プールリークをプロはソルバーを使ってどのように狙うのか
ソルバーを使って勉強する際、人は視野が狭くなり、本来のソルバーを使う目的を忘れてしまいがちです。さまざまなラインで、どのハンドで何をしたいのかを理解するのにソルバーは非常に優れたツールと言えますが、得られる情報があまりに多いので、初学者は本来の目的である「EVの最大化」を忘れてしまうことがよくあります。
今回は、私がソルバーを使って勉強する際の方法をご紹介します。今回選んだのは以下のシチュエーションです。SB対BBのSRP、IPからのターンCベット(フロップのOOPチェック、ベットからのバレルを打つかどうかのシチュエーション)。
メモ:ゲームツリーの後半を勉強する際は、関連する親ノードを事前に勉強しておくのがベストです。今回は、フロップでのチェックコールの動き方をよく理解してからこのラインを学びましょう。
学習目標の設定
ソルバーでの学習に入る前に、まず何を調べようとしているのかを明確にしましょう。リサーチクエスチョンを用意しておくことが重要です(私の例は後述します)。今回は4,5個の問いをあらかじめ考えておくとよいでしょう。
学習を進める中で、予想外のアウトプットに出会うこともあると思います。こうした発見は知識として蓄えておく価値はありますが、常に最初に立てた問いに立ち返ることで、学習の方向性を見失わずに済みます。途中で見つけたお宝はメモしておき、後日別のセッションで扱うとよいでしょう。
学習目標を作る際は、常にEVの最大化という本来の目的を意識してください。そのスポットでの基本的な戦略が全く分からない場合は、それを先に理解するのが最優先です。それ以外の学習は、実際の対戦相手とプレイした場合に、自分の判断や戦略がどのように変わるかを検証する という本来の目的に沿って進めるようにします。
概念的な問い
このノードにおけるバリューの境目はどこにあるか考えましょう。ターンで落ちたカードの種類ごとに整理すると理解しやすいです。
- ブリック(ボードにあまり影響を与えない場合)
- オーバーカード
- フラッシュカード
- ナッツが変わるカード(IP/OOP両方。例:T643、7424、A62K、KJ4T など)
さらに考えたいのは、
- どのハンドがブラフとして最も機能するか
- どのボードで、バレルにどのくらいのエアーが必要か
相手のレンジはどれくらいキャップされているかも重要です。
- このノードで相手が持ちうる最強のハンドは何か、そのハンド群はレンジの相手のどのくらいの割合を占めるか
※これらの問いへの答えはターンで落ちたカードの種類によって大きく変わります。
戦術的な問い
人がフロップでどのようにプレイするかを理解した上で、ボードによって自分のアクションがどのように変わるかを考えます。
- Aハイ、Kハイボードでは、人間は強くキャップされたレンジやコンデンストレンジでフロップをチェックコールする傾向があります。
これは、こうしたボードでブラフできるエアー(ショーダウンバリューがある場合も含む)を多く持つためです。
このことを踏まえて、このノードでのベット戦略の変化を調べます。
- ツートンボードでは、OOPでフロップベットに使われる即時ドローが多すぎる傾向があります。そのため、フロップでチェックした場合、ターンでフラッシュやストレート完成のカードに対して過剰にフォールドしてしまうことがあります。
相手が ベット-チェック-ベットラインでリバーをブラフするエアーを十分に持っていない場合、リバーで得られるEVは減少します。こういった相手の場合はターンでバリューを前倒しにする戦略が有効かもしれません。
コンセプト(理論)
この記事では、私の勉強方法を紹介するために、1つのフロップのみを取り上げます。今回の目的は全体像をつかむことなので、細部まで踏み込むことはしません。
以下では、T♠8♠2♦のフロップに対するIP側のCB戦略を、5種類の異なるターンごとに整理しています。この情報から私が得た重要なポイントは、レポートとあわせて下に要約しています。
T♠8♠2♦でのIPのCBターン戦略
ここまででも、すでに多くの考える材料があります。私が学習しながらメモを取るときは、観察した重要な要素をもとに、ソルバーから得られる要点を自分用にシンプルにまとめています。以下は今回の例です。
要点:
- エアー:バリューの基準は分かりやすくJT以上あたりにあり、KT以上はほぼピュアにベットしています。この場面では小さめのオーバーベットを使っています。
- オーバーカード:フロップでトップペアだったTxが、ターンでセカンドペアになった場合はあまりバレルしません。一方で、ターンで新しくトップペアになった場合は積極的にバレルします。
- フラッシュカード:強いTxでも必ずベットする必要はなくなり、ベットサイズも小さくなる傾向があります。
- ストレートカード:例えば9(両者のレンジに大量のストレートが生まれるカードが落ちた場合)やそれに属性が近しいカードが落ちた場合、エクイティの高いTx(QTやJTなど)はバレルする傾向が強くなります。これらのハンドは、ターンでエアーが落ちた場合よりもバレル頻度が増えます。
- 複数のドロー完成カード:ベットサイズの使い分けをより工夫する必要があるようです。トップペアは依然として一定頻度でベットしますが、エアーが落ちた時より大きなバリューは取れないため、それに対応する形でサイズを分ける戦略が見られます。
ポイント:
バリュー:
- OOPはオーバーペアや一部はATはフロップでベットかチェックレイズすることが多いため、ターンでOOPに新しいナッツ級コンボが大きく増えないカードの場合、KT+あたりが大きくポットを膨らませたいハンドの基準になります。
- OOPはAKやKQでフロップをフロートしているケースもそれなりにありますが、ターンで新しくトップペアになったハンドは、OOP側にフロップでチェック/コールしたミドルペアやローペアが大量にあるため、引き続きバリューベットできます。
- これはOOPのフロップチェック/コールレンジが影響している可能性が高いでしょう。このようなミドル〜ウェットなフロップでは、OOPはAハイやKハイのエアでフロートする頻度がそこまで高くないため、Kxがヒットしたときはかなり強いハンドになります。ただしT62rのようなボードでは少し事情が異なります。この場合、OOPはKQやKJのようなハンドでもフロップをチェックコールすることが多く、同じ構造にはならない可能性があります。
- また似ているようでも、ターンでAが落ちた場合は挙動が少し変わります。OOPのフロートには比較的強いAハイが多く含まれるため、フロップでベットした弱いAxはターンでチェックバックしてブラフキャッチに回ることができます。
- これはOOPのフロップチェック/コールレンジが影響している可能性が高いでしょう。このようなミドル〜ウェットなフロップでは、OOPはAハイやKハイのエアでフロートする頻度がそこまで高くないため、Kxがヒットしたときはかなり強いハンドになります。ただしT62rのようなボードでは少し事情が異なります。この場合、OOPはKQやKJのようなハンドでもフロップをチェックコールすることが多く、同じ構造にはならない可能性があります。
- ドロー完成カード:ドローが完成するターンではベットサイズは小さくなる傾向があります。
- ドローが入ると相手のレンジを大きくキャップできなくなる。
- 両者がストレートを持ち得るカードでは、ブロッカーを持つトップペア(バックアップエクイティもある)でベットするのが好まれます。
- フラッシュドローが完成する場合も基本的には同じですが、少し注意点があります。
- ターンで(JTo / QToなどで)シンバリューベットする場合、バックドアエクイティとしてスペードを1枚持っている方が好まれます。
- 一方でAToやKToの場合は、スペードを持っていない方が好まれるケースが多いです。相手はAKやAQのスペード持ちでチェック/コール→チェック/コールすることがあるため、こちらがスペードを持つと相手がついてきてくれるレンジをブロックしてしまうためです。
ブラフ:
- このボードにはストレートドローやフラッシュドローが多く存在するため、ターンが低いエアーでも完全なエアーよりドロー系ハンドをバレルに使う方が好まれます。
- 低いストレートドロー(53s、63s、65sなど)はショーダウンバリューがほとんどないにもかかわらずチェックバックする傾向があります。これはIPでターンバレルを行う場面でよく見られるパターンです。ブラフに使われやすいストレートドローは、フラッシュドローを持つオフスートコンボや、相手のトップペアまたはセカンドペアに対するオーバーカードを含むものです。これらのハンドはリバーでペアを作ってOOPのブラフキャッチャーをまくる可能性があり、そのペアが十分強ければバリューベットに回れる場合もあります。
戦略(エクスプロイト)
エクスプロイトの具体的な課題を調べる際は、論点をぶらさないことが重要です。何を調べようとしているのかを明確にし、仮定からからどんな論理になるのかを、一歩ずつ整理していくべきです。例えばこんな形です。
前提とそれが意味すること
人間はフロップでドローを過剰にベットすると仮定します。その場合:
- 相手のフロップのチェック/コールレンジは、よりショーダウン寄りのハンドになります。つまり、後のストリートでドローが完成したとき、相手のナッツ級ハンドは本来あるべき数より少なくなります。
- 加えて、相手はチェック/コール-チェック-ベットラインでブラフ不足になります。なぜなら、このラインにはショーダウンできないハンド(このボードでいえばQJ、97、J9など)が不足するからです。
ここから論理的に導ける仮説は、上の前提が正しいとすれば、こちらのメイドハンドはターンをチェックバックしてリバーでブラフキャッチする方針を取ると、本来よりパフォーマンスが落ちる、ということです。
ケーススタディ:ドライボード
まず、基準を作るためにGTO Wizard AIを回します。
出力は先ほど見たものとほぼ同じです。トップペアではQT+あたりが大まかなバリューの下限です。低いストレートドローはチェックバックすることが多く、フラッシュドローと強めのストレートドローがブラフレンジの大部分を占めています。
以下はフロップで50%ベットを打たれたときのOOPのレンジです。
AJ〜AKが多く、KQも一部含まれていることが分かります。QJ、Q9、J9、97といったストレートドローもかなりチェック/コールしています。さらに、これらのストレートドローはフロップでそこまで高頻度でベットしていないため、OOP側は後のストリートでブラフに使えるハンドを多く持つことになります。
次は、フロップをチェック/コールしたSBがターンについてくるレンジです。
ソルバーでノードロックなどでエクスプロイトのアイデアを検証するときは、必ず同一条件のシミュレーションを別で開いて、そちらを編集するようにしましょう。そうしないと、同じ条件同士で比較ができません。
また、こうしたテストをするときは、最初から極端に振るのではなく、まずは仮定に合わせて少しだけ調整した状態から始めましょう。多くの場合、わずかな変更だけで答えが出ます。逆に、ほとんど同じ結果に見えることもあります。相手がどの程度ズレたら自分の戦略に大きな変化が出るのか、いろいろ触って確認してみてください。
では、上のレンジを実戦に少し近い形になるよう調整してみます。
補足:ターンやリバーのノードをいじるときは、ソルバーが後のストリートでのエクスプロイトに合わせて前のストリートまで再調整しないように、必ずそれ以前のストリートをロックしてください。そのために「combo locking toggle」を使います。
答えを見る前に、ブリックターンではIPのCB戦略がどう変化するか考えてみてください。こちらのEVがどこから来ているのかも含めて、具体的に考えてみてください。
ネタバレすると、そこまで大きくは変わりません。バリューベットする動機はほぼ同じです。ターンをチェックバックしてリバーでブラフキャッチに回るラインからは、そこまで大きなEVは増えません。つまり、バリューベットする動機はおおむね変わらないということです。
ただし、ここはそこまで面白いテクスチャではありません。先ほど整理した通りです。では、ドローが入るカードを見ていきましょう。
ケーススタディ:ウェットターン
全体のベット頻度が約10%増えているのはかなり大きいです。こちらはTxでかなり広くバリューベットしているように見えます。相手がストレートを持っていることをそこまで警戒しなくてよくなったからです。
また、このカードはオフスートのツーペアやセットも多く生み出しますし、かなりの数のブラフキャッチャーが追加のエクイティを得るカードでもあります。この点が、ターンでのエクスプロイトの余地をやや減らします。
ポイントとしては、レンジの非対称性から生まれるEVは、主にリバーで回収されます。ターンのプレイラインはベースのシミュレーションとそこまで変わらないことも多いですが、リバーを見ると、どこから大きくEVが出ているのかがはっきり見えます。今回もまさにそうで、OOP側のレンジがかなりキャップされるため、こちらはどのセットでも安心してオールインでき、ツーペアもすべてバリューベットできます。
相手のレンジがよりキャップされる結果として、ナッツ級ハンドを欠くぶん、相手はより広くコールダウンしなければならなくなります。上が均衡シムでリバージャムを受けた場合、下がノードロック済みシムです。ブラフキャッチャーのどれだけ多くのコンボが追加でコールを強いられているかに注目してください。
では、OOPにフロップでより多くのフラッシュドローをベット、あるいはチェックレイズさせるよう固定したうえで、ターンがフラッシュ完成カードだった場合はどうでしょうか。これは皆さんへの課題として残しておきます。
ドロー完成ターンにおいて、このラインで相手のストレートが不足しているなら、こちらはさまざまな形でかなり大きなEVを得られる、と十分に結論づけてよさそうです。
ただし、この研究は相手がベット-チェック-ベットラインでブラフ不足である、という前提のもとで行っています。この主張について、この記事ではその前提に対する根拠を提示していません。戦略を変える前に、ベット-チェック-ベットラインのいくつかのボードを見て、この前提が妥当かどうかを調べてみてください。もし相手がそのラインでブラフ過多なら、この議論全体の見方が変わってきます。
これでこの記事は締めくくりです。主な目的は、勉強中に自分がどうやってノードを検討しているかを示すことでした。
エクスプロイトを組み立てるときに重要なのは、対立仮説に至るまでの論理の鎖を作り、その一つひとつの輪が妥当かどうかを批判的に検証していくことです。
多くの場合、前提は一つではなく複数あります。そして、それぞれについて「プールが本当にその方向に偏っている」とどれだけ確信できるかの度合いも異なります。忘れてはいけないのは、最終目的は実際の相手に対して自分の戦略を改善することです。シムを設計して回し、検証の中で少しずつ調整し、その結果何が起きるかを丁寧に観察してください。観察したことと、そこから得た考えを記録していけば、本質的なメカニズムを見抜き、自分の中に落とし込みやすくなります。
まとめ
- ターン/リバーのスポットを研究する前に、そのスポットに関連する前のストリートの基礎知識をしっかり準備しておきましょう。そうすることで、関心のあるノードに取り組む際の効果が高まります。
- 勉強を始める前に学習目的を明確にして意識的に進めること。
- エクスプロイトを調べる場合は、ゆっくり慎重に進めること。
→ エクスプロイトにおいて最大の武器は「頭の中のソルバー」。ソルバーを回すコンピュータは、その思考ソルバーを強化するための道具。
→ 自分が前提としているエクスプロイト仮説を明確にし、なぜベースライン戦略を調整すれば実戦でEVが上がると考えているのか、その論理を整理する。
→ ノードロックやシミュレーション変更を行うときは、
「仮説が少しだけ当たっている場合」と「仮説が完全に正しい場合」
の両方を確認する。そうすることで、どの程度強くプールをエクスプロイトすべきかが見えてくる。- 例えば、相手がかなり大きくミスしている場合にしかソルバーが強いエクスプロイトを出さないなら、その極端な戦略変更は実戦ではあまり効果的でない可能性がある。
- わかりやすいメモをきちんと取ること。



















