
“ストラドル” は多くのゲームで取り入れられており、ブラインドではないプレイヤーが自発的にブラインドベットをポストする事を指します。これはブラインドと同じように機能し、もし他のプレイヤーがレイズしなかった場合、ストラドルを行ったプレイヤーは依然としてフロップが配られる前にレイズをすることが出来ます。ストラドルは通常ビックブラインドの2倍の額ですが、より大きい額が許可されることもあります。
UTGはストラドルの最も一般的なポジションであり、ストラドルを行ったプレイヤーは、プリフロップでブラインドを含む、他の全てのプレイヤーの後にアクションをする権利を得ます。ストラドルはBTNや他のポジションで行う事が許される場合もあり、様々なアクションの進行ルールが存在します。この記事ではUTGが2bbのストラドルを行った場合のみを扱いますが、ここで説明する原則は、他のタイプのストラドルに適応する為にも役立つことでしょう。
ストラドルはライブポーカーの定番です。一部のゲームではストラドルが強制的に行われ、「強制的」にストラドルが発生するゲームもあります(これは、プレイヤー同士の社会的な圧力や一般的な同意によって非公式に強制されるものです)。また単純にギャンブルがしたい気分になり、他のプレイヤーが行うかどうかを気にする事なく、自発的にストラドルを行うプレイヤーもいます。したがって、あなたがストラドルを行うか否かに関わらず、ストラドルがどのようにゲームの性質を変え、全てのポジションからのインセンティブに影響するのかを理解する必要があります。
ストラドルを行うべきか?
答え : いいえ
自分のカードを見る前にポットにお金を入れる行為は非常に不利です。
たとえ世界最高のプレイヤーでさえも、ブラインドポジションから利益を生む事は出来ません。BTNからのストラドルは、当然ながらアーリーポジションからのストラドルに比べるとそれほどひどくはありませんが、それでもほとんどの場合においてお金を失う事に繋がります。利益が出るシナリオの仮説を立てる事も出来るでしょうが、もしポーカーテーブルで勝つ事を目標にしている場合、ストラドルを行う事はほぼ常に悪いアイデアです。
もっと詳しく言うと、ストラドルを行う事には、社会的もしくは政治的な理由があるかもしれません。

もし全てのプレイヤーがストラドルに同意した場合、対戦相手に対して不利にならず、そして多くの場合でレーキを上げる事なく、事実上ステークスを上げる事になります。
もしあなたがテーブルで最も上手いプレイヤーである場合、全員がストラドルに同意する事はほとんどの場合で有利に働きます。ただし、以下で説明するように、ストラドルはエフェクティブスタックサイズを大幅に減少させ、その結果、相手に対するエッジとウィンレートが下がる可能性がある事に注意をする必要があります。ですが、ステークスが上がっている事によってそれらは補われ、またスタックが非常にディープな場合などは、エフェクティブスタックサイズを下げてもプレイ方法にそれほど大きな違いを生みません。
もし、プライベートゲームや招待制のゲームでプレイしていて、ゲームを盛り上げることが重要な場合、ギャンブル好きなプレイヤーのために、たまにストラドルをするのも一つの手かもしれません。
ストラドル自体の期待値はマイナスですが、良いゲームで自分の席を確保するための賢明な長期投資に成り得ます。
ここでの注意点は、これはニット (非常にタイトなプレイヤー) だと思われると、今後招待されなくなるゲームにのみ当てはまる点です。ルース、またはギャンブル好きだというイメージを作るためだけにストラドルを行う事は、基本的にはお勧めしません。
ストラドルとポットサイズ
プレイヤーは、一般的にプリフロップでのスタックサイズをビッグブラインドで測りますが、ストラドルが発生しているポットでは誤解を招く可能性があります。$20のストラドルが発生している$5/$10のゲームの場合、ビッグブラインドは事実上$20であり、$1,000のスタックは100bbではなく50bbとして考えるべきです。これは、ストラドルが発生する前には大きく感じたベットが、今では一般的なサイズになる事を意味します。その結果、オールインするに値しなかった多くのハンドが、ストラドルポットではオールインをするハンドに変わります。
しかし、それだけでは完璧とは言えません。なぜなら、ストラドルは実際にはプリフロップのポットサイズを2倍以上にしているからです。故ポール・マグリエルは、カードが配られる前のポットを関数とし、スタックサイズを測るMという単位を考案しました。通常の$5/$10のゲームではポットに$15入っており、$15のスタックを1Mと数えるため、$1,000のスタックは66.67Mです。
ストラドルが発生した場合ポットは$35から始まるため、$1,000のスタックは28.57Mになり、ストラドルが発生する前の半分以下になります。これにより、以下に影響が出ます。
- 大きなポットでプレイする頻度
通常のゲームに比べ、定期的に大きなポットを勝ったり負けたりします。 - バンクロールの大きさ (ストラドルが頻繁に発生するゲームをプレイしている場合)
ストラドルがないゲームをプレイする時に比べ、2倍程度のバンクロールが必要になります。

オープン戦略
プリフロップのオープンレイズは、ポーカーでの他のプレイと同様に、リスクとリワードの両方が伴った賭けです。これは多少ハンドによりますが、ポットに入っているお金がリワードであり、レイズする金額と後ろに残っているプレイヤーの人数によってリスクが決まります。
ストラドルは、この計算を様々な形で複雑にします。ハンド開始時のポットサイズは1.5bbから3.5bb(ビッグブラインドの倍以上にストラドル出来る場合はそれ以上) へと倍増されます。ですが、スティールに最も適したポジションにいる際に、アクションが残っているプレイヤーの人数が増えます。ボタンからのレイズは、追加のストラドルを獲得するというより大きなリワードを提供しますが、後ろにプレイヤーが3人残っているため、より大きなリスクも伴います。


頻度の比較
以下のチャートは、ブラインドとストラドル以外からのプリフロップのオープンレイズ頻度を表しています。明確さを保つために、全てのシートはBBからではなくBTNから相対的に見て指定されています。したがって、標準的な8ハンドゲームでは、UTGはBTN-5と表記されます。ストラドルが発生する8ハンドのゲームではBTN-5はSTR(以降ストラドルしたプレイヤーのポジションをSTRと表記する)であり、このチャートには含まれていません。ストラドルからプレイする方法については、後ほど説明します。
このチャートは、標準的なゲームと2倍のスタックを持つストラドルゲームの頻度を比較したものです。上記の注意点でも述べたように、この比較は完璧なものではありません。なぜなら、200bbのストラドルゲームのスタックは100bbの標準ゲームのスタックよりも若干ショートになるからです。

ここでのパターンは複雑であり、後ほど詳しく調べていきますが、まずは比較的明確な主要なポイントから見ていきましょう。
ストラドルが発生すると、標準ゲームのボタンから相対的に見た同じポジションに比べ、ほとんどのケースでオープンレイズの頻度が下がります。
唯一の例外は1番最初、またはスタックサイズによっては2番目にアクションをするポジションで、後ろにもう1人プレイヤーがいる事はあまり影響しませんが、ポットに追加の2ビッグブラインドが入っている事が違いを生んでいます。
BTN
ストラドルポットでBTNからオープンする場合、通常よりも1人多く、後ろに3人いる状態でオープンすることになります。ですが、これは状況がその分だけ悪いわけではありません。なぜなら、あなたがオープンすると、SBとBBは通常のゲームに比べて制約が多い状態で、BTNに対してプレイをしなければならないからです。ですが、これがストラドルポットのシミュレーションで、通常のシミュレーションよりも、 BTNから15 ~ 20%低い頻度でオープンする理由になっています。
BTN – 4
BTN -4 (ストラドルポットのUTG) からオープンする場合、相手にするプレイヤーの数は通常に比べて117%増えます。。自分に対してポジションを持っている4人の方が、ポジションを持っていない3人よりも大きな懸念事項です。そして、ポジションを持っているプレイヤーの人数は、ストラドルポットでは変わりません。これが、ストラドルが発生した場合、アーリーポジションから同程度、もしくは通常よりも高い頻度でオープンできる理由です。スタックがディープな場合、特に顕著になります。またストラドルが発生すると、ポストフロップで相手に対し、より頻繁にポジションを持ってヘッズアップをプレイできます。これは、スタックがディープであるほど、より良い結果を生みます。

それでは、ここで何が起きているのかをより深く理解するために、オープンレイズした後に起こり得る、全てのシナリオについて見ていきましょう。
- ポットをその場で獲得する – 最強クラスのハンド以外では、これは最良の結果です。ストラドルポットで、プリフロップでコールされずにポットを獲得するのは稀ですが、このような結果になった場合は価値が高いです。
- OOPの対戦相手にコールされる – これは、ポットをその場で獲得するシナリオの次に良い結果でしょう。フロップ以降にポットを争わなければなりませんが、少なくともポジションの優位性を活かしながらプレイが出来ます。ストラドルポットでは、ボタンの後ろにより多くのプレイヤーがおり、誰もコールしなかった場合、ストラドルプレイヤーは非常に良いオッズでコールできるため、この展開が起こりやすくなります。
- IPの対戦相手にコールされる – これは通常、特にディープな場合は、好ましくない展開です。ストラドルはオープンレイズと同様に、これらのコールのリスクとリワードの両方を増加させます。IPの対戦相手は良いオッズを得ていますが、後ろに控えているプレイヤーの人数が増えているため、より多くのリスクを背負います。
- OOPの対戦相手にレイズされる – レイズされる事は通常、自分が持つ最弱のハンドでフロップを見る事ができないので、コールされるよりも悪い結果です。OOPの対戦相手からコールされるシナリオと同様に、OOPの対戦相手からレイズされるシナリオは、ボタンの後ろに3人のプレイヤーがいる場合に発生しやすくなります。スタックがディープになるほどOOPからの3ベットは発生しにくくなり、またあなたにとってもそれほど高くはつきません。なぜなら、多くのスタックを残した状態でコールしたり、4ベットを返したりできるからです。
- IPの対戦相手にレイズされる – これは多くの場合で大惨事であり、スタックがディープになるにつれ状況は悪化し、またより発生しやすくなります。均衡戦略ではストラドルが発生すると、このようなレイズは起こりにくくなります。なぜなら、後ろにより多くのプレイヤーが控えているため、3ベットしたプレイヤーは、4ベットされるリスクが高まるからです。
- その他 – 上記以外に、複数の相手からコールされたり、コールド4ベットをされたりするシナリオも存在しますが、それらが起こる頻度は低く、またそれらは全て上記のアクションから発生するため、ここでは詳しくは触れません。あえて言えば、複数のプレイヤーからコールされるのは、1人のプレイヤーからコールされるよりも悪い状況であり、ストラドルポットではより頻繁に起こり得ます。また、コールド4ベットされるのは3ベットされる事よりも悪く、ストラドルポットではより頻繁に起こります。
ブラインドからのオープン
ブラインドの比較はさらに複雑になります。なぜなら、ストラドルポットのSBと同等のポジションが、標準ポットには存在しないからです。ストラドルポットのBBは、標準ポットのSBに最も似たポジションです。どちらもコールするのに必要な額の半分のチップがポットに入っており、後ろに控えているプレイヤーは 1 人のみです。ですが、標準ポットでSBがリンプするオッズに比べ、BBがストラドルをコールするオッズの方が良いため、それらの戦略は依然として異なります。

ストラドルポットのSBは、厄介なジレンマに直面します。SBはすでにポットにお金を入れていますが、残り2人の対戦相手に対してポジションがなく、またその2人はどちらもより多くのお金をポットに入れているため、レイズに対して抵抗する多くのインセンティブを持っています。ポジションの優位性を示す証として、100bbの標準ポットでは、BTNは44.2%のハンドで2人のOOPの対戦相手に対してオープンレイズしますが、ストラドルポットでは、SBは20%のハンドで2人のIPの対戦相手に対してレイズし、さらに10%のハンドでコールをします。またスタックがディープになるほど、ポットに参加する事がますます困難になります。
また、ポットに参加するハンドのほとんどが混合戦略となるため、実行するのは難しくなります。

SBがフォールドすると、BB のオープン戦略は、標準ゲームのSBよりもさらにルースになります。これは、ポットを争うために、標準ポットよりも良いオッズが与えられているからです。
オープンに対する反応
ストラドルポットのBBが標準ポットのSBに匹敵するように、STRは標準ポットのBBと同じ立ち位置ですが、ここでの重要な違いは、コールのオッズがより良くなっているという点です。
この違いが、COのオープンレイズに対する反応にどのような影響を与えているかを見てみましょう。

BTNの反応の比較
ストラドルポットではオープンレイズに対して、BTNのフォールド頻度は増え、3ベット頻度は下がります。先ほど述べたように、これは後ろに控えているプレイヤーの人数が2人ではなく、 3人である事が理由です。200bbのスタックを持っている場合、QQやAKoなどの強いハンドでコールを選択する事もあります。もし、そのコールに対しブラインドからスクイーズされた場合、COがスクイーズに対してフォールドした場合は4ベットをせず、COがスクイーズに対してコールした場合、これらのハンドで4ベットをします。

スタックがディープになると、BTNはCOのオープンに対して時々KKでもコールをしますが、先程と同様に、スクイーズに対してCOがフォールドした場合は4ベットをする事はありません!他のBTNのコールレンジが弱いため、これらのハンドでコールした際は、非常に良いインプライドオッズを持っている事が理由のようです。
SBの反応の比較
SBはすでにポットに入れている額が少なく、ポジションも悪いため、他のプレイヤーがオープンした際、参加するインセンティブがほとんどありません。SBは基本的に非常に強いハンドのみでプレイするため、ポットに参加する際は、通常レイズを行います。戦略的にはコールレンジも存在しますが、それらはSBの戦略にとって重要ではありません。たとえスタックサイズが200bbであっても、100%コールとなるハンドは存在しません。すべてのハンドは、フォールドする事を考えるほど弱いか、レイズする事を考えるほど強いです。

ストラドルポットのBBと、標準ポットのSBの比較
ストラドルポットのBBの場合は状況が異なります。なぜなら、標準ポットのSBよりも良いオッズを得ているからです。SBがフォールドすると0.5bbのデッドマネーが生まれ、スタックがディープになるにつれてコールレンジは広がっていきます。

ストラドルと、標準ポットのBBの比較
最も大きな変化が起こるのは、STRと標準ポットのBBです。STRはミニレイズに対して、ほぼ4:1のオッズを得ます。具体的には、コールで利益を上げるために必要なエクイティは21%であり、標準ポットのBBが必要な28.6%に比べて低くなります。このため、コール頻度が非常に高くなり、相対的にフォールドやレイズの頻度が下がります。

まとめ
ストラドルは、ストラドルしたプレイヤーだけでなく、全てのプレイヤーのゲームに変化をもたらします。それは、SPRを劇的に減少させ、ポットを争うことのリスクとリワードの両方を増加させます(ギャンブラーがストラドルを好むのは、より大きなリワードが理由です)。
対戦相手がカードを見る前にポットにお金を入れるのは非常に良い事ですが、あなた自身もそれに適応する必要があります。後ろにプレイヤーが1人増えているため、同じポジションからの通常のプレイよりも、オープンレイズとオープンに対する反応をタイトにする必要があります。
そして、最も重要な点として、スタックがショートになるため、標準ポットでは大きなベットやレイズのように感じるものが、ストラドルポットでは一般的になります。また、プリフロップやポストフロップにおいて、より多くのハンドでオールインをする必要があります。もしこれらに対応出来るバンクロールや根性が無い場合は、ストラドルが常に行われているゲームはプレイしない事をお勧めします。