「フォールドエクイティ」という用語はポーカー界では曖昧に使われています。まずフォールドエクイティとはEVであり、エクイティを表したものではありません。古典的なフォールド・エクイティの定義は EV=(フォールドの頻度×ポットの大きさ)で表されます。
しかし、この定義は重要なことが抜けています。それはフォールドエクイティは自身のハンドに対して相対的なものだということです。
別の言い方をすれば、相手をフォールドさせて得られる利益は、相手のレンジと自分のハンドの関係性に依ります。例えば、自分がドミネイトしているハンドのみをフォールドさせても利益的にはならないはずです。
ここからは、具体例を用いてこの概念を深めていきます。この記事を通してフォールドエクイティの解像度が上がれば幸いです。
今回は3つの実験を取り上げます。
- フロップでのフォールドエクイティ
- ターンでのフォールドエクイティ
- リバーでのトイゲーム
詳細は以下の動画をご覧ください。
BTNオープン、BBコール、フロップがA22のツートンボードだとします。
このような局面で33や44といった低いペアのベット頻度が高くなるのはなぜでしょうか?
BBがフォールドするレンジを用いてエクイティ計算をしてみましょう。以下が相手のフォールドするレンジに対するアンダーペアのエクイティです。
結論:強いアンダーペアは後に引かれる可能性のあるハンドを下ろせないため、ブラフする理由が少ない。
KKは相手のフォールドするレンジに対して98%のエクイティを持つため、フォールドエクイティはほとんどありません。ここでは、ドミネイトしているハンドしか下ろすことはできません。KKは相手にフォールドさせる意味がなく、より弱いハンドにコールしてもらうことでしか利益的になりません。
一方、33は相手のフォールドするレンジに対して76%のエクイティしかありません。これは後のストリートで引かれる可能性のあるオーバーカードをいくつも降ろすことができるためです。そのため、33のフォールドエクイティの価値は高くなります。相手をフォールドさせることで利益的になるハンドと言えるでしょう。
結論: フォールドエクイティが高いとベットの価値が高まります。弱いポケットペアほどベットする傾向があります。
次にターンを見てみましょう。BTN対BBでボードはK♦8♥2♥9♦です。
BTN オープン、 BB コール
フロップ:BTN 33%のCベット、 BBコール
ターン:BBチェック、BTN 90%のベット
今回はBBのチェックレイズブラフの強さを変えた際に、こちらの戦略がどのように変化するのか調べます。3つのシチュエーションを見てみましょう。
- GTO
- BBのチェックレイズレンジを強いハンドと強いブラフにノードロック
- BBのチェックレイズレンジを強いハンドとエアーにノードロック
基準(GTO)
以下がターンにおけるGTO Wizardの標準的な戦略です。
強くポラライズしている場合
では、BBのチェックレイズのブラフレンジをノードロックしてみましょう。バリューレンジ(ツーペア+ハンド)はそのままに、ドローのブラフをすべて除き、43oに置き換えます。43oのエクイティは約5%で、純粋なブラフに限りなく近いと言えます。
上の通り、BTNはすべてのチェックレイズをコールするようになります。43oを下ろす理由がないため、レイズする必要はありません。43oはこちらのレンジに対してエクイティがないので、レイズはBBのナッツにチップを渡すだけで、完全なエアーは降りてしまいます。
ドローが多い場合
次に、BBのブラフの強さを上げてみましょう。GTOレンジの代わりに、こちらのレンジのトップペアに対してエクイティの高い、強いドローを多く含むようにしました。
BTNはこのチェックレイズにレイズとフォールドの混合戦略で対応し、決してコールしない結果となりました。これはBBのブラフが強すぎるため、コールする価値が下がるためです。後のストリートでもエクイティがある相手の強いブラフを下ろす理由は十分にあります。
結論
このように、レイズの価値はフォールドエクイティと強く関連があります。
相手のブラフが弱すぎる(レイズされたらフォールドする)場合、フォールドエクイティは下がります。その際はレイズせずにコールもしくはフォールドするのが最も良い戦略になります。相手のバリューを上回っているハンドであればレイズはできますが、もし広くコールする場合はそういったハンドもスロープレイした方が良くなります。
逆に、相手のブラフがトップペアに対してエクイティが高すぎる場合(レイズのうち強いドローが多すぎる)、フォールドエクイティの価値は急激に高まります。このため、時には相手の強いハンドにオールインしてしまう可能性もありますが、レイズもしくはフォールドの混合戦略が推奨されます。
OOPは以下のコンボでチェックしているとします。
- 77の1コンボ (ナッツ)
- 9d8dの1コンボ(ナッツ)
- 43oが12コンボ(ブラフ)
結論:43oを降ろす価値はないため、IPはレンジ全体でチェックバックをします。43oは自分のレンジに対して0%のエクイティしかありません。そのため、ベットしてしまうと強いハンドにはコールされ、弱いハンドには降りられてしまいます。これはIPのレンジの全てのハンドに当てはまります。
では、OOPの43を32に変えてみましょう。これは自分のレンジに対して45%のエクイティがあるハンドです。
結論:IPは半分以上ベットするようになります。
結論:フォールドエクイティが高まると、ブラフしやすくなる。
まとめ
フォールドエクイティをすべてのアクションで考慮するようにしましょう。もし相手が自身のレンジに対してエクイティのないハンドをフォールドした場合、わざわざチェックではなくベットを選択した意味がなくなります。
今回は、フォールドエクイティとアンダーペアのベットとの関係性を調べました。また、相手のブラフの強さを上げると、コールするよりもフォールドやレイズする方が有利になることが分かりました。相手のブラフの価値を下げると、レイズよりもフォールドやコールを多用することも判明しました。
リバーのトイゲームでは、完全にポラライズしたレンジに対してはベットしないことが判明しました、相手のレンジのうち弱いハンドのエクイティを高くしてみると、ブラフの必要性があがりました。
まとめると、ベットをするか決める際には相手のフォールドするレンジを考慮する必要があるということです。
翻訳:森 大維河