バリューとは
多くの人は、ベットをバリューかブラフのどちらかに分けて考えています。バリューベットとは相手のより弱いハンドにコールしてもらうことで、ブラフベットとは相手の強いハンドをフォールドさせることです。他にもセミブラフというものがあり、これは自分より強い相手のハンドをフォールドさせようとベットしますが、そのハンドにも勝つ可能性が十分にある場合(後のストリートでアウツを引けてより強い役を作れる)に使います。他にもシンバリューベットやプロテクションベットというのがあり、これはコールされた時にそこそこバリューを取れたり、フォールドさせて相手のエクイティを放棄させたい時に使います。
このような用語は便利ですが、これらの分け方は結局のところ人間の脳で理解できるように簡略化しています。結局のところ、ベットの意義は以下の2つの組み合わせです。
- ポットを大きくする – コール(またはレイズ)された場合にポットを獲得することで利益を得られます。相手のコールレンジに対してハンドがどれだけのエクイティを持っているかは最も重要な指標です。ただ、他にも考慮すべき点はあります。
- エクイティを否定する – 相手がフォールドすることによって利益を得られます。相手のエクイティを放棄させることが最も重要な指標ですが、先ほどと同様、他にも考慮すべき点はあります。
全てのベットは、勝てそうなポットを大きくすること、相手のハンドのエクイティを実現させないようにすること、この2つの組み合わせによって成り立っています。
簡単な分類方法
BTN対BB、SRP、100BB、SimpleキャッシュゲームでのAK7の例をみてみます。
BBが全レンジをチェックした後、BTNは大きいサイズのベットかチェックを選択します。今回はベットサイズをこの局面で最も使われている125%ポットベットのみとします。BTNはかなりポラライズしたベットレンジを採用しており、非常に強いハンドと非常に弱いハンドでベットし、多くの中程度の強さのハンドをチェックしています。
下の表ではBTNのそれぞれのハンドにおけるベット頻度と125%ポットベットによって得られるエクイティを示しています。
AKはバリューベットです。BBがフォールドしたときに得られるエクイティはポットの6%しかありませんが、BBのコールレンジに対して84%のエクイティがあるためポットの大半を獲得することができます。
AKとは違い、9♣6♣はブラフです。コールされると8%のエクイティしかありませんが、相手の74%のエクイティを放棄させることができます。
この2つのハンドの間のようなセミブラフの9♥6♥もあり、両方(ポットを大きくすること、エクイティを否定すること)からエクイティを得ています。9h 6hはBBのコールレンジに対して36%のエクイティがあるので、9♣6♣ほど純粋なブラフではありませんが、BBがフォールドしたときにポットの半分以上(54%のエクイティ)を得ることができます。
22はセミブラフとブラフの中間に位置しており、フラッシュドローよりもフォールドによる利益は大きいですが、ブラフよりもコールされた時のエクイティは高くなっています。
一方、ナッツフラッシュドローはAKよりは少ないもののバリューベットに近いハンドです。A♥4♥はフォールドからは、ほとんど利益を得られませんが、既にベストハンドを持っている可能性と、フラッシュやツーペアになる可能性を考慮すると、コールされたときのエクイティは73%と多くあります。
BTNがQQを全くベットしないのは、コールからもフォールドからも得られるものが少ないからです。フォールドさせたハンドにまくられる可能性が少なく、コールされたらQQは負けていることが多いです。ブラフされたくないからといって、このような場面でQQをチェックしない人も多くいますが、QQをチェックする理由は、チェックが魅力的な選択肢であることよりも、ベットが魅力的でないからです。このフロップはQQにとって好ましくなく、チェックが最もましな選択です。
難しい分類方法
全てのハンドが今回紹介した分類方法に当てはまるわけではありません。例えばQ♥9♠は、コールされたときのエクイティが12%しかないにもかかわらず、高頻度でブラフをしています。9♣ 6♣のような他のブラフと比べると、フォールドから得られるものははるかに少なくないです(エクイティは52%)。
Q9の全ての組み合わせがベットするわけではなく、BTNがベットするのはハートを持っている時だけです。また、Qx9♥よりもQ♥9xの方がベットする頻度が高くなっています。Q♥が相手のレンジにないのであれば相手がフォールドする可能性が高くなります。Q♥9♠とQ♣9♦はエクイティがほぼ同じですが、ベットした場合のEVは、はるかにQ♥9♠の方が高くなります。
EVが高い要因としては、ポットを大きくできることが挙げられます。Q♥9♠のエクイティは低いですがこれはショーダウンになった時の結果しか反映していません。後のストリートでブラフをして大きなポットを取ることもできます。
ショーダウンエクイティは、ポットを獲得できる大まかな目安にすぎません。
BTNがQ♥9♠を持っている際のターンの戦略を見てみましょう。
BTNのQ♥9♠がターンでドローになった場合、ベットする頻度が高くなっています。ストレートやフラッシュになる可能性があるのでベットしていますが、リバーで何も完成しないカードが落ちたとしても、このハンドはブラフを続けることが多くなります。ハートが3枚ボードにあれば、Q♥は強力なブロッカーとなります。リバーでもさらにブラフができる可能性があるため、BTNはコールされた時のエクイティが悪くても、フロップからブラフをすることができます。このハンドはショーダウンバリューを目指していないことが多いので、フロップやターンでコールされたとしてもそれほど悪くはありません。フロップやターンでコールされたとしてもベットをし続けるハンドであり、そのEVがフロップのベットにも考慮されています。
同様のことがAKとA♥4♥でも言えます。これらのハンドはコールされたときのエクイティが高いだけでなく、多くのターンやリバーでバリューベットができるため、ポットを大きくするメリットがあります。そのため、これらのハンドのEVはポットに対するエクイティよりも大きくなっています。
BTNは弱いAでベットをあまりしません。A8oのようなハンドはどこかでバリューベットをしますが、3つのストリート全てではしないので、すぐにポットを膨らませる必要はありません。また、ターンやリバーでブラフキャッチした方が利益的になる可能性もあります。フロップでポットをコントロールしても、後でバリューを失うことはありません。
まとめ
ポーカーは複雑なゲームです。フォールドエクイティとショーダウンエクイティは正確で簡単に計算できるため魅力的な指標ですが、これらの指標には限界があります。フロップのような早いストリートでのベットは、エクイティの変化だけでなく、後のストリートでどれだけチャンスを作れるかに左右されます。
有利なフロップだったり、強い役が作れそうなハンドを持っているからといって、ベットをしなければいけないわけではありません。また、自分のレンジに有利なフロップでとても弱いハンドを持っている場合も同様です。これらのハンドはいずれベットしたくなるでしょうが、フロップで必ずしもベットするわけではありません。
バリューであれブラフであれ、後のストリートでもベットし続けることができる場合、Cベットが効果的です。複数のストリートでベットする可能性がない場合はチェックが好ましくなります。