プロテクションの正しい考え方
200bb持ちのキャッシュゲームで、プロテクションベットが大好きなポールがSBからA♠A♣をオープンしました。BBがコールし、フロップは8♥6♦4♥です。ポールは、ここで75%のCベットを打つことを考えます。自分のハンドがブロックしていない”フラッシュドローにチップを払わせ”つつ、”ストレートドローに対して自分のハンドを守る”ことができるからです。さらに、相手がチェックバックをし”タダでカード”を見た結果、ハートの7や5など不利なターンカードを引くことは避けたいと考えます。しかしポールにとって意外なことに、このハンドは理論上ほぼ100%チェックし、75%ベットを打つとポットの7%程度の期待値を失うのです。
今回の記事では、このシナリオを深く掘り下げ、プロテクションのためのベットを打つ状況と打たない状況を探っていきます。またプロテクションという概念が、フロップのCベット戦略の頻度とベットサイズに与える影響も見ていきます。
プロテクションを行わない時
では、先ほどの状況の論理はどこが間違っているのでしょうか?ポールの75%のベットに対してフラッシュドローやストレートドローはコールをし、それらのドローはA♠A♣に対してエクイティ自体では負けています。ですが、これらのドローはインプライドオッズにより比較的高いEVを持っており、ドローが完成した場合はAAからバリューを引き出し、ドローがミスした場合でもAAをブラフで降ろすことが可能です。BBがコールし、ターンとリバーが”スケアカード”だった場合、ポールのAAは多くの場合でブラフキャッチャーになり、目の前にあるポットに対してのEVは0になります。ポールがAAでベットをし、相手のレンジを狭めた結果AAが0EVのブラフキャッチャーに変わる場合、それは、その時点までにポットに入れたお金を事実上すべて失ったことになります。これは、フロップの時点で非常に高いエクイティを持つハンドでは避けたい事態です。
相手が続行するハンドをブロックしていないことも理想的ではありません。ポールが6bbのポットに対しA♠A♣で4.5bbのCベットを打った場合、コールされた時の期待値は11.19bbです。この数値は、ポットとCベットを合わせた額を辛うじて上回るに過ぎず、BBがコールした場合のEVは、フォールドした場合と比べて僅かに高いだけです。別の言い方をすると、コールされた場合(EV-フロップに対する寄与)のEVの変化は6.69bbであり、BBがフォールドをした際のEVは6bbです。相手を降ろすことはコールされることとほぼ同じであり、このハンドがバリューベットとしてほとんど機能していないことが見て取れます。
またチェックにはもう一つの隠れた利点があります。ポールがOOPでチェックした場合、BBは必ずしもチェックバックするわけではないということです。このボードはBBにとって比較的有利なため、Q♦9♠やK♣2♣でベットをする可能性があります。これらのハンドはポールのAAに対してほぼドローイングデッドで、ポールが75%ベットを打った場合は簡単に降りられてしまいます。
一般的に、アウツがあったりインプライドオッズを持つハンドにコールされる場合に比べ、ドローイングデッドのハンドにコールされた場合の方が、ベットが持つ価値は高く保たれます。これが、A♠A♣で8♥6♦2♣でCベットを打つのが比較的許される理由です。ボードがドライである場合、BBはペアやドローがない(“静的エクイティ”)タイプのハンド、主にバックドアを持つオーバーカードでコールをする必要があります。8♥6♦2♣では、75%ベットに対して37%のハンドが続行しますが、8♥6♦4♥では22%に留まります。AAにとって、862rでKQにコールされることは、864ttで76にコールされるより遥かに良い結果と言えます。
ベットが持つ価値は、アウツやインプライドオッズを持つハンドにコールされる場合に比べ、ドローイングデッドのハンドにコールされた場合の方が、より高く保たれます。
プロテクションを気にしすぎると、高い代償を払わされる場合があります。8♥6♦4♥では、GTOのCベット戦略は2.77bbのEVをポットから獲得します。例えばポールが、過剰に多くのオーバーペア(“プロテクションが必要”なハンド)でCベットし、ストレート、セット、ペア+ドローなど(“プロテクションが必要ない”ハンド)で十分なCベットを行わなかったとしましょう。この戦略でポールをノードロックした場合、ポットからは2.7bbのみ獲得します。これは、約0.07bb(7bb/100)エクスプロイトされることを意味します。
ポールのベットレンジは比較的キャップされておりオーバーペアに集中しているため、200bbのスタックサイズでオールインまで持っていくには弱すぎます。このSBのレンジが持つ脆弱性はBBのレイズ頻度(100%レイズサイズ)を5%から21%に上昇させ、ツーペア以上のハンドで必ずレイズを行い、適切なブラフも選びます。
実際、レンジチェックを行うことは、ポールにとってはるかに強固な戦略なのです。SBにはポジションがなく、BBのレンジは全体的なエクイティだけでなく、ツーペア以上のような強いハンドも存在するため手強いです。レンジチェック戦略は2.75bbのEVを獲得でき、これはGTO戦略に非常に近い値です。そして、BBがチェックに対して過剰にベットしてくる場合、GTO戦略を上回る可能性もあります。
プロテクションを行う時
ポーカーにおいて、ベットやレイズのEVは、相手のエクイティの低いハンドにコールさせ、エクイティの高いハンドをフォールドさせることから得られます。ここまでに見てきたように、相手のエクイティの高いドローに対し良いオッズを与えないことを目標としてCベット戦略を作り出すことは軽率です。むしろ、”バリューハンド”でベットをする主な目的は、ドローイングデッドに近いハンドからコールされることです。一方で、”ブラフ”でベットする理由は、できるだけ多くのエクイティを持つハンドをフォールドさせることです。
シンバリューハンドが相手レンジの別の部分(ガットショット、オーバーカード、バックドアドローなど)をブラフで降ろすことが可能な場合、それらのハンドで”プロテクションのために”ベットすることが可能です。
例えば、SRP (シングルレイズドポット)でのA82レインボーにおける、BBに対するBTNのフロップCベット戦略を考えてみましょう。BBはどちらのカードも9以上のほぼ全てのオフスーツとスーテッドのハンドでプリフロップをコールし、それらはレンジ全体の約30% (100コンボ以上)を占めます。その結果、BTNは8xで小さなベットを打つインセンティブが高くなります。最大で6枚のアウツがあるそれらのハンドを降ろしつつ、2アウツある77-33などのハンドからバリューを得ることができます。
大きなベットサイズを選択すると、さらに多くのオーバーカードをフォールドさせることができるかもしれませんが、8xでベットサイズを上げると相手が続行するレンジがAxに偏った強いものになってしまい、コールされた場合のパフォーマンスが悪化します。BTNが33%のベットサイズのみを使用するCベット戦略を使用した場合、70%以上の頻度で8xをベットすることが可能です。しかし、75%のベットサイズを小さいサイズを使う時と同じ頻度で打った場合、6bb/100のEVを失います。
シンバリューハンドでベットするインセンティブがある際は、高い頻度でベットができるように小さいサイズを使う必要がある。
次のセクションでは、プロテクションとベット頻度/サイズの関係をフロップ別のCベット戦略と合わせて見ていきます。
ベット頻度とサイズ
集計レポート機能を使い、SRP (シングルレイズドポット)におけるAX2レインボーボードのBTN vs BBのCベット戦略を見てみましょう。XはKから3までのカードとなります。
このレポートから、戦略が完全に二分されているのが見て取れます。BTNはXがブロードウェイカードの場合は125%、それ以外の場合は33%のベットサイズを選択します。前者のケースでは、セカンドペアを上回るオーバーカードが少なく、また、BBはブロードウェイのガットショットが作れる全てのオフスーツコンボを持っており、それらがBTNのワンぺアやツーペアなどの役があるハンドのエクイティを下げます。その結果、BTNはセカンドペアでプロテクションを打つことに消極的になり、Cベットは主にトップペア以上とブラフで構成されたポラライズレンジで行われます(追加の利点として、オーバーベットを使用することで、ブロードウェイのガットショットをインディファレントにすることができます)。後者の場合、セカンドペアを上回るオーバーカードが多く、BTNはセカンドペアやサードペアでプロテクションベットを積極的に行うため、使用される主なベットサイズは小さくなります。
まとめ
フロップでの強いドローは高いEV(多くの場合ですでに役があるハンドよりも多く)を持ち、ほとんどの”標準的”なCベットに対しフォールドはしません。フロップでCベットを打つ際は、これらのハンドに”チップを支払わせる”ことにフォーカスせず、代わりに以下のヒューリスティック (指針)を参考にして下さい。
- OOPでポジションが不利でレンジアドバンテージがない場合は、頻繁にチェックする
- リバーまでに実質的なナッツを作れるハンドは、すでに役があるハンドに比べ高いEV/EQRを持つことがある(“実質的なナッツ”の分類はスタックサイズに大きく依存する)
- 後のストリートでもバリューベット/レイズができるハンドでより頻繁にベットし、ブラフキャッチャーに成り下がってしまうハンドではベットを控える。これらのハンドは”高いエクイティの保持”や”強固なエクイティ”を持つと呼ばれます。
- お互いのレンジが持つオフスートのハンドに注意を払いましょう。各オフスートハンドの合計は12コンボになります。
- フォールドエクイティの価値に注意を払いましょう。それは相手がフォールドする頻度だけでなく、相手がどのタイプのハンドをフォールドするかも重要です。
- もしあなたのシンバリューベットが、多くのアウツを持つ相手のハンドを降ろせるのであれば、フォールドエクイティを狙うインセンティブが高まります。広いマージレンジでの小さいベットを検討しましょう。
- もしシンバリューベットがドミネイトしているハンドを降ろし、高いエクイティを持つドローやそれ以上のハンドにコールされる場合、シンバリューベットを打つインセンティブは低くなります。そのような局面では、よりポラライズされたレンジでのベット戦略を採用します。
- 相手のレンジの大部分をガットショットが占める場合、オーバーベットを打つことでこれらのドローをインディファレントにすることができます。