ボタンストラドル時のオープン戦略
ストラドルがあるゲームは、基本的においしいテーブルです。
カードを見ずにチップをポットに入れるプレイヤーは、ありがたい存在です。
ミシシッピストラドルとは、ボタンに3つ目のブラインドを置くことです。アクションはストラドルの後ろのSBから始まり、BTNで終わります。ボタンでのストラドルはUTGでのストラドルと比べてデメリットがはるかに小さく、有利とさえ思われることもありますが、実際にはそうではありません。BTNでストラドルできるゲームではストラドルするプレイヤーが増えやすいため、そういったゲームを積極的に探す価値があります。
BTNストラドルへの対応はUTGストラドルよりも直感的にわかりにくい部分があるため、この記事ではミシシッピストラドルがオープンレイズを検討する他のプレイヤーの判断基準にどう影響するかを解説します。
ストラドルについての基本的な注意点
BTNストラドルはUTGストラドルよりもゲームへの影響が大きく、その違いはこの記事で詳しく見ていきます。とはいえ基本的な考え方の多くは共通しているため、先にストラドルに関する記事を読んでおくことをおすすめします。押さえておくべきポイントは以下の通りです。
- BTNでのストラドルはUTGよりマシですが、カードを見ずにチップをポットに入れることは依然としてマイナスEVとなるプレイであり、できれば避けたいところです。
- ストラドルはビッグブラインドを2倍にするため、エフェクティブスタックが実質半分になります。この記事では200bbのシミュレーションを使用しており、これは100ストラドル相当で、多くのプレイヤーが慣れ親しんでいる100bbゲームに最も近い環境です。
- テーブル全員が合意してミシシッピストラドルを行う場合、勝ち組にとっては有利になる可能性があります。bb単位のウィンレートは下がりますが、ストラドルはbbの2倍のサイズのため、ミシシッピストラドルゲームで5 str/100勝つことは、通常の2ブラインドゲームで7 bb/100勝つより多くの額を稼げます。
ミシシッピストラドルの特徴
UTGストラドル
UTGストラドルがある場合、ほぼ通常の2ブラインドのホールデムと同じ感覚でプレイできます。レイズサイズが2倍になりますが、それ以外は通常通りです。アクションは3人のブラインドプレイヤーの左から始まり、時計回りに進みます。
BTN/ミシシッピストラドル
BTNストラドルはゲームの性質をより根本的に変えます。ブラインドが最初にアクションしなければならず、後ほど確認しますが非常に不利で稼ぎにくい状況となります。他のプレイヤーはブラインドの動きを見てから行動できる有利な面がある一方、BTNがすでに2bb(1str)をポットに投じているため、通常より積極的にレイズに対抗してくるというデメリットもあります。
これは特にストラドルが任意の場合、つまりテーブル全員の合意なしに自らの意志でストラドルを選んだ場合に当てはまります。そもそもブラインドストラドルをする時点でマイナスEVのギャンブルを厭わない姿勢を示しており、理論的には積極的にディフェンスすべきですが、そういった自発的なストラドラーはフォールドをより嫌がる傾向があることを頭に入れておきましょう。
自分がストラドルせずに他のプレイヤーがストラドルしている状況は、基本的に有利です。ただし、自分がブラインドのときに右隣が頻繁にBTNストラドルをする場合はかなり不利なため、可能であれば他の席に移った方が良いでしょう。
SBからのオープン
BTNがストラドルしている状況でのブラインドからのプレイは、非常に厳しい状況です。
ブラインドは常にテーブルで最も不利なポジションですが、通常はプリフロップで最後にアクションできることがその救いです。しかし最初にアクションしなければならないとなると、ブラインドを失う頻度が大幅に上がります。他の全員がフォールドするとわかっていれば対抗できたはずのレイトポジションのオープンに対しても、なす術がなくなるためです。
実はSBのオープンレンジはUTGと比べてそれほど大きく変わりません。ポジションの不利さが、すでにポットにチップを投じていることで相殺されるからです。SBの本当のデメリットは、フォールドするおよそ86%のハンドで1bbを失い続けることにあります。
以下がSBのミニマムレイズのオープン戦略です(特に記載がない限り、この記事のシミュレーションはすべて200bbのレーキなしゲームを使用しています)。
レイズサイズを大きくすると状況はさらに厳しくなります。7bbレイズ戦略において均衡でEVが上がるのはAAとAKのみで、多くのハンドでEVが下がります。フォールド頻度も約86%から約90%に上昇します。アーリーポジションからこれほど多くのチップをリスクにさらすことが割に合わないためです。
とはいえ、大きなレイズはゲーム状況によってはエクスプロイトとして有効な場合もあります。KKのような強いハンドで小さなレイズを選ぶ主な理由は3ベットを引き出しやすいからです。ルースでパッシブな相手に対しては、弱いハンドをフォールドしてより強いレンジで大きなサイズのレイズに切り替える調整が、アーリーポジションからでも有効な選択肢になりえます。
SBがオープンすると、フロップ以降はほぼ確実にOOPでの戦いになります。全員がフォールドしてもBTNはストラドルのおかげで有利なオッズでコールできるため、SBのレンジはOOPでの戦いを前提に構成されます。オフスートハンドは最上位のものに限られ、スーテッドコネクターや弱いポケットでさえリスクが高くなります。基本的には強いポケット、KQsなどのスーテッドブロードウェイ、Axsが中心です。
BBからのオープン
BBも同様のジレンマを抱えていますが、4bbレイズ戦略ではSBよりもかなり多くのハンドをオープンできます。ポジション別の参加頻度(4bb)はSB約14%、BB約19%で、実はUTGよりも広くオープンできます。すでに1bbをポストしているため、実質3bbの追加で4bbレイズができるからです。
レイズサイズが大きくなるほど1bbポスト分のアドバンテージが薄れるため、7bbレイズ戦略はBBにとってSB以上に不利になります。7bb戦略において均衡でEVが上がるのはAKoのみで、AAでさえミニマムレイズの方が高いEVを出せます。
BBがこのアドバンテージを最大限に活かす最善の方法はコールです。他のプレイヤー(SBを除く)の半分のコストで参加できるからです。今回のシミュレーションにはコールが含まれていないため断言はできませんが、筆者は均衡戦略に含まれると考えています。パッシブすぎてこちらを咎めてこない相手に対しては、積極的に試してみる価値があります。
通常のキャッシュゲームではオープンリンプはあまり馴染みがないかもしれません。しかし3.5:1というオッズでリンプできる状況も、同様に馴染みがないはずです(SBは例外で、リンプが有効な場面も多いです)。
BBにとってリンプの魅力は、レイズするには不十分なハンドでも安くポットに参加し続けられる点です。
リンプしたハンドの中にはレイズに対してフォールドするものもありますが、それは問題ありません。誰かが必ずレイズするとは限らず、これほど良いオッズがある状況では、「おそらくレイズされる」と「必ずレイズされる」を混同しないことが重要です。
多くのチップをリスクにさらす前に、誰がレイズするか、サイズはいくらか、他にコールや3ベットがあるかなどの情報を得られる点もリンプの魅力です。
レイトポジション、特にBTNストラドラーのレイズにはコールや3ベットで対応しつつ、アーリーポジションのレイズにはフォールドするようなハンドでリンプを活用する場面もあります。レイズするには不十分なハンドが多い中に強いハンドを混ぜてリンプし、レイズを誘うことも可能です。さらにリンプから3ベットのブラフで、強いハンドでリンプしたように見せる戦術も使えます。
リンプの主なデメリットは、誰かがレイズしない限りプリフロップでポットを取れる可能性がほぼなくなる点です。レーキなしのゲームや、プリフロップのレイズにフォールドしない相手に対して特にリンプが活きる場面が多くなります。
そもそもミシシッピストラドルゲームでは、小さなレイズでポットをスチールできることは稀です。アクションがBTNまでフォールドしても、BTNはIPで有利なオッズでコールできるため、フォールドするのは4分の1以下です。つまりレイズしてもポットを取れる可能性は低く、リンプすることでポットに参加し続けながら他のプレイヤーの動きを見つつ、リスクを最小限に抑えられます。
UTGからのオープン
先ほど触れたように、UTGのオープン戦略はSBと非常に似ています。ポジションの優位性が、ポットにチップを入れていない分で打ち消されるからです。
SBのレンジと同様に、UTGのレンジもスーテッドハンドとポケットペアが中心です。9xsやポケット、Axsが加わるなどやや広くなりますが、レンジ構成の基本的な考え方は同じです。
SB・BBはポスト分の割引があるため小さなレイズが特に有効ですが、そのアドバンテージがないUTGにとっては、大きなレイズがより検討しやすい選択肢になります。均衡では7bb戦略でKK〜AA、AK、AQのEVが上がり、約2%のハンドがフォールドに変わります。
レイトポジションからのオープン
各ポジションを細かく分析したり、全スポットのソルバーレンジを暗記したりする必要はありません。全プレイヤーがちょうど200bbを持ち、誰もミスをしない状況はほぼ存在せず、ソルバーレンジが完全に正確になるのはそういったゲーム条件のみです。
ソルバーレンジの「なぜ」を理解することを目標にしてください。そうすることで、実際のゲーム状況において自分の判断基準がオープンレンジにどう影響すべきかを、より的確に判断できるようになります。
ブラインドの特殊な状況についてはすでに考察しました。UTGとCOのオープン戦略を比較することで、ポジションがソルバーのオープン戦略にどう影響するかがわかります。その間のポジションはダイヤルのように機能し、ポジションが前であるほどUTGに、後ろであるほどCOに近い戦略を取るべきです。
各ポジションのオープンレンジを見ていくと、オフスートハンドがなかなかレンジに入ってこないことに気づくでしょう。HJでもQToにフォールド頻度があります。
COになると大きな変化があります。COのオープンレンジはHJの約1.5倍の広さで、BTNとの間に他のプレイヤーがいない唯一のポジションです。通常のノーストラドルゲームにおけるSB対BBの関係に非常に近く、COのオープンレンジがその際のSBのレンジに似ているのも自然なことです。後ろに1人しかいない上、BTNはすでに1strのチップをポットに入れているため3ベットのインセンティブが低く、3ベットのリスクが大幅に下がります。
BTNのCOミニレイズへの対応は、フォールドはほぼなく、レイズ(14bb)はレンジの13.6%のみです。
フロップ以降ほぼ確実にOOPになることが、COがオフスートハンドは絞りながら、BTNの広いコールレンジに対してQ2sや95sといった比較的弱いスーテッドハンドをオープンする理由です。エクイティの実現が鍵であり、その点でスーテッドかどうかは大きな違いをもたらします。
COからの大きなレイズは最適な選択肢になったか?
COがBTNとヘッズアップになりやすく、3ベットされる可能性も低いことから、他のポジションと比べて大きなレイズがより魅力的になります。他のプレイヤーのコールやレイズを警戒する必要がなく、BTNとのヘッズアップで最も力を発揮するハンドに絞れます。また強いレンジでプレイしているため、ポジションの不利があってもポットを大きくすることにメリットがあります。実際、大きなレイズはSPRを下げることでCOのポジションの不利を若干軽減します
大きなレイズが明確に最適とは言い切れませんが、他のポジションと比べてその差はかなり縮まっています。AToや99といった比較的弱いハンドでさえ7bbレイズ戦略でEVが上がります。
レーキありのゲームでは、COのリスク計算が大きく変わります。 コールされてフロップに進むとレーキが発生するため、ミニレイズの旨みが薄れます。7bbレイズはより魅力的な選択肢となり、Q2sといった弱いハンドでさえ4bbレイズと比べてEVが上がります。
まとめ
ミシシッピストラドルは「ゲームの質を下げる」と言われることがありますが、全員が正しく適応すればある意味その通りです。OOPからの非常にタイトなプレイを促し、ブラインドが最初にアクションを強いられることで、通常の2ブラインドゲームが持つ「ブラインドへの追加インセンティブ」という設計が損なわれます。
ミシシッピストラドルがある状況での正しいプレイは地味かもしれません。しかし自分がBTNストラドルをしていなければ、それは十分に稼げる戦略です。
オープンした場合はフロップ以降OOPでの戦いになることを念頭に置き、スーテッドハンドとポケットペアを中心にレンジを組み立てましょう。
レイトポジションからの大きなレイズやブラインド・COからのリンプなど、型破りなプレイも積極的に取り入れてみてください。慣れない状況になるかもしれませんが、それは相手も同じです。咄嗟の対応力で上回れれば、多少の調整が完璧でなくても十分に勝機はあります。



















