小さいベットでエクイティをプッシュする
私が今まで聞いたポーカーに関する見識の中で最も印象深いものの1つは、長年ポッドキャストの司会を共に務めてきたネイト・メイヴィスの言葉です。
これは、ゲーム理論のソルバーが登場する前の、ずっと昔の話です。当時、非常に大きなベットや非常に小さいベットを使うプレイヤーはほとんどおらず、いつ、そしてなぜそのようなベットを使うのかを理解しているプレイヤーは更に少なかったです。私も例外ではなく、この言葉をきっかけに私はベットサイズについて研究し始めました。
現代では、実際にそれらを使う頻度が少なくても、オーバーベットを使用する理由はレンジをポラライズするためだと、多くのプレイヤーが答えることができます。ですが、小さいベットに関しては、いまだに十分な理解が浸透していません。
多くのプレイヤーは、一流プレイヤーが行う小さいサイズのCベットを観察し、真似をしてきました。ですが、私のコーチとしての経験上、それらを実際に使う人でさえ、なぜ小さいサイズが好まれるのか、また他にどのような状況で小さいサイズが適切なのかについて説明するのに苦労する人が多いです。
今回の記事では、フロップの小さいCベットに関する事例を研究することにより、一般的に小さいベットサイズが適切となるために満たすべき条件についての洞察を得ることを目指します。それにより、小さいベットサイズを活用することでプレイが向上する、他の一般的なスポットを特定することも可能になります。
両者ともフロップでトリップス以上を完成させる頻度がほぼ同じのレンジ最上位を除けば、COのレンジは一貫して強い傾向にあります。別の言い方をするのであれば、COには大きなエクイティアドバンテージがあるものの、ナッツアドバンテージはそれほど大きくありません。
COは、自分が圧倒的に有利なこのポットを大きくしたいものの、ポットをあまり大きくしすぎると、有利ではなくなってしまいます。そこで解決策となるのが、小さいベットなのです!
なぜそこまで小さいのか?
ここでプレイヤーがベットする場合、通常は相手がフォールドすることを期待して行います。トリップスやオーバーペアを持っていない場合、このフロップで自分のハンドが強いと考えることは難しいでしょう。そして実際に、COのほとんどのハンドは、BBがフォールドするほうが、コールやレイズをした場合に比べてEVが高くなります。
当然のことながら、あなたは相手がこの小さなベットに対してめったにフォールドしないと想定するべきです。では、なぜもっと大きなサイズを使わないのでしょうか?
フロップでの小さなレンジベットは、そのベットに対するBBの反応ではなく、プリフロップで起きた状況を利用しているのです。
もちろん、相手はより大きなベットに対してより頻繁にフォールドするでしょう。しかし、ここでの問題は、相手が大きなベットに対してフォールドしなかった場合、相手のレンジはより強くなり、結果としてポットを勝つ頻度が下がることです。大きなベットは得られる利益も大きくなりますが、当然その分リスクも上がります。そのため、最終的にはリスクリワードの比率がより悪くなってしまうのです。
この小さなレンジベットは、BBがどのような反応をしても利益が出ます。なぜなら、ベットに対するBBの反応ではなく、プリフロップで起きた状況を利用しているからです。COはプリフロップで複数人に対してレイズをするというリスクを犯したのに対し、BBはアクションを締めつつ良いオッズでコールをしました。
それにより、BBはCOよりもはるかに弱いハンドでフロップを見ることになり、COは全てのカードでベットをして利益を出すことができるのです。一部のプレイヤーは、これを”エクイティをプッシュする”と呼びます。COはエクイティのアドバンテージを持つことにより、そのベットに対してBBがどの様な反応をしたとしても、必ず良い結果になる状況を生み出します。
COのレンジ最上位以外のハンドは、BBのフォールドから恩恵を受けます。多くの場合で、BBには何枚かのアウツが残っているからです。そして、BBが決してフォールドしない場合も問題はありません。なぜなら、COのレンジはより強く、お互いのプレイヤーがレンジの全てでより多くのチップをつぎ込んだ場合、それは最終的にはCOの利益に繋がるからです。
COに全てのアドバンテージがある場合
TT2ttのフロップでは、COにはエクイティアドバンテージがありましたが、それほど多くのナッツアドバンテージは持っていませんでした。 Q♥J♥T♦のフロップは、COがエクイティアドバンテージとナッツアドバンテージの両方を持ち合わせている良い例です。
ソルバーのCO戦略は依然としてレンジベットですが、COのハンドの多くができるだけポットを大きくしたいため、より大きなベットサイズを主に使います。
このフロップでは、COはエクイティアドバンテージだけでなく、ナッツアドバンテージも活用しており、これがより大きなベットを選択する要因になっています。
リバーのプローブ
ではQJTttのフロップで、COが55%のCベットを打ち、BBがコールしたとしましょう。お互いのプレイヤーが2♠のターンでチェックをし、リバーには4♠が落ちました。ボードはQ♥J♥T♦ 2♠ 4♠です。ここで最初にアクションを行う際、BBの戦略には多くの小さいベットが含まれます。
これは、一方のプレイヤーがエクイティアドバンテージとナッツアドバンテージの両方を持ち合わせる、もう一つの例です。
しかしリバーでは、レンジの異なる部分の目的を達成するために、様々なベットサイズを使うインセンティブがさらに高まります。BBの最強ハンド(例えばQ4やQ7などです。ターンがチェックで回った場合、文字通りのナッツを持たなくても、ナッツアドバンテージが生まれます)は、主にオールインを選択します。
では、T9のようなハンドはどうでしょうか?こういったハンドは多くの場合で勝っていますが、大きなベットをした際に、より弱いハンドからコールされることは期待できません。ここでも解決策となるのは、小さいベットなのです!
このマンハッタングラフを見ると分かるように、BBの小さいベット(薄い赤色)は、主にエクイティが50%から80%のシンバリューハンドで行われています。
大きいベットは、主にCOのレンジの最上位にコールされてしまいBBにとって不利となるため、これらのハンドで行うのは望ましくありません。一方で小さいベットは、COに対して弱いハンドでコールするインセンティブを与えるため、BBがより強いハンドにぶつかるリスクを下げています。
小さいベットのもう一つのリスクは、ブラフレイズをされることです。そのために、BBは罠として非常に強いハンドでも、時折小さいベットを行います(グラフの右端に位置する、薄い赤色のハンド)。
COはTT2ttのフロップで小さいベットを行う際も、同様に小さくベットしています(ですが、COのベットサイズは1つだけのため、分かりづらいかもしれません)。COが多くの弱いハンドや中程度の強さのハンドでベットをするという事実が、BBが自らの弱いハンドや中程度のハンドでチェックレイズをする理由になります。そして、これらのチェックレイズを誘発するために、COはレンジ最上位のハンドでさえ小さいCベットを行うことが、最も効果的なのです。
COの小さいCベットが、前のストリートで自分たちのアクションがBBのアクションに比べて強かったという事実を活用するように、リバーのBBの小さいベットも同じ効果を狙っています。今回の場合、BBのアクションはCOよりも強くなっています。COは、最も弱いハンドも含めてレンジの全てのハンドをベットしていたのに対し、BBは最も弱いハンドはフォールドしているからです。さらに、COはターンでチェックバックをしたことにより、自らのレンジを弱めています。強いハンドで、ターンをチェックバックするインセンティブはないからです。BBがフロップをコールするという比較的強いアクションを取り、COがターンをチェックするという弱いアクションを取った場合、BBの中程度の強さのハンドはCOの中程度の強さのハンドよりも強いため、小さいベットで利益を生み出すことが可能です。
小さいベットは、前のアクションによって一方のプレイヤーの中程度の強さのハンドが、相手の中程度の強さのハンドに比べて大幅に強くなった状況で、最も頻繁に使われます
有利なボード
小さいベットは、前のアクションによって一方のプレイヤーの中程度の強さのハンドが、相手の中程度の強さのハンドに比べて大幅に強くなった状況で、最も頻繁に使われます。また稀なケースでは、特に有利なボードのカードが、一方のプレイヤーの中程度の強さのハンドレンジを相手の中程度の強さハンドレンジ以上の強さに引き上げる場合、小さいベットを使用することがあります。
この例では、30bb持ちのUTGがオープンし、BBがコールをします。T♥4♥4♦のフロップでUTGは20%のCベットを打ち、BBはコールします。すでに先ほど、このアクションによりBBのレンジの下限がUTGのレンジの下限よりも強くなることを述べました。これは、ほとんどのターンカードで当てはまります。
しかし、特定のカードは、非常に多くのUTGが持つ中程度の強さのハンドをさらに強いものにします。例えば、K♥がターンで落ちた場合のエクイティの分布図は以下のとおりです。
UTGがフロップでベットする多くの弱いハンドはペアになっていないKxです。一方、BBはほとんどのKxをフォールドします。BBがコールする唯一のコンボはK♥であり、これがターンで落ちたということはBBはそのコンボすら持っていません。UTGはトップペアでバリューベットをしたいのですが、トリップス、フラッシュ、そしてフルハウスにぶつかるリスクを恐れるため、大きなサイズでベットをすることはできません。そのため、UTGは33%か55%のベットを選択します(これらサイズはターンでは比較的小さいものになります。UTGのターンのベットサイズは、平均すると83%が最も多く使われています。)
まとめ
ベットは、基本的に自分が対戦相手に対して持つアドバンテージから利益を得ることが目的です。アドバンテージを持たないプレイヤーには、ベットをするインセンティブはありません。これが、例えばプリフロップでコールしたBBが、フロップをチェックすることが非常に一般的な理由です。
アドバンテージの性質が、ベットサイズを決定します。
- もし相手よりもナッツの割合が多い場合、大きなベットサイズでレンジをポラライズするインセンティブが高まります。
- あなたのアドバンテージが中程度の強さのハンドカテゴリーにある場合、小さいベットサイズを選択します。
リバーの例で見たように、あなたのレンジが相手に対して全体的に強い場合、どちらのサイズを使うことも可能です!
自分のアドバンテージを活かしたバランスの取れたベット戦略の収益性は、相手の反応に依存することはありません。もし相手が頻繁にフォールドするのであれば、ブラフやエクイティの否定から利益を得ます。もし相手が頻繁にコールするのであれば、バリューベットや後のストリートでブラフをすることで利益を出せます。問題が生じる唯一の状況は、相手が常に自分よりも強いハンドを持っている場合ですが、そのような状況は、レンジアドバンテージがあるスポットを正しく見極めていれば起こりません。
今回は、小さいベットが一般的なスポットをいくつか見ることで、小さいベットを使うための条件を確認しました。しかし、その様なスポットはまだ他にも存在します。ぜひご自身で探してみて、わたしたちのソーシャルメディアやDiscordでシェアしてみて下さい!
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