「チョップボード」とは、両プレイヤーのハンドに関係なく5枚のコミュニティカードだけで役が構成されていることです。「ボードをプレイする」と呼ばれることもあります。チョップボードでは直感とは違う戦略になることが多くあります。この記事では、チョップボードでの一見おかしな理論について掘り下げていきます。
記事をご覧になる前にQing Yangの動画「ボードをプレイする」をご覧ください。
ケース1)全てのハンドでチョップになる
チョップボードの最もわかりやすい例は、AKQJTレインボー(フラッシュが完成しないボードのこと)やAAAAKのようなボードです。どちらのプレイヤーも作ることのできる最強の役がすでにボードにあります。そのため、フォールドをしなければどのような戦略をとっても間違いではありません。しかし、キャッシュゲームでレーキが絡んでいる場合はどうなるでしょうか?
NL50のキャッシュゲームの場合、SBの最適戦略は何でしょうか?NL500のキャッシュゲームの場合はどうでしょうか?
- NL50のレーキ: 5%レーキ、4bb CAP
- NL500のレーキ: 5%のレーキ、0.6bb CAP
NL50の場合、ベットをして、コールされると両方のプレイヤーがより多くのレーキを支払うことになります。従って、ベストな戦略はチェックをし、レーキを増やさずにショーダウンを試みることです。
しかし、NL500の場合では、すでにレーキが上限に達しています(0.6bbキャップ÷5%=最大レーキポット12bb)。つまりベットをしても追加でレーキを支払うことはありません。さらにベットをすることでBBにミス(フォールド)をさせることができるので、ベットはチェックよりも有効な戦略となります。そのためSBは全レンジでオールインをします!
囚人のジレンマ
レーキを多く払ったり、ベット額が大きくなるとどうなるでしょうか?レーキを活用して相手にフォールドさせることはできるのでしょうか?意外かもしれませんが、それは可能です!
Daily Dose #305では、このトイゲームの特有の変化を紹介しています。上記のNL50のシナリオで、リンプポットでリバーまでチェックで回ったらどうなるでしょうか?最適な戦略は、2bbのポットに99bbのオールインをすることです。これは4950%のポットサイズのオールインです。
このSBのオールインに対してBBは全てのハンドをフォールドしなければなりません。BBがコールするとポットの半分(1bb)を獲得できますが、それと同時にレーキで2bbを支払うことになります。なので、最もEVの高いプレイは、相手がポットを獲得できないようにすることです!
このような状況では、最初にオールインをしたプレイヤーがポットを獲得します。あえてズルをするなら、 実際のゲームでBBの最適戦略はSBがアクションする前に順番を無視してオールインをすることです!しかし、あなたがオンラインでプレイしていて、それができないと仮定しましょう。
実際にオールインをされた時に、フォールドが最適戦略でしょうか?BBは「嫌がらせのコール」をすることができ、両プレイヤーに2bbのレーキの支払いを強いることができます。ここで囚人のジレンマが登場します。BBがSBからの嫌がらせ(オールイン)を阻止するために時々コールをするのは正しいのでしょうか?
次の「Payoff Table」では、すべての戦略の期待値を示しています。なお、両プレイヤーがスタックを入れるような戦略は、レーキの関係で収支がマイナスとなります。理想では、両プレイヤーがポットをチェックダウンすることです。しかし、一方が他方をフォールドさせて優位に立つこともできます。この囚人のジレンマの定義ではIPプレイヤーが相手の動きを知っていることを除きます。
1981年、ロバート・アクセルロッドは、「囚人のジレンマの繰り返し」ゲームにおける最適戦略を見つけるためのトーナメントを開催しました。その結果、「Tit For Tat」と呼ばれるシンプルな戦略が最強であることが判明します。この戦略は、まず協力し、相手が裏切ったら報復する。報復するのも早いが、許すのも早い。しかし、この戦略は繰り返し行われるゲームに対応したものです。ポーカーでは、このチョップになるスポットが滅多に発生しないので、人間の短い記憶では「嫌がらせのコール」をしてもその意味は薄れてしまいます。
ケース2)一部のハンドだけチョップ
ケース2では、より面白いシナリオが登場します。このシナリオでは、あるハンドはチョップになるが、他のハンドはそのチョップに勝つことができるというシナリオです。例えば、AKQJTのボードでフラッシュが作れる場合です。
まず、簡単なトイゲームから始めます。3つのクラスのハンドがあります: トラップハンド、バリューハンド、チョップになるハンドです。相手はチョップになるハンドをチェックし、ナッツのついたトラップハンドも数枚持っています。自分はバリューハンドを持ち、チョップハンドには勝つが、トラップハンドには負けています。
トラップ>バリュー>チョップ
このトイゲームのオリジナル版では、自分は相手のトラップハンドに多くチップを取られず、ブラフキャッチのハンドから最大の利益を引き出すために、最適なベットサイズを見つける必要があります。しかし、このゲームでは、ブラフもブラフキャッチャーも存在しません。チョップになり、互いにポットを分け合うことが大きくゲームを変えます。
ブラフ頻度
よくあるポラライズ対ブラフキャッチャーのトイゲームでは、バランスを保つために必要なブラフの量は、ポットオッズによって決まります。もしあなたがブラフを多くしているのであれば、相手は常にコールすることでプラスのEVを得ることができ、一方ブラフが少ないなら、彼らがブラフキャッチャーをすべてフォールドすることでエクスプロイトすることができます。
目標 – 相手のチョップがコールとフォールドの間でEVの差がないようにする。
チョップボードでの目標はコールとフォールドの間で相手のEVを同じにさせることです。しかし、この場合コールの利益はかなり小さくなります。相手が正しくコールした場合、ポットの半分しか獲得できないからです(一般的なブラフキャッチのシナリオと比べて)。つまり、コールでの利益は決まっていますが、コールのリスクはベットの大きさに比例して大きくなります。
ブラフの頻度が、従来のポラライズスポットと比較して急上昇していることに注目してください。従来のポラライズシナリオでは、バリューベットあたりのブラフはα方程式、s / (s+1) に等しく、ここでのsはベット/ポットです。チョップボードでは、ひとつのバリューに対して、ブラフの適切な数は、ベット額の2倍である2sとなります。ここでの主なポイントは、ポラライズスポットと比較して、チョップボードではブラフをする頻度がはるかに高くなるということです。
コール頻度
相手はどれくらいの頻度でベットにコールするべきでしょうか?もし大きくベットをしたら、相手はトラップハンド以外すべてのハンドをフォールドすることはわかります。しかし、小さいサイズのベットに対しては計算するのが難しいでしょう。これを知るためには、まず、MDFやαのような方程式が何を計算しようとしているのかを考える必要があります。ディフェンス側のプレイヤーの目標は、相手のチョップになるハンドがブラフとチェックの間でEVの差がないようにすることです。
目標 – 相手のチョップになるハンドをブラフとチェックの間でEVの差がないようにする。
これをするためには、各アクションの期待値を互いに等しく設定して、コール頻度を計算する必要があります。
EV(チェック・チョップ)=EV(ブラフ・チョップ)
以下にチョップボードでのディフェンス頻度の計算方法について説明します。
どれだけ大きくベットをしてもトラップハンドをフォールドすることはないので、実際のMDFの式は次のようになります。
コール% = Max (t, 1 – 2st)
よくあるポラライズvsブラフキャッチャーのトイゲームで見られる湾曲したMDF線とは異なり、チョップボードではMDFは直線で、レンジのトラップハンドの数に対して下方に傾斜しています。大きくベットすれば、相手はトラップハンド以外のディフェンスをする必要がないため、ディフェンス頻度が平坦になり、一定になります。
ベットサイズ別EV曲線
これらの期待値グラフでは、ベットサイズに応じて、ポットに対する自分の期待値の合計を%で示したものです。簡単にするため、相手はコールかフォールドしかできないと仮定しています。よくあるポラライズ対ブラフキャッチャーのトイゲームでは、最もEVの高いベットサイズは、相手がどれだけのトラップハンドを持っているかによって変化します。これについては、トイゲームの解き方という記事で既に取り上げています。
トラップハンドがないシナリオでは、自分の最適なリバーの戦略はオールイン(またはリバーでオールインするために、早いストリートでジオメトリックサイズでベットする)です。相手にトラップハンドがある場合、自分はディフェンスのレンジを強くしすぎないように小さくベットすべきです。以下のチャートは、自分が50%のバリューハンドと50%のブラフでスタートすると仮定しています(その後、ベットサイズに応じてブラフまたは諦めるハンドを最適化します)。
チョップボードでのトイゲームのシナリオは、通常とは異なります。ベットの期待値は、自分がブラフを使い果たす「変曲点」に到達します。その時点から、大きくベットすることはバリューベットのEVを下げてしまいます。
自分はバリューベットごとにX%のブラフを持つべきで、Xはベットサイズの2倍に相当します。例えば、150%のポットサイズのベットを置く場合、自分は1つのバリューベットに対して3つのチョップをブラフし、相手が「チョップになるハンド」でコールすることでのEVが0になるようにします。
次のグラフは、ベットサイズによる自分のEVを表しています。ここでは、自分が25%のバリューハンドと75%のチョップハンドからスタートすると仮定します。s = 150%でブラフを使い果たしたので、これが理論上の最大ベットサイズとなります。しかし、相手が私たちのバリューベットの半分以上のトラップになるハンドを持っている場合、最適なベットサイズはより小さくなります。
まとめ
これまでに紹介したトイゲームは、比較的シンプルなものです。トラップハンドを持っていると持っていない場合に比べて優位になり、どのハンドも互いにブロックし合うことはありません。実際のゲームでは、これよりはるかに多くの変数が関係しています。プレイヤーはレイズやリレイズをすることができ、時には、あなたが持つことができる唯一のナナッツハンドが、相手がそのハンドを持つことをブロックすることもあります。
しかし、このチョップボードのトイゲームから、いくつかの重要な視点を得ることができます:
- 自分のレンジの大部分がチョップされるボードでは、ブラフを多用する。
- ブラフが不十分であることが多く、このようなボードではレンジベットをする。
- 通常、このようなボードでは、より広くコールする必要がある。
- 全体的にどの程度広く守るべきかは、どれだけのトラップハンドを持っているかによって決まる。
- レーキの構造に注意する必要がある。もし相手にフォールドさせることができないのであれば、不必要にポットを大きくし、より多くのレーキを支払う価値はない。