IPのコールドコーラーに対するプレイは、ブラインドからのコーラーに対するプレイとは異なり、かなり難しくなります。ブラインドのコーラーに対するようなレンジアドバンテージはなく、自分のポジションとコーラーのポジションによっては、エクイティアドバンテージが全くない場合もあり、ポジションがない分、かなり不利になります。
誰かが自分のレイズにコールドコールした時はあまり良い状況ではありません。
オープンする時、ほとんどのハンドはブラインドやアンティを奪うか、BBとヘッズアップポットをプレイすることでその価値の大半を得ます。誰かが自分のレイズをコールドコールした時はあまり良い状況ではありません。ゲームツリーの中で、最も収益性の低い枝の1つであり、それに応じて期待値と戦略を調整すべきです。この不利な状況では、フロップがよくないと、諦めることも多々あるでしょう。
この状況はエクスプロイトされているわけではありません。コールドコールをしたプレイヤーは、コールするときに大きなリスクを負っています。後ろで他のプレイヤーがコールしたりリレイズしたりするリスクや、あなたが強いハンドを持っているリスク、あなたに有利なフロップになるなど、これらのリスクから上手く逃れられた場合、大したことのないハンドでもポットを獲得することできます。プリフロップでのレイズはこのシナリオから大量のEVを得る必要はなく、また、期待すべきではありません。
どれくらい不利かは、コーラーのポジションによって左右されます。ポジションが前の方であればあるほど、後ろに多くのプレイヤーが残っているリスクがあるため、レンジは強くなるはずです。次の図は、40bbエフェクティブスタックの際、各ポジションからのコールドコーラーに対するUTGのCベット戦略をまとめています。コーラーのポジションが後ろになるにつれて、UTGのエクイティが良くなり、ベット頻度が増えています。しかし、BTNコーラーの比較的広いレンジとヘッズアップし、53%以上のエクイティがある最良のシナリオであっても、平均して自分のレンジの半分をベットするのがやっとであり、小さなサイズが好まれます。
UTG Cベット vs コールドコーラー
もう1つの興味深いパターンは、UTGがアーリーポジションのコーラーにベットする頻度は少なくなるるものの、大きいベットサイズの比率が高くなっていることです。ベットレンジがよりポラライズされており、中途半端なハンドはチェックしています。
スタックが小さい時の調整
UTGのCベット戦略を25bbのときと40bbのときで比較すると、あまり大きな変化はないですが、チェックが減り、ほんの僅かだけより大きなベットサイズが使われるようになっています。ポジションが不利なことは、スタックが浅ければ浅いほど軽減され、SPRが低いほどポットコントロールよりもエクイティを守ることの重要性が増します。GTO Wizardでは25bbのスタックの際、UTGオープンに対してUTG1はコールレンジを持たず、レイズかフォールドの戦略をとっています。
UTG Cベット vs コールドコーラー
スタックが大きい時の調整
100bbのスタックでのUTGのCベット戦略を見ると、これらのパターンが見られます。より頻繁にチェックし、ベットするときはより一貫して小さいサイズを使います(GTO Wizardがこのスタックの際に使うベットサイズは、より浅いスタックで使用するものとは若干異なることに注意してください)。
UTGはナッツを持っている時、積極的にポットを大きくした方が得だと思われますが、実際には、
- このような高いSPRでは、スタックを賭けてプレイするほど強いハンドはほとんどありません。これらのハンドはUTGのレンジのごく一部であり、UTGの多くのハンドはチェックする方が利益的です。その後、チェックレイズするか、後のストリートでポットを大きくします。
- リバーまでにナッツがどういうハンドになるかを知るのは難しい。このような深いスタックでポジションがないUTGは、セットでポットを大きくしてリバーでフラッシュを完成させられたり、ナッツフラッシュドローでポットを大きくしてリバーでボードペアになるシナリオを避けたいです。
- UTGのナッツアドバンテージはスタックが深くなると小さくなります。プリフロップでレイズしたプレイヤーがコールドコーラーに対して持っている主なアドバンテージは、IPがプリフロップでコールしない強いポケットペアです。スタックが深くなるにつれ、ワンペアの価値が下がり、プリフロップでレイズしたプレイヤーに有利なフロップでもナッツアドバンテージをそれほど得られません。ナッツアドバンテージとポジションアドバンテージの両方がないため、強いハンドを持っていても大きなベットはしません。
ベットに適したハンドとは?
ベット頻度を上げるべきか下げるべきかを理解したら、次はベットやチェックに特に適したハンドを考えます。
OOPのプレイヤーはチェックが戦略の重要な一部となるため、チェックするのに適したハンドを見極めることが重要です。
ベットに最適なハンド
- 大きなポットをプレイできるほど強いハンド。このようなハンドは特に、後のストリートでボードのテクスチャーが変化して弱くなる可能性がある場合にベットする傾向があります。しかし、ディープスタックでは、これらのハンドはポットコントロールをすることもあります。
- ナッツになる可能性があるハンド。ここでいうナッツとは、文字通りナッツのことではなく、オールインまで行くのに十分な強さのあるハンドのことです。このようなハンドは相手をフォールドさせるためにベットし、運が良ければ後のストリートでバリューベットできるほど強くなる可能性があるため、ポットを大きくします。
チェックに最適なハンド
- 中程度の強さのハンド。これらのハンドはボトムペアやセカンドペアであることが多く、小さなポットではそれなりのエクイティを持っていますが、コールされると弱くなります。このようなハンドでベットすると、相手は自分が勝っていたハンドのほとんどをフォールドし、好ましくない状況となってしまいます
- 引けてもナッツ級の強さにはなれないドローハンド。ボードのテクスチャーにもよりますが、低いストレートやフラッシュ、あるいは2枚のオーバーカードのことを指します。このようなハンドでベットしてポットを大きくすることは避けたいです。このようなハンドではエクイティをあまり実現できず、ポットを大きくするメリットが少なくなってしまいます。
- 何もないハンド。強くなる見込みがほとんどない弱いハンドのこと。相手をフォールドさせられれば良いですが、コールされたときのエクイティのなさが仇となります。
これらの法則はブラインドに対するCベットにも当てはまります。異なるのは、OOPのレイズでは、チェックが戦略の重要な一部となるため、良いチェック候補となるハンドを見分けることがより重要となることです。IPは多くの場合、あまり良くないハンドでもベットできる大きなレンジアドバンテージがありますが、OOPは多くの場合、弱いハンドをベットして利益を得るようなレンジアドバンテージがありません。また、微妙な強さのハンドやドローでポットを大きくすると、ポジションが不利なため後でポットサイズをコントロールできないため、好ましくありません。
スタティックなフロップの例
スタティックなフロップはコールドコーラーを相手にするのに適しています。この例で取り上げるフロップ、A♠ J♥ 6♦は特に良いフロップで、プリフロップでレイズしたプレイヤーはエクイティがかなり有利であり、強いハンドを持っている可能性がやや高くなっています。
スタティックなフロップは、コールドコーラーを相手にプレイする場合に有利です。
このため、プリフロップでレイズしたプレイヤーは高い頻度でベットをすることになり、チェックに適しているハンドでもベットレンジに入ることが多くなります。それでもレンジの28%をチェックし、そのチェックは主に次の2つの種類のハンド(中程度の強さのハンドと、フロップを完全に逃したハンド)で構成されています。下のチャートでは、エクイティが最も低いハンドと、エクイティが50%前後のハンドの箇所で、緑色(チェック)が多く占めています。
UTGのハンドでチェック頻度が高いのは99、88、K♣9♣です。中位のポケットペアはチェックしたポットでは勝てますが、ベットしてコールされると不利になるハンドの良い例であり、K♣9♣はストレートドローとバックドアフラッシュドローの両方がなく、UTGのレンジで唯一毎回チェックしています。
ダイナミックなフロップの例
数字だけを見ると、9♥ 8♦ 6♦はUTGにとってそれほど不利なフロップではないように見えます。このボードではエクイティは両者均等になっています。
しかし、ボードのダイナミックな性質上、OOPからプレイするのは難しく、UTGはエクイティの93.67%しか実現できません。それに比べ、AJ6rではエクイティの99%以上を実現し、エクイティアドバンテージが多くあります。
フロップでポットを大きくすることはUTGにとって危険です。なぜなら、現時点でのハンドがどんなに良くても、ターンやリバーでその価値が急落し、ポジションがないため厳しい状況に追い込まれる可能性があるからです。したがって、UTGはレンジの65%をチェックします。
BTNは毎回ベットするわけではないので、UTGのチェックは諦めているわけではありませんが、チェックしたハンドはポットを失うことが多いでしょう。チェックし、フロップでフォールドすると、「弱すぎる」あるいは「簡単に諦めている」と感じることがあります。しかし、これは正しいプレイであり、IPにコールドコールされた瞬間に多くのEVを失っています。
UTGがベットするときは、まくられる可能性のあるオーバーペアや様々なドロー、バックドアドローがほとんどです。例えば、ダイアモンドがあるバックドアドローの(そしてBTNのドローをブロックできる)ときだけKJoはベットします。
UTGの戦略は2枚のオーバーカードのコンボが多い場合も同様で、バックドアドローの時だけベットします。例外はガットショットもあるATとKTです。これらのコンボはすべてベットすることもあります。
まとめ
OOPからプレイするのは難しく、986ttといったボードでソルバーの戦略を見ると、すべてのハンドが混合戦略になっているように見えますが、これはソルバーでさえ1つの優れた戦略を見つけられないということです。混合戦略になっているハンドは全て、2つの競合する目的の間を行き来しています。明確にどのアクションが良いかわかるハンドはなく、相手のエクイティを実現させたくない、相手のブラフにフォールドしてしまう、バリューベットにコールしてしまうなど、私たちがやりたくないことはすべて、リスクを冒してでもやるしかありません。自分のエクイティが過小評価され、ポットのシェア以上に負けることは多々あります。IPのコールドコーラーに不利な状況に追い込まれた時は、いくつかの「ミス」は避けられないことを受け入れ、不利な状況のなかでできる限り最高のプレイをすることに集中しましょう。