この記事は単体でも読むことはできますが、「プローブベット」の記事と合わせて読むことでより理解が深まります。
ディレイCベットとはプリフロップでのアグレッサーがフロップでチェックし、ターンでベットすることです。
多くのプレイヤーはフロップでCベットをしないと「弱さを見せた」ことになり、それ以降のストリートで相手からベットやレイズをされた時、広く守らなければいけないと考えています。確かに、ベットをしないことで相手の弱いハンドが残っており、後のストリートで相手のブラフ候補となるハンドは多くあります。相手がその弱いハンド全てでベットする場合はブラフが多すぎるため、広くコールすることが正しいエクスプロイトとなります。
ベットをしないことで、相手の弱いハンドをおろせなくなり、また後のストリートでブラフ候補のハンドが多くなります。
しかし、ターンでブラフを多くする必要はなく、またそれは正しいプレイではありません。ほとんどのターンでは、相手はかなりの頻度でチェックし、自分はフロップの時と比べて薄くバリューベットすることができます。ターンでベットされた時はフロップでチェックしているためナッツを持っている可能性は低く、レイズはほとんどしません。このような相手の追加情報を得られることが、チェックをする利点の大部分を占めています。
2つの例を検証してみます。1つ目はプリフロップでレイズしたプレイヤーがフロップで大きなエクイティアドバンテージを持っているケース。2つ目はエクイティが近いケース。どちらの例も100bbのキャッシュゲームで、LJ対BBのSRPですが、ここで述べる一般原則は、プリフロップで最後にレイズしたプレイヤーがフロップでベットしなかった状況全てに当てはまります。
有利なフロップ
A♦ K♥ 8♥のフロップでは、LJのエクイティは65%あり、ナッツを多く持っています。その結果、レンジの90%でベットしますが、ベットしてもあまり得をしないハンドもあります。
LJのチェックレンジは3種類のハンドで構成されています。
- A2、K6、JJのような、まくられにくい中程度の強さのハンド。これらのハンドは相手をフォールドさせても得るものが少なく、大きなポットに適したハンドではありません。
- 改善の見込みがほとんどない極めて弱いハンド。LJは7♥ 6♥や7♦ 6♦をチェックすることはほとんどないですが、7♠ 6♠は時々チェックします。このチェックは「あきらめ」ではなく、LJはいずれこのハンドでブラフをします。
- ブロッカー効果が大きいとても強いハンド。このボードではAAが当てはまります。ほとんどの場合、LJは強いハンドはフロップでベットし、後のストリートでもベットしてバリューを取りたいです。しかし、BBが全てのストリートでコールするハンドの多くはAxであるため、AAを持っているとそれらのハンドをブロックしてしまい、バリューを取りづらくなってしまいます。チェックはバリューを取ることを諦めているわけではありません。
LJのチェックレンジは、セカンドペアと「何もないハンド」に集中しています。
このボードでは、LJはチェックした後、どのカードがターンで落ちてもレンジアドバンテージを持っています。つまり、BBはターンでもチェックを多くするべきで、LJはフロップでベットしなかったハンドの多くをターンでベットすることができます。
シンバリューベット
チェックによってハンドの強さの境界線が下がります。
基本的にこのようなチェックはすべて、ハンドを「昇格」させ、たとえハンドが強くなっていなくても、前のストリートよりも価値のあるハンドになります。LJがフロップでチェックしたとき、LJがAK、AQ、KK、88などの非常に強いハンドを持っている可能性は低くなります。そのため、BBは後のストリートで広くコールするようになり、LJはフロップの時よりも薄くベットするようになります。また、BBが2回チェックしているため、強いハンドを持っている可能性が低いと判断し、薄くベットすることができます。LJはフロップでA9やAJを持っている際、ベットしてもチェックしても良かったですが、BBが4♦のターンでチェックすると、LJはこれらのハンドでは必ずベットします。
しかし、BBが2回目のチェックしたことで、LJが全てのハンドでベットできるわけではありません。実際、LJはQQ、JJ、TTのようなハンドでは、もう一度チェックしています。これはよくあるターンの動きで、プレイヤーはフロップの時よりも正直にプレイします。
ベットへの対応
BBからのターンでのベットは稀ですが、大きいサイズが使われます。LJはフロップでチェックしているため、レンジがキャップされており、ターンでレイズすることはほとんどありません。BBからのベットが大きければ大きいほど、LJのレイズ頻度は減少します。ほとんどの場合、LJはブラフキャッチをするかどうかの判断になり、MDF以上のフォールドをしないようにディフェンスをします。
例えば、BBから130%ポットサイズのベットをされた場合、AxはBBの多くのバリューハンドをブロックしているため、コールします。それ以下のペアはコールかフォールドになっています。LJの数少ないレイズはスロープレイした強いハンド(AA)かターンで強くなったハンド(44、A4)が大部分を占めています。
ここでは直感に反するコールが多く、特に7♠ 6♠のようなガットショットではアウツが4つしかなく、そのうち2つはストレートが完成したとしてもナッツになれません。ターンでのコールのEVの多くはリバーでのブラフから来ています。LJがフロップでチェックし、ターンのオーバーベットをコールするようなハンドは、リバーでチェックされたときにブラフするにはショーダウンの価値が高すぎます。従って、BBがリバーでチェックした後、LJからのベットにはあまりコールしないはずで、稀にある弱いハンドでのブラフはLJにとって十分な利益を生むハンドとなります。
理論ではこのように示されており、ブラフが上手くいくケースがあったとしても、7♠ 6♠でターンのベットにコールすることは、フォールドとEVは変わりません。このアクションはエクスプロイトされる可能性を最小限にするためのものであり、特に上手いプレイヤーでもない限りフォールドするのがよいでしょう。
このボードがLJにとって特に有利だからといって、BBのターンでのベットに対して反撃する理由にはなりません。むしろBBにとって良くない状況にも関わらずベットしているので警戒するべきです。
不利なフロップ
中位のカードでコネクトしているフロップでは両者のレンジは同じくらいの強さになります。LJにとってはあまり良くないフロップであり、他の多くのフロップのようにエクイティを獲得することができません。高い頻度でCベットすると、BBからチェックレイズを多くされ、エクイティを失うことになります。ほとんどの場合、LJにできることはチェックし、ターンで有利なカードが落ちることを祈ることです。
LJにとって不利なフロップであり、多くのフロップのようにエクイティを奪えるわけではありません。
ターンでLJのレンジが強くなることが多いため、フロップで強いハンドはあまりスロープレイしません。フロップでのCベットは主にセットとストレートで構成されています。
ベットへの対応
LJはチェック後のレンジが比較的キャップされているので、ターンでレイズすることはほとんどありません。
LJはチェック後のレンジが比較的キャップされているため、ターンでレイズすることはほとんどありません。33%ポットサイズの小さなベットに対しても、レイズは最も低頻度のアクションです。
最悪なターンカード、つまり4枚の連続した数字(3と7)になる場合、LJはフォールドすることが多くなりますが、ほとんどの場合MDFを基にディフェンスします。
AやKのようなLJに有利なターンではそれほどアグレッシブにBBのベットに対応しません。BBはこのようなカードではチェックすることが多く、ベットしたときのレンジは強くなり、LJにはレイズする理由がほとんどありません。
LJがレイズする場合、そのほとんどはスロープレイしたとても強いハンドやターンで強くなったハンドです。例えば、9がターンで落ちた時は、セットやストレートだけでなく、A9、K9、98、97でもレイズをしています。
LJのレイズはスロープレイしたとても強いハンドとターンで強くなったハンドです。
シンバリューベット
BBが2回目のチェックをした後、LJがシンバリューベットをするかどうかは、ターンのカードがどれほどBBのレンジを強くしたかによります。9sがターンで落ちると、フロップでチェックした何もないハンドは何もないままです。LJはA6、A5、小さめのオーバーペアなど、まくられやすいペアでベットします。しかし、ポラライズされたレンジでのチェックレイズをされることもあるため、AAやKKを重点的にチェックしています。
BBがターンでチェックすると、LJの弱いペアはフロップよりも強くなります。フロップのチェックとあまり関係のないターンのカードにより、LJのレンジではサードペアのA5がかなり高い位置にあります。
LJのフロップのチェックレンジにある多くの弱いハンドを強くするKsと比較します。この場合ではA5はそれほど強くはなく、ベットすることはほとんどありません。中位のポケットペアもベットすることが少なくなります。
まとめ
ポットをすぐさま取るのは良いことですが、IPはより多くの情報を集めることで、闇雲にベットするよりも良い結果を得られることがあります。チェックすることで、次のカードと相手のアクションを見ることができ、どちらもハンドをより正確に評価するのに役立ちます。
中程度の強さのハンドはこの追加情報によって最も恩恵を受けるので、チェックはそのようなハンドを多く含みます。その結果、チェック後はそれほどアグレッシブにはなりません。相手がベットした場合、ブラフキャッチするかどうかになることがほとんどで、相手のブラフがインディファレントになるような頻度でコールし、レイズすることはほとんどありません。
これは、チェックが利益的となる主要なケースではありません。相手がベットしてきた場合、いくつかのハンドは難しい決断を迫られることになりますが、そのようなときに良い選択肢がなくても問題ありません。相手がベットしてきて、難しい決断を迫られるようなハンドを持っていること自体が好ましくないシナリオです。相手が2回目のチェックをした際に多くの利益を得られるケースと引き換えに、時折支払うコストであると考えた方がよいでしょう。
相手が再びチェックした場合、最も有利なボード以外では比較的頻繁にチェックするはずですが、IPはシンバリューベットをしたり、相手の弱くなったレンジにブラフをしたり、ハンドの種類によってはポットを小さく抑えることができます。このように、より多くの情報を得た上でより良い決断をできること自体が、前のストリートでチェックすることによってアグレッサーが得られる利点です。