プリフロップレイズサイズ:2つの重要な要素を検証する
私はプロとしてノーリミットホールデムを約20年間プレイしてきましたが、自分が未だに最も基本的なスポットを完全にマスターしていないことに驚かされます。ポットに参加するのか?参加する場合はレイズするのか?そしていくらにレイズするのか?など、何百万というプリフロップの判断を今までに下してきました。大まかな基準は持っていたものの、経験やソルバーでの検証を重ねながらそれらを絶えず調整していました。
それらは試行錯誤の結果(そして正直に言うと、集団思考)であり、プリフロップの判断を左右する理論を深く理解していませんでした。なぜハンドによって、大きいレイズサイズや小さいレイズサイズが好まれるのでしょうか?ポジションが関係しているのでしょうか?レーキは重要でしょうか?
この議題について確信を持っているとは言えませんが、ポーカーは確実性を求めるゲームではありません。ポーカーは、利用できる情報を元に最善の判断を下すゲームです。そのため、技術が進歩し、より良い情報(例えば、プリフロップのソリューションなど)が手に入るようになった場合、それらを判断に組み込み、より良いものにする必要があります。
今回の記事では、いくつかのソリューションを比較し、レーキとポジションがプリフロップのレイズサイズに与える影響を見ていきます。今回は主に200bb持ちの6-Maxキャッシュゲームのソリューションを見ていきますが、ここで紹介する多くの原則は、他のゲーム形式であるフルリングやトーナメント、そしてショートスタックなどにも広く応用できます。
均衡戦略の反応
ソルバーの戦略を理解する際に、私は常に特定のアクションに対する相手の均衡戦略の反応を見ることから始めます。これにより、そのアクションがどのような効果を生むのか理解するための貴重な洞察を得ることができるからです。
ポジションがある際
以下のチャートは、レーキが有るゲームと無いゲームの両方において、LJの様々なオープンサイズに対するIPの対戦相手の反応を示しています。
まず最初に明らかになるポイントは、レーキが非常に大きな影響を与えるということです。レーキが有るゲームでは、LJのオープンに対するHJ、CO、及びBTNのVPIPは25~35%ほど相対的に低くなっています。特にこのレーキストラクチャーではフロップが開かれなかった場合はレーキが発生しないため、コールをすることが魅力的ではなくなります。その結果、レーキが有るゲームではプレイヤーはより頻繁に3ベットを行い、レーキが無いゲームではコールを選択していたハンドのいくつかが、3ベットを選択するようになります。
レーキ有りのゲームではコールが少なくなり、特に2xのオープンレイズに対してその傾向が顕著になります。この小さなオープンレイズが本来もたらすはずのポットオッズがレーキによって悪化するため、代わりにレイズやフォールドがより魅力的になります。
レーキが有るゲームではコールが魅力的ではなくなり、フロップが開かれない場合はレーキが発生しないストラクチャーでは、VPIPが下がり3ベットの頻度が上がります。
ブラインド
レーキ有りのゲームでも、ブラインドからのコールは依然として戦略の重要な要素となります。特にミニレイズに対してやBBにいる時は、ポットオッズが良いためコールが選ばれやすくなります。。ですが、レーキ有りのゲームでのBBのミニレイズに対するコールはレーキ無しのゲームの60%程度になるため、例えコールするのに最も適したポジションでさえその差は劇的に変わります。
そして当然ながら、BBのコール頻度はレイズサイズに最も影響を受けます。他のプレイヤーはレイズサイズ以外にも、後ろにいるプレイヤーにコールされたりスクイーズされたりするリスクも考える必要があるからです。最後にアクションを行うBBだけが、コールをするかどうかの判断の基準がポットオッズのみになるため、その判断はポットオッズの変化により敏感になるのです。
オープンレイズに対応するプレイヤーは、レイズサイズ以外にも、後ろにいるプレイヤーにコールされたりスクイーズされたりするリスクも考える必要があります。
レイズサイズとフォールドエクイティ
このデータは、レイズサイズによるメリットとデメリットを浮き彫りにしています。大きなレイズは、自分に対してポジションを持っているプレイヤーに対するリスクが増す一方、BBや、効果は若干弱くなりますがSBに対して、より高いフォールドエクイティを生むことに繋がります。
大きなレイズはIPプレイヤーに対してのリスクが増す一方、ブラインドに対する高いフォールドエクイティをもたらす。
大きなレイズはIPプレイヤーに対してのフォールドエクイティを高めますが、効果的な手段ではありません。3bbのオープンは、2bbのオープンに比べて50%多くのリスクを伴いますが、HJ、CO、そしてBTNから得られる追加のフォールド頻度はわずか5%~10%程度です。そしてこれは、レーキ無しのゲームの結果です!レーキ有りのゲームでは、レイズサイズはこれらのIPプレイヤーのVPIPにほとんど影響を与えません。BBにのみ、50%大きなレイズに対して50%多くフォールドする傾向が見られます。
ポットを大きくする
ですが、大きなレイズは自分が持つ強いハンドのためにポットを大きくする効果もあるのではないでしょうか?もちろんそうですが、この際に”強いハンド”と見なされるハンドは非常に限られています。レーキ有りのゲームにおいて、AAで3bbオープンをした際のEVが10.15bbに対し、2bbオープンをした際のEVは9.48bbとなります。それ以外のハンドで3bbオープンをした際にEVがより高くなるのは、KKとAKsのみです。AKoはどちらのサイズでもEVは同じであり、QQではすでに小さいサイズを好む傾向が見られます。2bbでオープンした際のQQのEVは1.13bbですが、3bbでオープンすると0.95bbに下がります。
レーキ有り100NLでのLJのオープンレイズサイズの違いによるEVの比較
オープンレイズをする際は、ほぼ常にその場でポットを獲得するか、ブラインドとヘッズアップになる状況が好まれます。IPの相手にコールされたり3ベットされたりすると、最強クラスのハンドを除いてEVは下がってしまいます。
アーリーポジションからオープンする際に小さなレイズを選択することで、不利な展開になるリスクを抑えつつ、有利な展開となる余地を残せますより良い結果となる機会を得ることができます。小さいレイズサイズはブラインドをスティールする頻度が低くなり、BBとヘッズアップになった際のEVが低くなります(このシナリオではあなたが非常に有利なため、より大きなポットをプレイしたいからです)。ですが、小さいレイズサイズでは、あなたに対してポジションを持っているプレイヤーがポットに参加した際の損失が少なくなります。
BTNからのオープン
BTNからオープンする場合は状況が異なりますが、その差はわずかです。SBはポットオッズだけでなく後ろに控えるBBがアクションを起こすリスクも考慮せざるを得ないため、BTNが大きなレイズサイズを選択したとしても、そのサイズの増加率と同様のフォールド率を追加で得ることはありません。したがって、特にレーキ有りのゲームでは、SBのVPIPはオープンレイズのサイズによって劇的に変化することはありません。
そしてBTNからオープンする場合でも、ほとんどのハンドは小さなレイズを選択した方がEVが高くなります。KK+とAKsのみが3bbレイズを好むLJよりはレンジが広がりますが、それでも大きな違いはありません。BTNからオープンする際は、JJ+、AJs+、AQo+、そしてKQsが3bbでオープンした場合にEVが高くなります。
レーキ有り100NLでのBTNのオープンレイズサイズの違いによるEVの比較
しかし、BTNのオープンレンジには、LJには無かったカテゴリーのハンドが存在します。これらは非常に弱いハンドで、2bbオープンよりも3bbオープンをした方がEVが高くなります。それらのハンドは、J4s、T5s、K7o、A2oなどです。
BTNの最も弱いハンドは、3ベットをされるリスクを負ってでも、より高いフォールドエクイティを得ることを選びます。ですが、中程度の強さのハンドはそのような選択をしません。
大きなレイズの欠点の1つは、小さいレイズに比べて3ベットされる頻度が高いことです。これは、コールされても分が悪いBTNの最も弱いハンドレンジでは問題になりません。問題になるのは中程度のハンドです。コールに対しては良いものの、3ベットされると途端に苦しくなります。つまり、BTNの最も弱いハンドは、3ベットをされるリスクを負ってでも、より高いフォールドエクイティを得ることを選びますが、中程度の強さのハンドはそのような選択をしません。
この現象はBTN特有のものであり、COでさえ大きなレイズサイズを好む弱いハンドは存在しません。
また、この現象はレーキ有りのゲームに限定されます。レーキ無しのゲームでは、BTNは3bbよりも2bbでレイズするハンドが多く、最も強いハンドのみ3bbでオープンする方がEVが高くなります。レーキが発生しない場合、BTNは、BBとポジションを持った状態でヘッズアップをプレイすることでより多くの利益を生み出します。そのため、プリフロップで相手を降ろすことから得られる利益が減少します。
フロップが開いた際にレーキが発生するストラクチャーのみで、大きなレイズサイズでスチールをすることが好まれますが、それはBTN限定です。
重要な注意点
- LJからAAを3bbでオープンした際のEVが10.15bbであるということは、「3bbオープン戦略での均衡が取れた状態でのEVが10.15bbである」ことを意味します。3bbでオープンする戦略の方がEVが高くなるハンドもあれば、2bbでオープンする戦略の方がEVが高いハンドもあります。ですが、これは3bbオープンを好むハンドで3bbオープンし、その他のハンドで2bbオープンすることでEVが最大になるということではありません。そのような戦略は簡単に相手に付け込まれ、相手が適切に対応することでEVが低下する可能性があります。それぞれのオープン戦略でのハンドのEVを検証する目的は、プリフロップレイズサイズの仕組みをより深く理解するために、それぞれの戦略の長所と短所についての洞察を得るためです。
- 均衡のEVは、必ずしも実際の状況を反映しているわけではありません。例えば、レーキが有るゲームにおいてアーリーポジションから小さくオープンする理由の1つは、相手プレイヤーがポットに参加する際は3ベットを選択するインセンティブが高いためです。小さいレイズは、弱いハンドでオープンした際の損失を最小限に抑えつつ、強いハンドでは大きなポットを作り出す可能性を高めます。ですが、よりカジュアルで経験の浅いプレイヤーが多く参加するゲームでは、コールが一般的で3ベットは比較的少ないため、より強いレンジでより大きなオープンサイズを選択することが、有効なエクスプロイト戦略となることもあります。
まとめ
アーリーポジションから小さなレイズを行うことにはとても良い理由があります。自分の後ろにまだ多くのプレイヤーが残っており、本当に強いプレミアムハンドを持っていない限り、ポットにチップをつぎ込むかどうかを判断することは難しいからです。小さなレイズは、3ベットやコールドコールされた際のリスクを抑えつつ、ブラインドをスチールするか、ポジションがある状態でヘッズアップをプレイすることができます。これは、小さなレイズサイズが本来もたらすオッズがレーキによって悪化させ、相手が通常よりもさらにコールしづらい状況のゲームでは特に当てはまります。
一方で、BTNの状況はより複雑です。誰もあなたに対してポジションを持った状態でコールドコールする事が出来ず、3ベットはブラインドにとってリスクが高く、コストもかかるアクションです。そのため、BTNからのより大きいオープンレイズは、最も強いハンドだけでなく、フロップが開かれない場合にはレーキが発生しないゲームの場合、オープンレンジの最も弱いハンドにとっても有利に働きます。