどうかは、「ショーダウンを買えるか?」ではなく、「自分のハンドはどれほど脆弱か?」という点について検討して判断を下してください。
多くの場合、自分のハンドの脆弱性を気にするより、相手にリバーで弱いレンジからベットさせるためにチェックする方が、利益的なプレイとなるでしょう。