ポットジオメトリーとは
「ポットジオメトリー」とは、それぞれのストリートでポットに対して同じ割合のサイズでベットをし、リバーまでにオールインすることを指します。この戦略はジオメトリックベットサイズやGGOPとも呼ばれます。
同じ割合でベットすることで、相手がポットに入れる金額を最大化することができます。もしリバーまでに全てのスタックをポットに入れたいのであれば、同じ割合でベットすることで、相手は理論上最も広くディフェンスしなくてはなりません。
この記事では、ポットジオメトリーの理論やなぜ相手が広くディフェンスする必要があるのかについて例題を挙げながら解説していきます。またこの戦略の限界についてもお話しします。
相手のディフェンスレンジを最大化するには
なぜ同じ割合でベットすると相手のコールレンジが最も広くなるのでしょうか
2つの条件があるとします。
- すべてのスタックをポットに入れる。
- 相手にできるだけ多くのハンドをコールしてもらう。
上の条件を満たすベット戦略は無限にあります。例えば大きくベットして、小さくベットして、そして中くらいのベットをすることもできます。他には2回オーバーベットしてもよいでしょう。あるいはチェック→チェック→オールインという方法もあります。さまざまな方法がありますが、最も広くコールさせるのに最も効果的なベット戦略は何でしょうか?ここでジオメトリックベットサイズの出番です。
各ストリートでポットに対して同じ割合でベットすると、理論的には相手のコールレンジと、ポットに入れる額を最大にします。
なぜでしょうか🤔
MDFを使えば相手がどのくらいの広さでディフェンスするかを求めることができます。各ストリートのMDFを掛けて、最終的なコールレンジを求めます。
例題
ポットは100ドル
スタックは1300ドルとします。
フロップからアクションを考えます。
2つのベット戦略を考えてみましょう。
戦略A) スタックを一度にオールイン
戦略B) それぞれのストリートでベット
戦略A)
- 相手はレンジの7% = 1/(1+13) でコール
- 相手は平均91ドル(1300ドルの7%)をポットに入れる
戦略B)
- 相手はレンジの12.5% = 50%*50%*50% でコール
- 相手は平均162.5ドル(1300ドルの12.5%)をポットに入れる
戦略Bでは、相手は戦略Aの2倍近い金額をポットに入れており、かつこの計算には先のストリートでコールし、ショーダウン前にフォールドした額は含まれていません。それを考慮すると、相手は237ドル近くポットに入れる計算になります。
ストリートの回数
ポットは6ドル
スタックが97ドル
ジオメトリックベットサイズは、残りのストリート(ベット)の数によって決まります。ストリートの数が少ないほど、リバーまでにお金を入れるには大きなサイズが必要になります。
ジオメトリックベットサイズは以下の式で求めることができます。
ゲーム中にこれを計算するのは現実的ではないので、単純にリバーまでのスタックとポットの大きさを考えて、ベットサイズを求めるのが良いでしょう。
ベットの順調さ
ベット戦略の「順調さ」を、各ストリートでのベットサイズ(ポット%)の標準偏差と定義してみましょう。
ここでは、400種類のベットを記したスプレッドシートを作成しました。次に、ベットの順調さと合計金額をグラフにします。下のグラフから、ベット戦略が順調であればあるほど、ポットにより多くのお金が入ることがわかります。
縦軸は相手がポットに入れる金額を表しています。横軸は、フロップ、ターン、リバーのベットサイズの標準偏差(広がり)を表しています。
相手のコールレンジは、こちらのベットの順調さに比例して広がります。ベット戦略がジオメリトックベットサイズから外れれば外れるほど、相手はこちらのブラフを防ぐためにコールする必要性が下がります。
これが、ディープスタックの時にオールインまで持っていくレンジをタイトにする理由です。ナッツアドバンテージは、オールインまで持っていくレンジがタイトになればなるほど価値が高まります。
次に、相手がポットに入れる金額に対するベット戦略の違いをグラフにしてみました。フロップ、ターン、リバーのベットサイズがポットに対して同じ割合の場合に、最もポットにお金を入れています。
データの調査
スプレッドシートのリンクを記載したので、データを使ってみてください。スタックやポットのサイズを変えることができます。
ジオメトリックベットサイズを使う局面
GTO戦略は通常、ナッツアドバンテージが強い時にバリューを最大化するために、ジオメトリックベットサイズを使います。これは、自分のレンジがポラライズしていて、相手のレンジがキャップされている場合に非常に有効です。
ジオメトリックベット戦略はMDFから派生したもので、ポラライズレンジ対ブラフキャッチャーのトイゲームでのみ真価を発揮します。しかし、ナッツアドバンテージが大きい場合は使うようにしましょう。
代表的な例はターンにおけるプローブベットです。
例 1: プローブのBB 対 IP SRP
ここでは、フロップがチェックで終わった後のAK22rボードのBB対BTNのプローブベット戦略を見てみましょう。ポットは5.5BB、スタックは97.5BB。ここでのジオメトリックベットサイズは252%ポットです。以下の通り、ここでのGTO戦略は、ジオメトリックベットサイズかチェックかの2択しかありません。
BBはスリーカードのナッツアドバンテージがあるので、リバーまでにそのアドバンテージを使ってできるだけ強くプレッシャーをかけていきます。
例題 2: IP Cベット vs BB
フロップのIPでも同様の戦略が見られます。ここでは、BTNはトップペアのアドバンテージを持っており、3回のストリートに渡ってジオメトリックベットサイズを使ってプレッシャーをかけています。
ジオメトリックベットサイズを使わない局面
条件と前提を確認しておきましょう。
条件
- リバーまでにすべてのスタックをポットに入れる。
- 相手にできるだけ多くのハンドをコールしてもらう。
前提
- 相手はMDFに従ってディフェンスする。
- ナッツはリバーまでナッツのままである。
これらの条件や仮定は必ずしも正しい必要はありません。ジオメトリックベット戦略は完全にポラライズした状況を想定していますが、実際にはそのような局面はほとんどありません。
完全にポラライズしたレンジは、相手のレンジに対して絶対に負けないナッツとピュアブラフだけで構成されます。エクイティは変化しなく静的、ハンドの強さは変わりません。しかし実際のポーカーはドローが多く、エクイティは変化するものです。ほとんどのハンドは、リバーまでに強くなったり弱くなったりします。
さらに重要なことは、この戦略を実行するのに十分な数のナッツを持っていることはめったにないということです。ほとんどの中くらいの強さのハンドは、オールインまでしようとするとやり過ぎになってしまいます。
GTO戦略は、ほとんどの場面でジオメトリックではありません。レンジの強さが近かったり、エクイティが変わりやすい場合、GTOはターンの前にジオメトリックベット戦略を使うことはほとんどありません。エクイティがあまり変化しない状態になり、レンジが強くポラライズされた場合にジオメトリックベットサイズは使えるようになります。エクイティが近く、早いストリートで変わりやすい場合はこの戦略を使うべき局面ではありません。
まとめ
ジオメトリックベットはリバーまでにすべてのチップを入れ、相手がディフェンスするレンジを最大限に広げます。
このベット戦略はMDFから派生したもので、ポラライズ対ブラフキャッチャーの状況では理想的です。しかし、レンジが完全にポラライズすることはめったにないため、実戦では必ずしも正しいわけではありません。
ジオメトリックベットサイズは、エクイティが動きにくい局面で分かりやすいナッツアドバンテージを主張している時(ナッツはリバーでもナッツのままである可能性が高いため)に使いやすいでしょう。GTOではレンジの属性がはっきりしてきた時に多くみられます。