ソルバーが出したレンジをみると、以下のようなことを思ったことはないでしょうか。
- なぜソルバーはトップペアでフォールドしているのにサードペアでコールするのか?トップペアは毎回コールし、サードペアは毎回フォールドする方がよくないですか?
- なぜこのハンドではブラフするのに、似たようなこのハンドはブラフしてはいけないのですか?
- なぜソルバーはリバーでワンペアでブラフレイズするのですか?ワンペアはショーダウンバリューがあるから代わりに他の何もないハンドをレイズしたほうがよいのでは?
どれも素晴らしい疑問です!これらの答えはブロッカーが関係していることが多いです。
この記事では、ブロッカーとは何か、ブロッカーが戦略にどのような影響を与えるのか、どのような場合にブロッカーが重要になるのか、そしてGTO Wizardのブロッカー分析ツールを使ってハンドを分析する方法について説明します。
ブロッカーとは
ブロッカーとは相手のレンジの一部をブロックするハンドを持つことにより、相手のレンジの一部を取り除ける効果のことを指します。例えば、T♠6♠3♠のボードでA♠K♦を持っていると、相手はナッツフラッシュを持つことができなくなります。ブロックしていない(Unblocker)も重要な用語で、ブロッカーと逆の効果を指します。例えば、T♠6♠3♠で3♥3♣を持っていた場合、トップペアをブロックしておらず、バリューを取れる可能性が高まります。
ブロッカーを理解するための第一歩は、そのハンドでどのようにプレイしたいのかを理解することです。
ハンドの種類によってブロッカーの効果は変わります。
バリューを持っている場合、相手からコールやレイズをされいので、適しているハンドは、
- 相手の何もないハンドをブロックしている
- 相手のバリューをブロックしていない
ブラフとなるハンドを持っている場合、フォールドさせたいので、適しているハンドは、
- 相手のバリューをブロックしている
- 相手の何もないハンドをブロックしていない
ブラフキャッチを持っている場合、ポットオッズ以上の確率で勝ちたいので、適しているハンドは、
- 相手のバリューをブロックしている
- 相手の何もないハンドをブロックしていない
微妙なハンドを持っている場合、できるだけ安くショーダウンに持ち込みたいので、適しているハンドは、
- 相手のベットするハンドをブロックしている
- 相手のチェックレンジをブロックしていない
ナッツを持っている場合、できるだけポットを大きくしたいので、適しているハンドは、
- 相手のチェックレンジをブロックしている
- ベットレンジをブロックしていない
常に適しているハンドを持っているとは限りませんが、ハンドの目的に照らしてブロッカーを考えることでより良いプレイができるようになるでしょう。
ブロッカーの分析
ここまでどういったハンドを持っているのが良いか分析してきましたが、この章では実際にブロッカーをどのように使うのか、いくつかの例を見てみます。今回は、100bbのキャッシュソリューションでポジションはCOとします。
- プリフロップ: COがT♠9♠で2.3bbにオープンし、BBがコール。
- フロップ (J♠6♥4♠)(5.1BB): BBチェック。COが1/2ポットサイズのベット。BBがコール。
- ターン (J♠6♥4♠–T♣)(10.2BB): 互いにチェック。
- リバー (J♠6♥4♠–T♣–2♣)(10.2BB): BBが6BBのベット、COのアクション。
COはセカンドペアを持っており、60%ポットサイズのベットをされています。どうするべきでしょうか?
- フォールド
- コール
- コールとフォールドの混合
- コールとブラフレイズの混合
T♠9♠はGTOソリューションで見てみると、フォールド一択です。しかし、T♦9♦とT♥9♥は毎回コールしています。
これらのハンドは何が違うのでしょうか。なぜソルバーはT9の色によってアクションを変えるのでしょうか。
まず、T♠9♠はブラフキャッチャーなのかどうか考えます。
ブラフにさえ勝てないハンドはブラフキャッチャーとは言えません。詳細タブを使い、相手のベットサイズ(この場合は6bb)で絞り込み、ハンドを見てみるとブラフに勝てるかどうかわかります。
上記の表を見ると、相手はAハイより強いハンドでブラフすることはなく、トップペアより弱いハンドで6bbのバリューベットをすることはありません。つまり、T♠9♠を含むエースハイとトップペアの間のハンドはブラフキャッチャーとなります。
T9はブラフキャッチャーだとわかりました。ではT♠9♠でのコールはなぜよくないのでしょうか。COの戦略を見てみます。
KToはどうでしょうか。スペードを持っているとフォールドすることが多くなり、KのスペードがあるKToはフォールドします。なぜでしょうか。
答えはBBのレンジにあります。BBのレンジで最も弱いハンドの多くはフラッシュドローで構成されています。T♠9♠の場合、スペードの9が、K♠9♠、Q♠9♠、9♠8♠、9♠7♠といったBBのブラフレンジをブロックしてしまっています。
T♥9♥やT♦9♦はこれらのブラフをブロックしないので、ブラフキャッチをしています。
相手の何もないハンドをブロックしているかどうかも重要です。T♠9♠は相手の何もないハンドをブロックしているので、COはこのハンドを持ったときにBBのブラフ頻度を減少させています。
画像の右にあるスコアについては後で詳しく説明します。次の章では、ブロッカーの効果がどのような場合に強くなるのか紹介していきます。
どのような状況でブロッカーが重要となるのか
先ほどの例では、ブロッカーの効果は大きかったですが、多くの場合、ブロッカーの効果は微々たるものです。ブロッカーに基づいて判断するのが適切なのかどうか理解する必要があります。
相手が十分なブラフをしていない場合、良いブロッカーを持っている際はコールするべきでしょうか
リバーでのブラフキャッチの判断で最も重要なのは、ポットオッズによって決まるエクイティでコールできるかどうかです。それ以外のことはその後に考えます。
T♠9♠の例に戻ると、リバーではポットオッズから、コールをするにはちょうど27.8%のエクイティが必要です。
必要なエクイティ = コール / (コール後のポット – レーキ) → 6 / (6 + 6 + 10.2 – 0.6) = 27.8
上記の表からわかる通り、これは極めて小さな差です。もしBBが1%でも多くブラフをしていたら、T♠9♠はコールすることが正しいプレイとなります。
コールする前に、以下の3つのことを考える必要があります。
- 相手のブラフに勝てるのか
- ポットオッズと比べて、相手はブラフが多いのか(毎回コール)、ブラフが少ないのか(毎回フォールド)
- 自分のハンドは相手のバリューベットをブロックしてるか、あるいはブラフをブロックしていないか
ソルバーは完全にバランスの取れた戦略を構築します。均衡はもろく、相手のブラフが多かったり少なかったりする場合、ブロッカーを考えるのは後回しです。強いプレイヤーが相手だと、相手のブラフが多いのか少ないのか見分けるのは難しいので、このようなときはブロッカーに基づいて判断すべきです。
ブロッカーが最も重要な時
- レンジが狭い – コンボ数が少ないと、特定のカードを保持する効果が比例して大きくなります。
- レンジがポラライズしている – プレイヤーがナッツを持っているか持っていないかの場合、その鍵となるカードを持っていることで大きな効果を発揮します。
- 大きいベットをされた場合 – 大きいベットに対しては、小さいベットと比べて広くディフェンスする必要はありません。そのため、最適なブロッカーを持っている場合のみコールするなど、より厳選することができます。
ブロッカー分析ツール
優れた分析は多くの場合、複雑になります。GTO Wizardには、ブロッカーを分析するためのツールがあります。まず、すぐに分析できるブロッカースコアとブロッカータブについて紹介します。ブロッカータブは、深く分析するための強力なツールです。最後に、これらのツールを使って、厄介なブロッカーの問題に取り組みます。
ブロッカースコア
プレミアムプランでは、レンジ内のコンボの左上にブロッカースコアが表示されます。
Value Removalは、相手のレンジのうち、どれだけバリューをブロックしたかを示します。Trash Removalは、相手のレンジのうち、どれだけトラッシュ(何もないハンド)をブロックしたかを示します。
点数は0~10点で、もし自分のハンドのValue Removalの点数が10点なら、自分のベットは通常より多く相手をフォールドさせ、Trash Removalの点数が10点なら、自分のベットはあまりフォールドさせられません。
ブロッカータブ
ブロッカータブは、画面右側の「ストラテジー」タブと「レンジ」タブの両方から簡単に見ることができます。
ブロッカータブでは、自分のレンジに特定のハンドがないことが、全体の頻度にどのように影響するかを見ることができます。下の図では、相手は3/4ポットサイズのベットをしており、相手がクラブの8を持っていた場合、フォールドの頻度は0.45%上がります。これは相手のレンジの一部を取り除く効果を理解する上で優れた分析方法です。
このタブの数値の意味がわからない場合は、カーソルをかざすと、そのスタッツがどういう意味かヒントを表示します。
ブロッカークイズ
最初の例に戻り、今度はT♠7♠を持っているとします。
- プリフロップ: COがT♠7♠で2.3bbにオープンし、BBがコール。
- フロップ (J♠6♥4♠)(5.1BB): BBチェック。COが1/2ポットサイズのベット。BBがコール。
- ターン (J♠6♥4♠ – T♣)(10.2BB): 互いにチェック。
- リバー (J♠6♥4♠ – T♣ – 2♣)(10.2BB): BBが6BBベット、COのアクション。
T♠7♠はフラッシュドローをブロックしているにもかかわらず、他のT7♠よりもコール頻度が高いのはなぜでしょうか。
ブロッカースコアを見てみると、Ts7sのTrash Removalのスコアが他のコンボより低いことがわかります。
その理由を探るため、フロップのアクションに戻ってみます。最初のステップは、フロップで7を含むコンボを全て見てみることです。BBの7xのハンドの多くはストレートドローであることがわかります。
スペードを含む87のコンボは、COのコールレンジをより多くブロックするため、フロップでのブラフレイズの候補として適しています。したがって、BBがリバーでブラフをする場合、ダイヤの7、クラブ、ハートに比べてスペードの7でブラフをする可能性は低くなります。
BBが7♠を持っているかどうかでフロップのチェックレイズに対して、COの戦略がどう変わるかを見てみます。
BBが7♠を持っている場合、COはフロップのレイズに対して0.72%多くフォールドしています。
BBのリバーでのベットレンジを見てみます。
BBはフロップで7♠の組み合わせのほとんどをチェックレイズしているので、これらの組み合わせがリバーで残っていることは少ないです。したがって、BBがリバーでブラフをする場合、ダイヤの7やハートに比べてスペードの7でする可能性は低くなります。COがT♠7♠を持っている場合、ブラフをブロックすることは少なくなります。
まとめ
ブロッカーはポーカーの基本です。自分のハンドが他の全てのレンジとどのように影響し合うかを考えることは、分析する上で非常に重要となります。
- ブロッカーとは、特定のハンドを持っていることで相手のレンジの一部を取り除くことができ、相手のレンジの該当部分をブロックすることを指します。
- ハンドが何をしたいのかによってブロッカーの役割は変わってきます。
- 特定のカードをレンジの中からなくすよりもエクスプロイトの方が重要な場合が多くあります。
- ブロッカーが最も重要なのはレンジが狭いときです。
- どこをブロックしているのかわからないときは、ブロッカースコアを使い、常に前のストリートを振り返ってみてください。
- 特に3ベットポットや4ベットポットなどレンジが狭いところでは、ブロッカータブを頻繁に使いましょう。そういったスポットでブロッカーを学ぶ方が簡単です。