スクイーズに適したハンドの選び方
これまでのブログと同様に、今回のテーマについても、私自身が専門家と名乗れるほど理解しているわけではありません。ただポーカーで疑問に思ったことをGTO Wizardで検証し、その過程や気づきを整理して記事にしています。
ある日、プロポーカープレイヤーの友人2人が、スクイーズに選ばれたあるハンドについて疑問を口にしていました。私はそのハンドを見て「使っても良いのでは」と感じたものの、「プリフロップのスクイーズハンドとして何が優れているのか」を自分がきちんと考えたことがなかったと気づかされました。今後同じような場面で迷わないためにも、今回はこのテーマを掘り下げて整理していきます。
スクイーズとは、非常に強いレンジを示唆するプリフロップのレイズです。スクイーズが発生すると、オープンレイザーは、後ろでコールしたプレイヤーが強いハンドを持っている可能性を警戒しなければならず、多くのハンドをフォールドしなければなりません。また、コーラー側のプレイヤーも難しい立場に置かれます。多くの場合、本当に強いハンドであればコールではなく3ベットを選ぶため、コールした時点でレンジがある程度キャップされてしまいます。
そこで本記事ではスクイーズに関し、4つのスポットを比較し、どのようなハンドがスクイーズとして適しているのかを探っていきます。
1. さまざまな状況でのスクイーズ
今回検証していく状況は、以下の4つです。
- キャッシュゲーム
- ICMを考慮しないMTT
- バブル付近のMTT
- バブル付近のPKO MTT
今回取り上げる各例はいずれも、エフェクティブスタック40bb未満の状況です。アクションは、COがオープン、BTNがフラットコール、そしてBBです。
1.1 キャッシュゲーム
まずは、40bbのキャッシュゲームのスポットから見ていきます。
このスポットでは、全体の9.8%のハンドでスクイーズしています。多くの場合は10bbにレイズしていますが、40bbのオールインも一定頻度で含まれています。全体としてのスクイーズレンジはいわゆるリニアレンジですが、オールインに回る部分については、ややキャップされた構成になっています。ただし全体として見ると、スクイーズレンジの大半は非常に強いハンドで構成されています。
1.2 ICMを考慮しないMTT
次に、MTTにおけるチップEVのレンジを見ていきます。
このスポットでは、12.1%のハンドでスクイーズしています。その内訳は、オールインとレイズがおよそ半々です。MTTのスクイーズレンジは依然としてある程度リニアではあるものの、キャッシュゲームと比べると、よりポラライズされた構成になっています。
よく見ると、Ax系のハンドにやや比重が置かれていることに気づくはずです。この違いは、MTTとキャッシュゲームにおける「レーキ」と「アンティ」という構造的な差にあります。
ハンドごとにレーキが発生するのはキャッシュゲームだけであり、その影響でレンジ全体はタイトになり、スクイーズ頻度も低く、よりリニアな形になります。また、レーキは基本的にポストフロップに進んだ場合にのみ発生するため、プリフロップでポットを獲得することへのインセンティブが高まります。
一方、アンティの存在によってポットが大きくなるため、MTTではより多くのハンドをプレイする方向に働きます。これが、MTTのレンジが広くなる理由です。
また、チップEVベースのシミュレーションではコールが相対的に魅力的になるため、レンジはよりポラライズされ、ブロッカー寄りの構成になります。その結果、MTTのスクイーズレンジではバリュー部分がより強くなり、それに対応する形でブラフの選択にも影響が表れます。
どちらのケースでも、KTsやJTsといったスーテッドのブロードウェイハンドが、スクイーズレンジに多く含まれています。これらは、より強いハンドからフォールドを引き出せることを期待したブラフです。一方で、これらのハンドはマルチウェイでもプレイしやすい特徴を持っています。フラッシュやストレートを作れる可能性があり、状況によってはワンペアだけで勝つこともあります。
スクイーズを検討する際には、2人にコールされた場合にどの程度機能するかを意識することが重要になります。
1.3 バブル付近のMTT
次は、参加人数1000人規模のMTTにおけるバブル付近という設定での(他の部分は同じ)スポットを見ていきます。
このスポットでは、10.7%のハンドでスクイーズしていますが、オールインはごく一部に限られています。レイズサイズも小さくなり、10bbから8.5bbに下がっています。
レンジは非常にポラライズされており、バリュー・ブラフともに、特にAxといったブロッカー性の高いハンドが中心になっています。
これらすべては、トーナメントにおける最大のインセンティブが「生き残ること」である点を示しています。トーナメントではオールインはリスクの高い選択となるため、それに見合うハンドが減っています。また、トーナメントではレイズを選ぶ際に、リスクにさらすチップ量を抑える傾向があります。
- 自分のスタックにあるチップの価値がより高くなり、チップを守る意識が一段と強まります。
- ただし、これは相手にとっても同様で、その結果として全体的にフォールド頻度が高くなります。
ここまでを踏まえると、スクイーズレンジがブロッカー寄りになっている理由も自然に理解できます。トーナメントのリスクが高い局面では、相手に抵抗されずにポットを獲得できること自体に大きな価値があり、ブロッカーはその状況をより起こりやすくしてくれます。
1.4 バブル付近のPKO MTT
最後に、PKOについて見ていきましょう。なお、GTO Wizardのソリューションデータベースには、現時点で全プレイヤーがエフェクティブスタック40bbのPKOソリューションが存在しないため、これは完全に同条件での比較ではありません。ただし、今回の例はそれにかなり近い条件です。このスポットではBBが他のプレイヤーをカバーしており、バウンティを獲得できる状況です。
どちらもバブル付近の例ではありますが、このスポットは通常のMTTバブルとは性質が大きく異なります。スクイーズ頻度は16.4%と高い一方で、オールインはほとんど見られず、レンジはよりリニアで、スーテッドのブロードウェイハンドに比重が置かれています。
このレンジは、PKO MTTのバブル付近において、2つのプライズプールによって生じる相反するインセンティブをよく表しています。PKOでは、ICMという「ムチ」だけでなく、バウンティという「アメ」があるため、生き残りを最優先にする必要性は相対的に低くなり、その分、より大きなリスクを取る動機が生まれます。
そのため、フォールドを促すよりもアクションを引き出すことを重視し、オールインは選ばれません。結果として、レンジはマルチウェイでプレイしやすいハンド(例:スーテッドのブロードウェイ)に寄り、1つよりも2つのバウンティを同時に狙える状況の方が高い期待値を持ちます。
2. スクイーズに適したハンドとは
ここまで、さまざまな状況におけるスクイーズレンジを見てきました。ここで改めて「スクイーズにおける3ベットレンジは、通常の3ベットレンジと何が違うのか」という本質的な問いに立ち返ってみましょう。
その違いを明らかにするため、ここではCOがオープンし、BTNがフォールドしてヘッズアップになった場合に、BBがどのように対応するかを確認していきます。なお、グレーで表示されているグラフは、前のセクションで分析したマルチウェイ時のレンジで、比較のために併せて掲載しています。
2.1 キャッシュゲーム
まずは、40bbのキャッシュゲームから見ていきます。
エフェクティブスタック40bbのキャッシュゲームにおいて、1人相手の3ベットレンジと、2人相手のスクイーズレンジを比較すると、いくつか明確な違いが見られます。まず、レイズサイズは10bbではなく8bbと小さくなっています。スクイーズではすでにポットが膨らんでいるため、相手に簡単にコールされないようサイズを調整する必要があり、この点は相手が1人減ることを考えれば妥当です。
また、ヘッズアップの状況ではレイズ頻度も高くなっています。(9.8%から10.3%)。その結果、ブラフ時・バリュー時ともに、相手の反応を過度に警戒する必要はなくなります。また、ヘッズアップのレンジにはオールインが含まれておらず、3人参加時に3.7%の頻度でオールインしていたケースとは明確な違いがあります。
ヘッズアップでは、レンジの形はややポラライズ寄りになります。これはキャッシュゲーム特有の事情として、レーキを避けるためにプリフロップでポットを獲得したいというインセンティブが働いているためだと考えられます。一方、3人参加のポットではポストフロップに進む可能性が高く、より強くリニアなレンジの方が機能します。
もう一つの大きな違いは、スーテッドのブロードウェイハンドがほとんど含まれていない点です。マルチウェイのレンジでは、KQs〜KTs、QJs、JTsといったハンドはいずれもレイズされていますが、ヘッズアップではこれらのハンドはいずれもレイズされていません。
この背景にはPKOでも見られる明確な理由があります。。これらのハンドはフラッシュやストレートを作れる可能性があり、マルチウェイでも十分に戦えるハンドで、状況によってはワンペアだけで勝つこともあります。そのため、2人にコールされる可能性がある状況では、マルチウェイでもしっかり戦えるハンドを持ちたい、ということになります。
2.2 ICMを考慮しないMTT
次はトーナメントにおけるレンジを見ていきます。
レイズサイズについては、これまでと同じ傾向が見られます。スクイーズ時と比べてサイズは小さく、ここでは9.8bbではなく9.2bbを使っています。また、このスポットではオールインはほとんど見られません。一方で、スクイーズ時には約半分の頻度でオールインが選ばれています。
レイズ頻度にも違いがあります。スクイーズ時の12.1%に対して、ここでは12.8%と、やや高くなっています。さらに、スーテッドのブロードウェイハンドは一切レイズされておらず、マルチウェイの例で多く含まれていた点とは異なります。
ここまでを踏まえると、スクイーズのスポットでは次のような指針が見えてきます。
-
レイズサイズを大きくする
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オールインを(より多く)取り入れる
-
レイズ頻度を下げる
-
コールされた場合でも、マルチウェイでしっかり戦えるブラフを選ぶ
2.3 バブル付近のMTT
次は、ICMの影響を受けるポットでも同じことが当てはまるのかMTT バブルの例を見ていきましょう。
COのみを相手にしている場合、オールインは一切ありません。一方で、BTNがコールドコールで参加している場合には、2.6%の頻度でオールインが見られます。このレンジもブロードウェイ寄りではなく、マルチウェイでスーテッドのブロードウェイハンドが多くレイズされていたケースとは異なります。
ただし、今回の大きな違いはヘッズアップでのレイズサイズです。スクイーズの例では8.5bbだったのに対し、ここでは10bbと大きくなっています。また、レイズ頻度も下がっており、スクイーズの例の10.7%に対して、ここでは7.1%になっています。
2.4 バブル付近のPKO MTT
最後に、PKO MTTの例でも、これと似た傾向が見られます。
ヘッズアップではレイズサイズが大きくなる一方で、レイズ頻度は下がります。つまり、ICMが影響する状況では、参加人数が多いほど、小さいサイズでも高い頻度でレイズできるようになります。
これは非常に納得のいく結果です。スクイーズは本質的に相手へプレッシャーをかけるプレイであり、トーナメントで生き残ることへのレバレッジが加わることで、その効果はさらに高まります。
バブル付近では、後ろにもう1人アクションを残した状態でオープンレイザーがスクイーズにコールするのは、現実的な選択肢とは言えません。同様に、レンジがキャップされているプリフロップコーラーにとっても、スクイーズにコールするのは好ましい判断ではありません。
結果として、より少ないチップ量でも強いプレッシャーをかけることができ、しかもそれを高い頻度で行えるようになります。
まとめ
スクイーズは、2人の相手に同時にプレッシャーをかけられる、極めて有効な戦略です。
- 最初にオープンしたプレイヤーは、間に入ってコールしているプレイヤーの存在を常に警戒する必要があります。
- 間に入ってコールしているプレイヤーは、キャップされたレンジでプレイせざるを得ません。
そのため、スクイーズレンジには強いハンドを含めるのはもちろん、ブラフについても、コールされた場合にマルチウェイでしっかり戦えるハンドに比重を置く必要があります。ただし、頻度やレイズサイズは、ICMのプレッシャーがあるかどうかによって大きく変わります。
ICMの影響がほとんどない状況では、レンジをタイトにし、レイズサイズは大きめに設定するのが基本です。一方で、ICMの影響が強い状況では、レイズサイズを小さくすることで、スクイーズをより高い頻度で行えます。これは、ベットに追加のレバレッジ(リスクプレミアム)が生まれるためです。
ただし、スクイーズをし過ぎると、長期的に大きなロスを招きます。特にコールドコーラーに対しては、強いハンドでトラップされ、エクスプロイトされることがあるでしょう。



























