なぜオールインをしないのか?
あなたはトーナメントで既にインマネしましたが、ファイナルテーブルはまだ遠い状況です。平均スタックは約30bbで、あなたも後ろのプレイヤーもほぼ同じスタックサイズです。あなたはCOから9♠9♣をミニレイズオープンし、BBがコールしました。
フロップは7♠4♥2♦。BBはチェックし、あなたはポットの60%のベット(ソルバーは、ここでは少し大きめのCベットを推奨していますが、これは実際に私がプレイしたハンドに基づいているため、私と一緒にいくつかのミスを犯しながら学んでいきましょう)。BBはコールします。
ターンは5♦で、BBはポットの25%程度である、3bb強のドンクベット。現在のポットは15.6bbで、あなたのスタックは24.5bbです。あなたの99は、7♠4♥2♦ 5♦のボードで依然としてオーバーペアです。さて、ここでのあなたのアクションは?
私のミスから学べること
プレイ中、私はオールインをするか、小さいレイズにするかで迷った末、オールインを選択しました。これはフロップで大きなサイズ(実際にはもう少し大きなサイズを選ぶべきでした)のCベットを打つことに繋がった原則に従った結果です。ダイナミックなボードでオーバーペアのような、強いが脆弱なハンドは、次のカードが落ちて価値が下がる前に、早いうちにポットにお金をつぎ込むべきだという考え方です。コールをした場合、リバーでのスタックサイズはポットサイズ強となり、難しい状況になってしまうことを心配しました。
おそらく、あなたはより賢明な判断を下したことでしょう。ですが、この記事のタイトルから何らかのヒントを得ているはずなので、もし正しい選択ができたとしても自信過剰にならないように気をつけて下さい。
50%レイズか114%のオールインの選択肢を与えた時、ソルバーはレイズするハンドのほとんどでオールインではなく、ハーフポットのレイズを選びます。
念の為確認すると、ソルバーはスタックの半分をレイズした後、もしBBがオールインしてきた場合、4:1のポットオッズを得ているにも関わらず、レイズレンジの1/4をフォールドするのです。これは、一体どういうことでしょうか?
プリフロップの原則≠ターンの原則
プリフロップで覚えておくべき原則として、プリフロップのオールインレンジに対して33%未満のエクイティしか持たないハンドはほとんど存在しないということです。つまり、自分のスタックの1/3をポットに入れた場合は基本的にフォールドすることはないため、初めからオールインを選択した方が理にかなっているのです。
しかし、これはあくまでもプリフロップの原則です。この考え方は、2:1のオッズが得られた場合、どのようなハンドでもコールする価値があるという前提に基づいています。しかし、このプリフロップの原則は、後のストリートには当てはまりません。残りのコミュニティカードが1~2枚の状況では、オールインレンジに対するエクイティが33%を大幅に下回る可能性があります。
以下の画像は、7♠4♥2♦ 5♦でのドンクベットに対するレイズ-フォールドレンジです。それらには、QJやT9といった、リバーでペアを作る確率が約12%しかなく、たとえ引いても負ける可能性のある完全なエアーハンドが含まれています。
なぜコールしないのか?
ソルバーのレイズ-フォールドレンジには、AQや33などの強力なドローも含まれています。これらのハンドは現時点で勝っている可能性もあり、仮に負けていたとしてもアウツを持っています。これらは、私にとって非常に驚くべき、直感に反するブラフです。たとえこれらのハンドがレイズした後にオールインをコールするほど強くはなかったとしても、このエクイティを失うリスクを冒すのはもったいないと感じてしまいます。もしこれらでオールインしないのであれば、コールをするほうが良いのではないでしょうか?
もし選択肢がオールインかコールのみの場合、コールするほうが良い選択肢です。これは、ハーフポットレイズの選択肢を除外したCOの戦略です。
一見すると、これは小さなレイズが選択肢にある戦略と変わらないように見えます。レイズ/コール/フォールドのそれぞれの頻度は、小さなレイズが選択肢として含まれる場合の 33%/44%/23%とほぼ一致しています。
ですが、EVは全く異なる結果を示しています。ハーフポットレイズの選択肢が追加されると、COのターンのEVが5.6から5.7に向上し、BBのドンクベット戦略が劇的に変化します。COがターンで小さなレイズを行えない場合、BBはレンジの半分でドンクベットを行います。それらには、50%~70%程度のエクイティを持つ、中程度の強さのハンドも含まれます。
COに小さなレイズの選択肢があることで、BBのドンクベット頻度を12%にまで減少させ、高いベット頻度を持っているのは70~80%のエクイティを持つハンドに限られます。
COによるレイズを心配する必要がなかった時にBBがドンクベットしていたエクイティが50~70%のハンドは、K2やQ4などのローペアでした。これらは、相手のオーバーカードのエクイティを奪いたいハンドですが、たとえそれが小さくても、レイズをコールするほど強くはありません。
COのレイズの選択肢がオールインのみの場合、リスクが大きいため、COのレイズレンジはより強いものである必要があります。つまり、T9oのような完全なエアーハンドブラフを含めることはできないのです。
その結果、BBはこれらの弱いペアでベットし、オールインされたら簡単にフォールドすることができるのです。これらのハンドはコールされた場合にはまずまずのエクイティがあり、レイズされた場合にはエクイティが低いため、ベット/フォールドの候補として理想的です。
これらのハンドは、ハーフポットのレイズに対しても常にフォールドします。COのハーフポットレイズレンジはオールインレンジよりもポラライズされているため、スモールペアで、相手の小さいサイズでのポラライズされたレンジに対して戦うことは、BBにとってはより不利になる要因となります。結果として、BBの勝っているハンドがブラフによって降ろされてしまう可能性が高まり、コールされた場合のパフォーマンスも低下してしまいます。
小さいレイズの価値
これらから、COの小さなレイズ戦略の価値は、非常に弱いハンドでコストの低いブラフを可能にする点から部分的に生まれていると結論付けることができます。均衡状態では、このレイズによって価値を失う弱いペアで、BBがドンクベットをすることが制限されます。したがって、この小さなレイズ戦略は、ソルバーが推奨するBBのドンクベット頻度よりも高い頻度で、それらのハンドをベットするプレイヤーに対して特に有効です。
オールインはリスクが高く、“逃げ道” を提供しません。
対照的に、オールインのリスクは高く、“逃げ道”を提供しません。小さなレイズの選択肢がない場合、COは強い完成したハンドと強いドローのみを含む、リニアなレイズレンジを使わざるを得ません。結果的に、COは最も弱いハンドをフォールドすることとなり、自分のエクイティと、BBの弱いペアをブラフで降ろす機会の両方を失ってしまうのです。
小さいレイズの選択肢は、よりポラライズしたレイズレンジを実現し、COの最も弱いハンドに安いブラフを行う選択肢を与えます。これらのブラフハンドは非常に弱いため、たとえそのオールインが4:1のオッズだったとしても、COはそれらをフォールドすることに抵抗はありません。スタックの大部分を投資した後にフォールドするのは気が乗らないかもしれませんが、ほぼドローイングデッドの状態ですべてのチップをつぎ込むよりは、はるかにマシでしょう。
プリフロップとの類似点
“スタックの3分の1を注ぎ込んだ後はフォールドしない”というプリフロップの原則はフロップ以降では通用しませんが、このターンレイズの仕組みを理解するために、より馴染みのあるプリフロップの状況を参考にすることができます。
プリフロップでは、スタックサイズが小さくなるにつれて、リレイズサイズも小さくなります。例えばスタックサイズが20bbだった場合、3ベットの典型的なサイズは5bbです。これは他の状況で使うレイズサイズよりも小さいものですが、その理由は以下のとおりです。
- もしさらに大きいレイズサイズを使用した場合、オールインに対してコールしなければならない状況に自ら追い込んでしまいます。小さいレイズサイズを使用することで、相手がオールインしてきた場合にフォールドする選択肢が生まれるため、よりライトな3ベットを可能にします。
- また、小さいレイズはあなたがオールインに対してフォールドする可能性を示唆する効果もあり、あなたのオールインに対してコールできない弱いハンドで相手がオールインしてくるかもしれません。これは、あなたの3ベットレンジの上位のハンドに有利に働きます。
小さなプリフロップレイズと同様に、ターンの小さなレイズはフォールドエクイティの幻想を生み出すため、99のような強いハンドのEVを高める効果もあります。
特に99の場合は、この違いはそこまで大きなものではありません。ハーフポットレイズは、オールインよりも1%ほど良くなるだけです。これが、今回のトーナメントで私が犯した最大のミスだったと言えたら良いのですが!
フォールドエクイティをあまり重視しないハンドでは、その差はさらに顕著になります。たとえば A♦7♦での小さなレイズは、オールインと比べて約4%価値が高くなります。
自分よりも弱いハンドからのオールインを誘発することに加え、A♦7♦ はドミネイトしているフラッシュドローやペア+ガットショットハンドにコールさせることからも恩恵を受けます。
まとめ
スポットごとにソリューションを丸暗記するだけでは、決してポーカーを極めることはできません。覚えることが多すぎるからです。
最適にプレイすることができなかったハンドを振り返る際のあなたの目標は、ソルバーがなぜ異なるプレイを推奨するのかを理解することであるべきです。バリューはどこから生まれているのか?将来的に他のスポットでも役立つ、どのような原則を学ぶことができるのか?などです。
ここでは、COのターンレイズをより深く理解するために、以下の2つのテクニックを使用しました。
- より馴染みのあるスポットとの類似点を探しましょう。私は、このターンのスポットで小さいレイズが好まれることをすぐに理解することができませんでした。ですが、プリフロップでスタックが浅い場合、実際にそのような状況でプレイし研究してきた経験から、オールインよりも小さいレイズが好まれることは知っていました。これは仮説を検証するためには良い方法ですが、実際にテストしてみる必要があります。
- 選択肢を排除して、どう変化するのかを見てみましょう。なぜソルバーが特定のアクションを取るのかを理解するための優れた方法は、ソルバーがそのアクションを取ることができなくなった場合に、対戦相手の戦略がどのように変化するのかを調べることです。そうすることで、どのようなエクスプロイトが存在するのか、そしてあなたがそれを行わなかった場合、相手がどのように利益を得るのかが明らかになります。そして、その労力が見合うものなのか、あるいは特定の相手が実際にあなたをエクスプロイトしてくるのかなどを判断します。