プリフロップレンジの4つの形
ポーカーにおけるモーフォロジー(形態学)とは、レンジの形を研究する分野です。この考え方は、プリフロップの理論を学ぶうえでとても役に立ちます。ポーカーのレンジにはいくつかの種類があり、それぞれ戦略的に異なる性質を持ちます。それぞれを把握する最も簡単な方法は、レンジを特定の「形」と結びつけて捉えることです。すべてのハンドの組み合わせを追いかけるより、まずレンジ全体の形から大まかに捉えるほうが効率的で、プリフロップの判断もポストフロップのプレイも簡単になります。
ポーカーには4つの基本的なレンジの形があります。次の表は、ポストフロップのソリューションで見られる詳細なエクイティ分類のレイアウトにほぼ沿った形で表したものです。
- ポラライズド – 非常に強いハンドと弱いハンド
- リニア – 強いハンドのバリュー群
- コンデンスド – 大半が中程度の強さのハンド
- マージド – ナッツ、エアー、中程度の強さのハンドが混ざったもの
リニアレンジ
リニアレンジとは、
最も強いハンドから順に構成されるレンジ
を指します。一番上からスタートし、ある程度の強さに達するまで下へ向かって積み上げていく形です。
(ミドル〜ディープスタックの)プリフロップのオープンレンジは、リニアレンジの典型です。たとえば、NL500のキャッシュゲームにおける100bbのUTGオープンレンジが該当します。
このEV表示に馴染みのない方のために色について説明します。
- 緑のハンドはEVが非常に高い
- 黄色のハンドはEVがかなり高い
- オレンジのハンドはEVが多少ある
- 赤のハンドはEVがほとんどない
ご覧のとおり、レンジの大半は緑で、そこから黄色、オレンジ、赤へと連続的に変わっていきます。
A3sや55のような弱いハンドも含まれています。オープンするハンドとしてはギリギリプラスかトントンといったところですが、ボードカバレッジや、ブラフとして使われることが多いハンドです(それでも、相手がコールなりレイズしてきても、ある程度戦うことができます)。絶対的な強さで言えばまだ十分強く、決して「トラッシュ」ではありません。トラッシュハンドの例は、他のレンジで紹介します。
リニアレンジには最強クラスのハンドがすべて含まれます(つまりキャップされていません)。相手にする側は慎重に、使う側はアグレッシブにプレイしましょう。
レイズレンジを見ると、左上のAAから中央のポケットペアの対角線にかけて、非常に強いハンドが集まっています。その次に強いA9sや88といった中程度の強さのハンドは、すべてコールに回ります。ブラフを担うのは、スーテッド・オフスートを問わず、レンジの最も弱いところ、T2sやK5oのようなトラッシュです。
どのハンドがブラフでどれがバリューかは、EV表示で絞り込むと分かります。
このレンジの大半は、緑(最も強くEVが高い)か赤(最も弱くEVが低い)のハンドです。ここを見れば、あるハンドがブラフかどうかが分かります。TTは緑なので明らかにバリューハンドで、3.65bbのプラスとなります。一方A2oはブラフで、わずか0.03bbのプラスです。
最強のハンドで最大限のバリューを取り、ブラフで最大限のフォールドを引き出すため、ポラライズドレンジはサイズが大きくなる傾向があります。また、レイズしてもブラフを降ろすだけなので、ポラライズドレンジへの典型的な対応はブラフキャッチになります。ただし、レンジがポラライズされすぎると、小さいベットに弱くなります。小さいベットなら、レンジの上位にぶつかっても損失は最小で済み、ブラフを降ろすのに大きなベットは要らないからです。
コンデンスドレンジ
コンデンスドレンジとは、
中程度の強さのハンドで構成され、非常に強いハンドも非常に弱いハンドもほとんどないレンジ
を指します。つまりポラライズドレンジの正反対で、「デポラライズドレンジ」と呼ばれることもあります。ナッツ級もなければトラッシュもない、中程度の強さのハンドの集まりです。
NL500での、UTGオープンに対するBTNの反応が該当します。
このコールレンジの大半は、中程度の強さのハンドです。ナッツ級が抜けている一方、下限のトラッシュもほとんどありません。ここでもEVをざっと見てみましょう。
緑も少しありますが、多いのは黄色とオレンジです。弱めのハンドが含まれているのは、ボードカバレッジのためです。たとえば98sはギリギリプラスかトントンといったハンドですが、多くのフロップで絡むため、そうしたボードで相手のアグレッションを少し慎重にさせる効果があります。
コンデンスドレンジに対するOOPの正しい対応は、チェックを多くすることです。 このレンジはナッツ級はないものの十分なエクイティがあり、しっかり戦えるハンドだけで構成されています。このレンジには、後ろからのアグレッション(ブラインドのスクイーズなど)を抑止する狙いがあり、依然として強いレンジと言えます。
このスポットのフロップレポートを見ると、UTGはレンジアドバンテージが大きくあるにもかかわらず、チェック頻度は67.5%となっています。この点については、例外もあるものの、「オープンレイザーとコールドコーラーのポジションの開きが大きいほど、チェックは少なくなる」というルールがよく知られています。
この例では、UTGがオープンし、2人がフォールドしてBTNがコールすると、UTGのチェック頻度は67.5%です。代わりにCOがコールした場合は、70.6%になります。ポジションの開きが大きいほどオープン側のレンジアドバンテージも大きくなり、ポジションの力を打ち消せるからです。UTGのレンジはBTNに対しては大きく勝っていますが、COとは近い強さです。そのぶんポジションの重要性が増し、CO相手にはチェックが多くなります。
マージドレンジ
定義が難しく、混乱を招きやすいのがマージドレンジです。
マージドレンジとは、
ポラライズドでもリニアでもない、その中間にあるレンジ
を指します。ナッツ級、トラッシュ、そして中程度の強さのハンドが揃っています。
キャッシュゲームでは、レーキの影響でプリフロップでアグレッシブにプレイするインセンティブが強く、マージドレンジでのレイズが推奨されます。ただし、完全にポラライズドなレンジにするのは得策ではありません。ボードカバレッジやプレイアビリティなど、いくつかの理由から、3ベットレンジには中程度の強さのハンドも欲しいところです。
これまで使ってきたNL500の例で確かめてみます。BTNのオープンに対するBBの反応が該当します。
このレイズレンジは、ポラライズドでしょうか、それともリニアでしょうか。
かなり答えにくい問いです。左上にはナッツ級があり、J4sのようなブラフもあり、99〜77のような中程度のハンドや、KTs・T9sといった強めのスーテッドも入っています。
同じスポットのNL50でも見てみましょう。
遠目に見るとよく似ているでしょう。しかし近づいて見ると、NL500のレンジはややリニア寄り、NL50のレンジはややポラライズド寄りだと分かります。NL500には99や88、ATs・JTs・T9sといった強いスーテッドが多めです。一方NL50には、Q2sやK8oのようなトラッシュが多く含まれています。
この差を生んでいるのは、(ポストフロップの)レーキです。 NL50ではポストフロップに進むとNL500に比べ多くのレーキを取られるため、レーキが発生する前に、プリフロップの3ベットでポットを取り切るインセンティブが強くなります。
マージドレンジがポラライズド寄りになるか、リニア寄りになるか。その理由を知る最も簡単な方法は、相手の反応を見ることです
(この方法は、どのフォーマットのどのプリフロップスポットにも応用できます。)
BBの3ベットに対するBTNの反応
NL500でBTNがアクションするとき、レイズ頻度は31%です。一方NL50では39%にのぼります。レンジをリニア寄りにするかポラライズド寄りにするかの決め手は、どれだけの頻度でハンドを降ろされそうか、という点です。
NL50では4ベットされる頻度が高いため、ややポラライズド寄りのレンジでレイズします。Q2sを降りるのは簡単ですが、99はあまりフォールドしたくありません。強いハンドを4ベットに降ろされるのは痛いので、プリフロップではコールに回しやすくなります。対してNL500では4ベットされる頻度が低いため、ややリニア寄りにでき、レイズレンジに中程度の強さのハンドを多く含められます。
オープンレイズのサイズ
レンジの形を理解すれば、プリフロップのオープンサイズも理解しやすくなります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ポーカーの黎明期には、アーリーポジションのオープンはレイトポジションより大きくすべきだ、というのが定説でした。アーリーポジションのハンドは強いのだから、より多くのバリューを取れる、という理屈です。コールドコールを増やしすぎないため、という狙いもありました。
ソルバーの時代では、まさに逆です。
アーリーポジションのオープンは、レイトポジションのオープンより小さくなる傾向があります。
たとえばNL500では次のとおりです。
最小のオープンはUTGのミニマム2bbで、COは2.3bb、BTNは2.5bb、SBは3bbです。
アーリーポジションのオープンは、後ろに残る相手の数が多いぶん、レイトポジションよりも3ベットを受けやすいからです。
腕のあるプレイヤーの多くは、特にレーキのあるゲームでは、スクイーズを避けるためにオープンレイズに「3ベットかフォールドか」の戦略で対応します。レイトポジションではその懸念が薄れるため、オープンサイズは大きくなります。
NL500とNL50の比較に戻りましょう。それぞれのUTGオープンレンジが以下です。
どちらもプレイするハンドの量は同じ(17.6%)ですが、中身には微妙な違いがあります。NL500ではKToやT8sを一定の頻度でプレイし、55〜22を多めに使います。NL50ではA2sを一定の頻度でプレイし、K8s〜K5sを多めに使います。
先ほど触れたとおり、NL50ではレーキが高いぶん、3ベットされる頻度が上がります。そのため、A2sやK8sのように相手の3ベットレンジの一部をブロックできるハンドの価値が高まります。
3ベットのリスクが低いほど、サイズは大きくできます。アーリーポジションで小さくオープンするのは、弱いハンドのときに降りやすくするためです。強いハンドなら、そこからレイズすれば済みます。3ベットされる可能性が高いほど、レンジの形はブロッカー寄りに移っていきます。
この考え方は、エクスプロイトにも役立ちます。参加しているゲームで誰も3ベットしてこないなら、オープンサイズは大きくすべきです。逆にアグレッシブなテーブルにいるなら、サイズを小さくし、ブロッカー価値のあるハンドを優先しましょう
まとめ
ソルバーの出力を前にすると、プリフロップのレンジ内の全ハンドを覚えようとするだけで圧倒されます。ポストフロップならなおさらです。レンジで考える作業を扱いやすくするコツは、次の2つです。
- まずレンジ全体の形に注目する。
- 個別のハンドの検討は、その後に回す。
この進め方なら、効率が上がり、負担もずっと軽くなるはずです。
プリフロップでもポストフロップでも、レンジはたいてい、リニア、ポラライズド、コンデンスド、マージドという4つの基本形のいずれかで表せます。そして、レンジの形が取るべき戦略を教えてくれます。
- リニアレンジは、強いハンドのバリュー群で構成された最強のレンジです。使う側はアグレッシブに、相手にする側は慎重にプレイしましょう。
- ポラライズドレンジは、ナッツ級とブラフで構成され、中間がほとんどありません。基本的には、使う側はサイズを大きくし、相手にする側はブラフキャッチで対応します。こちらから攻めるなら、小さいベットサイズが適しています。
- コンデンスドレンジは、大半が中程度の強さのハンドです。ブラフの多く(ときには全部)に勝てる一方、レイズはより強いハンドにしかコールされないため、ブラフキャッチャーとして優秀です。トラッシュが入っていないレンジなので、こちらはチェックを多用します。
- マージドレンジは、リニアとポラライズドの中間にあります。定義も対応も難しいレンジです。レイズされるリスクが低いほどリニア寄りに、相手がアグレッシブに動いてきそうなほどポラライズド寄りになります。
このテーマをさらに深く知りたい方は、本記事の参考元となったTombos21の動画をご覧ください。
本記事は、Tombos21の動画でのテーマを、Barry Carterが掘り下げて執筆しております。



























