MTTを選ぶ際、多くのプレイヤーはレクリエーションプレイヤーの数やギャランティ賞金を気にしますが、参加人数はあまり考慮されません。参加人数はトーナメントを選ぶ上で最も重要な指標であり、終盤のICM戦略で非常に重要になってきます。
先に進む前に、MTTにおける大規模とは何かを定義しておきましょう。例えば、500人参加のトーナメントはWSOPのブレスレットの出るトーナメントやGGPokerの$11のMTTではかなり少なくなります。この記事では、小規模は150人以下、大規模は500人以上、中規模はその中間とします。
普段選んでる参加人数の平均が分かれば、ポーカーキャリアについて伝えられることがあるかもしれません。小規模、大規模なMTTを選ぶ理由をそれぞれ見ていきましょう。
小規模なMTTを選ぶ理由
小規模な場合、ICMの影響が強い局面を多く練習できます。もし100人のMTTを専門にするなら、バブルやファイナルテーブルのバブル、ファイナルテーブル、ヘッズアップを多く経験するでしょう。こういったスポットの経験を早く積むと、大事な局面で何をすべきかがわかるようになります。しかし、1,000人以上のMTTを普段プレイしているのであれば、これらの重要なスポットに到達するのに時間がかかるので、いざそういった局面になった時にわからなくなるかもしれません。
もちろん、GTO WizardのICMデータベースを使えばいくらでも終盤のスポットを練習することはできます。しかし、このようなエクイティの高いシチュエーションでは、経験に勝るものはありません。小規模なMTTは分散も抑えることができ、それはトーナメントの分散計測サイトで簡単に分かります。例えば、$50のMTTでROIが10%のプレイヤーが、残り15人からインマネの100人のMTTに参加した場合と、150人からインマネの1,000人のMTTに参加した場合を比較してみましょう。
以下は100人参加のMTTの例で、20パターンのサンプルを示しています。
次が1000人参加の例です。
大規模MTTのシミュレーションでは、上振れた時は大きく勝てますが、下ぶれも大きくなり、頻繁に起こります。小規模なMTTの方が勝つ頻度は高くなります。大規模のMTTでは、1,000回トーナメントに参加した後に負ける確率は40%で、必要なバンクロールは$23,069です。小規模な場合はわずか18%で、必要なバンクロールはわずか$8,742です。
どちらの例でも、「一番良かった場合」を拡大してグラフの形を見てみると、ばらつきがあることがわかります。
100人の場合は、グラフは小さな山と谷を繰り返しながら、ゆっくりと着実に上昇しています。1,000人の方は鋭く急な上振れを繰り返しています。重要なのは、基本的に大きな勝ちは少なく、負けが続いていると言うことです。しかもこれは20パターンのうち最も良いパターンです。
この比較は完璧ではありません。ここから説明しますが、より大規模なMTTの方がROIは高くなります。もし興味があれば次の動画、Tombos21のバンクロール管理をご覧ください。
分散の低さとICMの練習ができることが、小規模なMTTに特化する最大のメリットです。
小規模のMTTでは、ポーカーの分散に対処しやすくなります。ファイナルテーブル直前のバブルをよく経験していれば対応しやすいですが、何ヶ月もファイナルテーブルバブルに遭遇していないのに、急に正しく対応するのは無理な話です。
大規模なトーナメントを専門にする場合、すべて正しくプレイしても、負ける年があります。そのため、大規模なトーナメントはより多くのステーキングが必要になり、インマネも沢山しなくてはなりません。多くの優秀なプレーヤーが、無駄に破産したり、自分のプレイに自信を失うことがあるのは、分散の重要性に気づかず、大規模なMTTに参加しているためです。この分散を減らしたいので、ほとんどの大規模なMTTはファイナルテーブルはディールで終わります。
しかしこれは、小規模なトーナメントに参加するプレイヤーにとっては問題になりません。600人以上が参加するバイイン$5k-$20kのMTTより、小規模なスーパーハイローラーMTTは分散が少ないので、たとえ世界最高のプレーヤーが相手であっても、頻繁に参加するプレイヤーにとっては非常に魅力的です。
大規模MTTをプレイする理由
大規模なMTTをプレイする主な理由は、賞金総額が大きいからです。たった一度の結果で一年が決まったり、資金が倍になったり、一晩でプロになれるかもしれません。200 人が参加する $11 MTT で優勝するのも良いですが、PokerStars の $11 Sunday Storm Anniversary で優勝すれば、1 年分の生活費をペイできるかもしれませんし、一度にいくつものステークスを上げることができるかもしれません。
上手いプレイヤーは、参加人数が多いほど、大きなエッジを出すことができます。GTO WizardライターであるAndrew Brokosは、「1,000人参加のMTTは弱いはずだ、1000人が全員上手い訳が無い」と述べています。
参加人数が大きければ大きいほど、勝率も上がるはず。
WSOPメインイベントのような参加人数の多いトーナメントは、200%以上のROIを叩き出すプレイヤーもいます。比較として、シングルテーブルトーナメントでは世界のトッププレイヤーでもエッジは10%以下です。(WSOPメインイベントはストラクチャーが深く遅く、SNGは速いので、正確な比較ではない)。
SharkScope Leaderboardで勝っているプレイヤーの中から、27~90人のSNGと6-18人のSNGを同じくらいプレイしている人をランダムに探してきました。以下は6~18人のSNGの統計です。
次は27人~90人のSNGです。
少ない方のROIは6.9%、多い方は9.4%となっています。小規模のトーナメントではどちらもITMが少し高くなっています。
平均参加者数802人の通常のMTTのサンプルはそれほど多くありませんが、見ての通りROIははるかに高く、20.6%です。
この比較はいくつかの理由から不完全ですが、このプレイヤーはそれぞれの参加人数別のサンプルが豊富な典型的な強いプレイヤーです。ROIは参加人数が大きくなるほど大きくなりますが、Profit Historyの下の緑のグラフに注目してください。人数が少ない方が安定しています。
最後に、ROIが参加人数に従って高くなるのは、経験が物を言うのが理由です。1,000人規模のMTTでは、ファイナルテーブルの厳しいバブルの戦い方を知っていること、そしてマネープレッシャーに負けていないことが重要です。WSOPメインイベントのバブルで、アマチュアプレーヤーがいかに下手かを見れば明らかでしょう。
バブルファクターとリスクプレミアム
ここまで参加人数が多い場合はROIが高く、参加人数が少ない場合は分散が小さく、精神的なプレッシャーも少ないと説明してきました。ICMの観点では戦略にどういった大きな違いがあるのでしょうか。
基本的には、参加人数が少ないほどタイトにプレーするべきです。ペイアウトを気にしながら徐々に賞金額を上げていくことは、参加人数が少ないほど重要で、特にバブルでは顕著です。参加人数が多い時は優勝を目指したり、ファイナルテーブルにいく優先度が上がります。そのため参加人数の多いMTTでは、ルースにプレイします。
簡単なトイゲームで実験してみましょう。以下の例では、全員が平均40BBを持ち、参加人数の25%が残っている6maxのトーナメントです。異なる参加人数を代入してバブルファクターを見ていきます。他の全ての条件を同じにしているのは、バブルファクターの違いが参加人数の変化によるものかをはっきりさせるためです。
まずはPokerStarsの45人SNG。残りプレイヤーは11人で、これは参加人数の25%にあたります。
平均バブルファクターは1.56、平均リスクプレミアムは10.9%。つまり、各プレイヤーが他のプレイヤーに対してオールインするためには、およそ61%のエクイティが必要ということになる。
平均スタックは同じく40BBですが、次はPokerStarsの90人SNGです。残りプレイヤーは22人で、参加人数の25%となっています。以下はそのバブルファクターです。
参加人数が2倍になり、バブルファクターが1.38に減少した以外はすべて同じになっています。オールインをコールするためには58%のエクイティが必要になります。
さらに同じ条件で見てみましょう。今回はPokerStarsの180人SNGで、45人のプレイヤーが残っています。
平均バブルファクターは1.22まで下がり、オールインをコールするのに必要なエクイティは55%になりました。
面白半分に、1,666人参加人数で416人が残っている場合(参加人数の25%)も計算してみました。
バブルファクターは前回と同じで、リスクプレミアムはわずかに大きくなっています。
つまり、参加人数が多いほど、ルーズにプレーするべきです。
トーナメントに参加する人数が多ければ多いほど、ファイナルテーブルでの高額賞金は遠くなります。参加人数が増えると全体の賞金総額も多くなるので、これは直感的にも理解できるでしょう。
参加人数が少ないと、プライズを着実に取る方が重要になります。
最少プライズは賞金プール全体に占める割合が大きいので、非常に価値があります。例えば45人の場合は最少プライズは賞金総額の3.5%、90人では2.26%、180人では0.65%、1,666人でわずか0.2%です。
さらに、小規模のMTTでショートスタックでインマネした場合、ファイナルテーブルが近くなります。大規模なMTTと同じように、ダブルアップを何度もする必要はありません。
結論
実際、MTTにおける参加人数の違いは非常に大きく、トーナメントを選ぶ上で最も重要な要素かもしれません。
小規模なMTTは分散が少なく、トーナメントの全てのステージの経験を積みやすく、精神的にもかなり楽です。小規模なトーナメントに特化すれば、破産することも少なくなり、一般的にプレイもスムーズになります。
大規模な参加人数は、期待値という点でも、賞金プールの金額という点でも、収益性が高くなります。分散が異常に激しくなり、多額のバンクロールが必要となります。参加人数が多いほど、ファイナルテーブルで上位を狙ってプレイすることが重要になります。小規模な場合は、最少プライズが賞金プールの大部分を占めるため、バブルで飛ばされることを避け、順調にプライズを上げていくことが重要になります。ただ、これは程度の話で、参加人数に関係なく、プレイする全てのトーナメントで勝つことを目指し、バブルで飛ばされるのは避けるべきです。
戦略的には、小規模のMTTではタイトにプレイしてICMプレッシャーをかけ、大規模のMTTではかなりルースにプレイするようにしましょう。理想は、両方の参加人数でプレイできると良いでしょう。小規模のMTTで分散を減らし、安定した利益を維持しながら、大規模なMTTで定期的に勝てると良いでしょう。とはいえ、分散の観点からも戦略的観点からも、この違いを知ることは重要です。