アグレッシブな相手のフロップのチェックバックを攻める
OOPでプレイすることはそれだけでも難しいものです。さらに相手がアグレッシブだと、エクイティの実現がより困難になり、常に厳しい決断を迫られます。では、もし相手がベットしなかった場合は、どのように立ち回ればよいのでしょうか?
相手プレイヤーの特徴
ここで、Aggro Andy をご紹介します。彼はタイト-アグレッシブプレイヤーで、相手に最大限のプレッシャーを与えることを好みます。彼は自分のレンジ全体の中でそのハンドがどの部分に位置しているのかを考えるよりも、ハンドを見てベットをする理由を見つけ、そのままプレイしようとします。Andyは低レートではかなり良い成績を収めています。それは、彼が多くのチップを注ぎ込むことが、勉強不足の対戦相手の大きなミスを誘発するからです。そして、彼はタイトにプレイすることを好むため、完全なエアーでチップを撒き散らすこともあまりありません。
Andyが厄介なのは、彼の戦略はバランスが取れていないにもかかわらず、ベットをした際に理論上よりも多くのEVを獲得する点にあります。では具体的な例を見ながら、彼がチェックした際になぜ、そして、どのように私たちがEVを取り戻すのかを検証していきましょう。
どのようにEVが移行するのか
Andyがチェックした際にアグレッシブに攻めることがなぜ重要なのかを示すために、まずは彼がベットをし過ぎた場合に、理論上何が起こるのかを見ていきましょう。この記事で使用するシナリオの例は、100bb持ちのキャッシュゲーム、BB vs BTN SRP のK♦9♠7♠のフロップを使用します。私たちはBBで、AndyはBTNです。
AIによるソリューションでは、Andyはフロップでトップペアを42%チェックする必要があります。これらのほとんどは、フラッシュドローのない弱いトップペアです。AKでさえ時々チェックしなければならないのです!
対戦相手のバランスの取れていない戦略をどう攻めるのかを理解していない場合、相手はその戦略のメリットだけを活かすことができます。それは、相手に利益をもたらし、自分が損失を被ることに繋がります。
そして、彼がすべてのトップペア以上のハンドでベットするようにノードロックをすると、とても興味深いことが起こります。
Andyがベットした際のEVは、+16bb/100と大幅に上昇します。この理由は分かりやすく、彼はベットレンジにエクイティを追加することでレンジを強化したためです。そして、強いレンジは(通常)高いEVを生み出します。たとえBBが完璧な反応をしたとしても、Andyがベットする際のEVが大幅に上昇してしまいます。しかし、彼のレンジ全体のEVを見てみると…
Andyはレンジ全体で-6bb/100のEVを失っています。AndyはベットすることでEVを得たにもかかわらず、全体的にEVがマイナスになってしまったということは、失われたEVはチェックから発生しています。これが、Andyのチェックをどう攻めるのかを理解することが重要な理由です。もし攻めない場合、彼のバランスが取れていない戦略は、常にメリットだけになってしまいます。
「ベットし過ぎ」の内訳
ベットを打ちすぎるパターンにはいくつかの種類が存在しますが、ここでは2つの主なパターンと、それらをどのようにエクスプロイトするのかを学んでいきます。
バリューハンドでベットを打ちすぎる場合
ポーカーを学ぶために教材を読んだり、観たりしたことがあるなら、おそらく”チェックレンジを守る”という概念を耳にしたことがあるでしょう。バリューハンドで常にベットをすると、チェックした際に非常に脆弱な状態になってしまうという概念です。これは、対戦相手が自分の戦略のバランスを乱す、最も単純な方法になります。
先ほどの例に戻ると、IPの相手がトップペア以上を常にベットするようにノードロックをすると、チェックをした際にほぼ全てのターンカードでエクイティアドバンテージを失います。例外となるターンカードは、IPにトップペアのコンボができるAです。
エクスプロイトに適した状況
IPがチェックをしたことでトップペア以上を持っていないことが判明した場合、OOPに最も有利なターンカードは何でしょうか?
この比較からは、ある傾向が見えてきます。すべてのターンカードで大きなEVを得るものの、最も大きなEVは、相手のレンジに強いハンドを作らせないカードから生まれています。この例では、ドローを完成させないブリックカードや、もう一枚のKなどです。GTOのソリューションにおいて、OOPのエクイティを上昇させる珍しいターンカードである5♠でさえ、さきほどのブリックターンほどのEVをもたらしません。
エクスプロイト方法
どのターンカードを最も攻めるべきかが分かったところで、実際にその目標を達成するためにはどのような戦略を設計したら良いのでしょうか?
ほとんどすべてのターンカードに共通していることは、OOPは理論上よりもはるかに大きなベットサイズを、さらに高い頻度で使用することができる点です。OOPは通常、ポットベットかオーバーベットを使用します。例えばターンがオフスーツのKだった場合、OOPはレンジの41%という高い頻度で、253%のオーバーベットでリードします。
さらに、もし相手が私たちのベットに対してわずかでも(4%程度多く)オーバーフォールドすると予想できる場合、さらに高い頻度でベットをすることが可能です。このケースでは、相手は88やフラッシュドローが付いていないオープンエンドストレートドローをフォールドするだけで良く、相手がオーバーフォールドすることはそれほど難しくはありません。その結果、ベット頻度は62%に急上昇し、ベットレンジの内訳は、バリューを得るためのKx、ほぼ全てのドローハンド、そして多くのエアーハンドをブラフとしてベットします。
ベットレンジが過度にバリューに偏っているアグレッシブな相手が、フロップでチェックをすることでレンジをキャップした場合、私たちはそのアドバンテージを自分の直感以上に活用することで、多くのEVを取り戻すことができます。
ドローでベットを打ちすぎる場合
低〜中レートでよく見られるのは、ドローでベットを打ちすぎるタイプのアグレッシブなプレイヤーたちです。多くのプレイヤーは、全てのストリートでバリューベットができない強いハンドや中程度の強さのハンドを、フロップで時々チェックしなければならないことを理解しています。
ですが、アグレッシブなプレイヤーはドローでチェックバックすることが苦手です。なぜなら、ドローを完成させなくても、ポットを勝ち取れる可能性があるからです。このような相手に対しては、私たちにとって有利となるターンカードは大きく異なります!IPの相手が、すべてのフラッシュドローと多くのストレートドローをベットするようにノードロックした場合、バリューハンドで過剰にベットする相手とは全く異なる結果になります。
エクスプロイトに適した状況
ここで注目すべきポイントは2点です。
- OOPにとって最適なターンカードは、先ほどの状況とは逆転しています(最初の例ではアグレッション=バリューでした)。今回の状況では、ブリックカードではなく、ボードが変化するカードが最適です。なぜなら、私たちはフロップのすべてのドローを保持する一方、IPにはドローが存在しないからです。主な例外は9♥で、BTNのチェックレンジを攻めるためには依然として不利なカードとなっています。これは、ドローを過剰にベットすることにより、IPのチェックレンジには多くのバリューハンドが残っており、そのレンジはセカンドペア(現在はトリップス)が多くの割合を占めるからです。この効果はA♥でも見られますが、BTNはAハイフラッシュドローをベットするため、レンジからいくつかのAxコンボが除かれています。
- IPはチェックした際に、すべてのターンカードにおいて最初の例ほど多くのEVを失いません。これには2つの理由があります。1つ目は、中程度から強いバリューハンドによってチェックレンジが守られているため、BTNは最初の例に比べて単純に強いレンジを持っているからです。さらに、OOPに有利なカードは少なく、BTNのチェックレンジを攻めるためには特定の方法でハンドが改善する必要があるため、BBのレンジは先ほどの例のように基本的に強くなるという訳ではありません。
エクスプロイト方法
ドローが完成した際に、前回の例とほぼ同じ方法で相手を攻めます。均衡戦略では、BBはフラッシュが完成する2♠で、ポットの40%程度の小さなリードベットを行います。
しかし、BTNがフロップですべてのフラッシュドローをベットするようノードロックされた戦略ではBBが先ほどと同じ頻度で非常に大きなオーバーベットのリード(ポットの253%)を行います。このベットサイズの劇的な変化は、BTNがチェックしターンでフラッシュが完成する可能性を失ったことにより、OOPが大きなナッツアドバンテージを獲得したためです。
そして先ほどと同様に、アンダーペアやセカンドペアのいくつかをフォールドすることで、IPが4%多くオーバーフォールドするようにノードロックをすると、ベット頻度は61%にまで跳ね上がります。
まとめ
最も重要なのは、バランスが取れていない戦略は、相手が非常に弱い状況を生み出すということです。このようなゲームツリーの部分は、相手がEVを失う可能性がありますが、適切に攻めなければ、そのEVを奪うことはできません。
とは言え、相手のバランスの偏り具合によっては、同一のランアウトでも全く異なる結果となるため、これらのシナリオを特定するのは難しい場合があります。対戦相手の正確な戦略を知ることは不可能ですが、彼らの傾向を理解することは、こうしたシナリオがいつ現れるのかを見極める上で重要な要素となります。
次にあなたの周りの“Andy”がフロップでチェックバックをした際、彼のレンジがどれほど強いのかを考えてみて下さい。普段は手強い相手でも、意外なほど頻繁に形勢をひっくり返せる局面が見つかるはずです。
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