バローとは
バロー(valor)とは元々戦場での騎士の勇敢さを表す言葉として使われていましたが、ゼニスポーカーがこのバローという言葉をポーカーに取り入れました🎖
バローとは、後のストリートでバリューでベットやレイズができるハンドの強さ(力)のことです。後のストリートでアグレッションを継続したり、相手のバリューレンジよりも強い役を作れる場合、バローが高いと言えます。
バローとは、後のストリートでベットやレイズをしてポットを獲得できる強さとも言えます。バローが高いハンドは後に落ちるカードに関係なく、複数のストリートで大きいベットやレイズができ、バリューを最大化することができます。反対にバローが低いハンドはパッシブにプレイすることで損失を最小限にすることができます。
エクイティ、EV、EQRとの関係性
EQは、お互いにチェックをした場合、ハンドがどれくらい勝てるかを数値化したものです。
EVとは、長期的にどのくらい勝てるかを数値化したものです。
EQRとは、EQとEVの違いを測定したものです。EQR = EV / (ポット x EQ)であり、期待値とお互いにチェックした場合に勝てる金額を比較しています。EQRが高いときは、「お互いにチェックをし合った時」よりもエクイティを獲得することができます。
バローとは後のストリートでバリューでベットやレイズができるハンドの強さのことです。
バローが高いハンドはEQRが高くなり、インプライドオッズが高い傾向があります。
実例
[NL 500キャッシュゲーム、100BB]
BTN対BB SRP: A♠K♠6♦。BBがチェックしてBTNのCベット。
BTNのGTO戦略を見てみると、オーバーベットとチェックになっています。この戦略によってBTNのナッツ級のハンドのバリューを最大化することができます。トップペア以上のハンドで大きなベットをしています。反対にミドルペアやポケットペアは、コールされたときのエクイティがあまりなく、ベットしても相手のドローがあるハンドはなかなかフォールドしないので、ベット頻度が低くなる傾向があります。そのため、ドローがない限りチェックバックすることが多くなります。ボトムペア(6x)はここではセミブラフをしています。
BTNのEQRをみてみます。
トップペア+、フラッシュドロー、ガットショットなど、EQRが高いハンドはバローが高い傾向にあります。その結果、これらのハンドはエクイティを上回り、複数のストリートでベットしてバリューを得たり、セミブラフの場合は相手のハンドをまくることができます。
ツーペアとセットを選択してみます。
レンジ全体では40%しかベットしていませんが、セットと2ペアは多くベットしています。これらのハンドはバローが高く、フロップ以降もバリューベットできることが多くなります。ベットをして、コールされたりレイズされたりするとEVが上昇します。
次にトップペアをみてみます。
トップペアはハンドによってEVもバローも大きく異なります。この時点では相手に勝っていることが多いと思いますが、3つのストリートでバリューベットするにはツーペア以上になる必要があります。キッカーが良ければ良いほど、トリップスやツーペアになった時に強くなるため、バローは高くなります。そのためAQとAJのベット頻度は高く、キッカーが弱いハンドはチェック頻度が高くなっています。
ここまで、役があるハンドを見てきました。次はドローハンドを見ていきます。
ドローのBTN戦略
バックドアドローのみ
ドローなし
ドローがある方がベット頻度は高くなります。ベット頻度は、ドローがあるハンドでは65%、バックドアフラッシュドローが38%、ドローがないハンドでは18%です。
これらのドローは、相手のバリューハンドに勝てる可能性があり、後のストリートでもベットやレイズをしてバリューを得ることができるためバローが高くなる傾向があります。
バロー&マクロ分析
マクロ分析(レンジ、ポジション、SPR)をして、バローがそれらの指標とどのような関係にあるかを調べてみます。
レンジが強ければ強いほど、ハンドのバローは高くなります。あまりベットを好まないハンドでもレンジ全体で有利になれば頻繁にベットすることができます。
レンジアドバンテージ
BTN対BB SRP K72rでのBTNのCベットをみてみます。ポジションとレンジがバローにどのように影響するかを分析してみます。
BTNはレンジアドバンテージがあります。BBは、BTNのトップペア以上のハンドをまくれるようなドローがなく、ポジションもないため、BTNは小さくベットしてBBのバローが低いハンドをフォールドさせます。
特にサードペアとAハイのベット頻度が高くなっています。
ポジション
ポジションがあるときとないときで、バローがどのように変わるかを比較します。先ほどと同様SRP、K72rでプリフロップコール側の小さいベットに対するディフェンスをみてみます。BB対BTNとBB対SBの戦略を比較します。
どちらの状況もエクイティはほぼ同じですが、ポジションがないとエクイティを実現するのが難しくなります。IPでフロップのベットをコールすると、OOPはターンをチェックするかもしれませんが、OOPにはそのような選択肢はありません。さらにリバーでもベットされる可能性があります。つまり、ポジションがないときは、フォールドすることが多くなります。
SPR
SPRが低ければ低いほど、オールインするレンジが広くなり、バローの境界線が下がります。SPRが高い場合は、相手のバリューに勝てるかどうかが重要です。SPRが低い場合は、相手の弱いハンドに勝てるそれなりに強いハンドで十分となります。
SPRが低い時の例を紹介します。SBが3ベットし、BTNの4ベットにコール。フロップは542rで、SBがチェックし、BTNが25%ポットサイズのCベット。
4ベットのコール側(SB)はプリフロップでTT+とAKはオールインしているため4ベットにコールしたレンジにはこれらのハンドは存在しなく、キャップされています。
ベットされたときのSBの戦略を見てみます。
オーバーペアを相手が多く持っている(ポットの25%のEVしか獲得できない)にもかかわらず、25%の頻度でレイズしています。
SPRが高い状況では、中途半端なエクイティのハンドはパッシブにプレイする傾向があります。反対にSPRが低いと、相手のオーバーカードのエクイティを削るため、中程度の強さのハンドでベットやレイズをします。つまり、SPRが低いほど、中程度の強さのハンドのバローは高くなります。
まとめ
バローとは、強い役を作ることができ、後のストリートでバリューベットができる強さ(力)のことです。フラッシュドローはバックドアフラッシュドローよりもバローが高く、どちらもないハンドよりもバローが高くなります。バローが高いハンドはべットやレイズを高い頻度で行い、ポットを争うのに対し、バローが低いハンドはパッシブにプレイします。また、バローの高いハンドはEQRが高い傾向にあります。
マクロ分析(レンジ、ポジション、SPR)では、バローを新たな視点で分析することができます。レンジが強ければ強いほど、個々のハンドのバローは高くなります。ポジションがあると、EQRとベット頻度が高くなります。SPRが低いと中程度の強さのハンドでもオールインするようになり、それらのハンドのバローは高くなります。
バローはポットに入れる金額を決めるのに非常に役立ちます。バローが高いハンドは、バローの低いハンドに比べ、より多くのチップをポットに入れます。トップペアで強いキッカーがあるような強いバリューハンドやフラッシュドローのような強いドローはバローが高くなる傾向にあります。反対にアウツがあまりない弱いSDVがあるハンドは、バローが低くなる傾向にあります。アグレッシブなアクションによってエクイティをEVに変える一連の流れでバローは使われます。