ファイナルテーブルはトーナメントで最も刺激的でリターンの多い局面であり、ファイナルテーブルでの勝利は、ポーカープレイヤーとしての総合的な成績を左右します。PKOのファイナルテーブルでは特に顕著で、ビッグペイジャンプとビッグバウンティの両方があります。
PKOのファイナルテーブルで、不必要なリスクを避けながら、バウンティを獲得し、利益を最大化するにはどうすればよいのでしょうか?今回は、PKOのファイナルテーブルと通常のファイナルテーブルの比較し、戦略がどう変わるかを解説します。
ペイアウトストラクチャーの違い
PKOと普通のファイナルテーブルの戦略的な違いに入る前に、それぞれのペイアウトがリスクプレミアムに与える影響を理解しましょう。これは、GTO WizardでのPKOと普通のペイアウトストラクチャーを比較したものです。
PKOのペイアウトストラクチャーはなだらかで、1位と2位には賞金プールから同額が支払われます。これは、PKOトーナメントの優勝者は、自分のバウンティと対戦相手のバウンティを獲得でき、それが最終的な賞金に上乗せされることが多いためです。
PKOのペイアウトストラクチャーはなだらかなので、リスクプレミアムは高くなります。この高いバブルファクターはバウンティパワーの影響によって軽減されます。ファイナルテーブルで、この2つがどのように影響しあうか見てみましょう。
バウンティを考慮しないと、PKOファイナルテーブルではバブルファクターが高くなり、リスクプレミアムも高くなる。
PKOのバブルファクター
以下の2つのグラフ、PKOと通常のファイナルテーブルにおけるバブルファクターを、スタックサイズに基づいて比較しています。最初のグラフでは、ペイアウトが戦略に与える影響を分かりやすくするため、バウンティの影響を取り除いています。
先に述べたように、PKOにおけるペイアウトストラクチャーは平坦なため、バブルファクターが高くなります。では、バウンティがあるとどうなるでしょうか。
PKOのファイナルテーブルで賭けるチップは、得られるチップよりもはるかに価値が高い。このことは、バウンティを獲得するために十分なリスクを冒すまで当てはまります。
グラフの最後が落ちているのは、スタックが全てポットに入れられた局面を表しており、バウンティを獲得するチャンスがあるので、バブルファクターが 1 を下回ります。PKOのファイナルテーブルでは待って得られるチップよりリスクを負うチップの方が価値が高くなります。これによってバウンティのためにリスクを負うことが正当化されます。
もちろん、実際のファイナルテーブルではスタックにばらつきがあるため、これはただの仮定の話です。しかし、バウンティがファイナルテーブルに与える影響は限定的ということは覚えておきましょう。次はPKOファイナルテーブルのレンジを考える上で、バブルファクターが全体的な戦略にどのような影響を与えるか見ていきます。異なるスタックサイズでのレイズファーストイン(RFI)レンジを見てみましょう。
PKOと通常のレンジの比較
以下は、GTO Wizardの7人ファイナルテーブルのソリューションを元にPKOと通常のRFIレンジを比較したものです。
まずは平均スタックサイズが60BBの場合をみてみましょう。ポジションによるオープンレンジの違いはほとんどありません。違うのはBBにカバーされているSBのリンプファーストイン(LFI)とRFIのレンジで、BBは83BB持っています。これらのレンジは以下のリンクから見ることができます。
次に、スタックサイズが戦略にどのような影響を与えるかを考えてみましょう。
2つ目は、浅いスタックが戦略に与える影響を見ることができます。平均スタックが30BBの場合、PKOではCO、BTN、SBのレイズが多くなり、戦略が変わり始めます。主な違いは、BBがカバーされているので、レイトポジションはバウンティを取るチャンスが増えた点です。それでも、SBだけがリンプをオープンに変えて大きくRFIレンジを広げています。一方、COは残りのプレイヤーを全てカバーしているので、オープンは3%しか増えません。
以下のグラフは、ショート場合、オープン戦略がどのように変化するかを表しています。
これらのレンジは以下のリンクから見ることができます。
最後に、全員が20BB以下のショートスタックの例を見てみよう。
ここでは以下の点に注目してください。
- ショートのPKOでは、オープンオールインがかなり少ない。
- ショートスタックのHJは、PKOだとややタイトになりますが、通常のFTと同じような戦略をとります。
- チップリーダーなのに、PKではSBのオープンが少ない。
- PKOは、ミドルポジションからレイトポジションにかけてオープンオールインに対するレイズの比率が高く、SBも同様。
これらのレンジは以下のリンクから見ることができます。
この3つの例から以下のことが分かります。
- リスクプレミアムは、ファイナルテーブルでのスタックサイズによって増減することはない。
- バブルファクターは全員PKOの方が低いが、カバーしている場合はより顕著。
- バブルファクターが低いにもかかわらず、PKOと通常のファイナルテーブルのレンジは似ている。
PKOのファイナルテーブルではリスクプレミアムが低くなりますが、通常のファイナルテーブルと比較して、RFIのレンジに大きな影響はない。
コールレンジ
RFIのレンジを理解したら、次はオープンに対するレンジを見ていきましょう。以下は、カバーしているプレイヤーのコールレンジをPKOと通常の場合で比較していきます。
PKOのレンジ
通常のレンジ
オールインしたプレイヤーをカバーしており、後ろにもう一人いる場合、BTNのオールイン頻度はあまり変わりませんがコール頻度は上がっています。PKOは、ポケットペアのオールインが多く、ATがレンジに加わっています。これは、BTNはミドルペアでSBのオーバーカードをフォールドさせて、広いレンジでHJのバウンティを奪おうとしているためです。BTNはSBがオールインした場合、この例のレンジの一番弱いハンド(例えば77、ATo、AJo)はフォールドでき、プレミアムペアで守ります。
PKOの原則としては、カバーしているプレイヤーからオールインを受けており、後ろにカバーされている場合は、ミドルペアと強いエースでフォールドエクイティを最大化し、コールレンジはトップとボトムでバランスを取ります。
次はPKOと通常のファイナルテーブルで、ディープスタックで3ベットを受けた時、チップリーダーのレンジがどの程度広がるかを見てみましょう。
PKOレンジ
通常のレンジ
ここで、戦略の違いが明確になります。どちらの例でも、私たちはベストハンドはオールインしていますが、PKOのチップリーダーは、ポストフロップでプレイしやすいハンドでフロップを見に行きます。4と3のポケットは、フォールドエクイティを得ると同時に、4ベットレンジのバランスを取っています。
以下は両方に共通する点です。
- カバーしているプレイヤーは、オールインとオールインではない3ベットの両方でフラットコールすることができる。
- オールインではない3ベットをコールするときは、自分のレンジのうちフロップ以降戦いやすいハンドを選ぶ。
- 3ベットしたプレイヤーがポットコミットしているときは、強いハンドをトラップしない。
人数が少ない場合
最後に、ファイナルテーブルが残り数人になった局面を見てみましょう。下の例では、4人が残り、平均スタックは30BBでチップに大きな差はありません。
人数が少なくスタックが近い場合、SB以外は残りのプレーヤーをカバーしているなら、広いレンジでプレイします。バブルファクターを比較すると、その理由がわかります。
PKOバブルファクター
通常のバブルファクター
この例では、BBに対するSBのバブルファクターの差は0.3と比較的小さくなっています。以下のリンクからこのレンジを見ることができます。
比較として、チップリーダーがはっきりしている場合の平均スタック30BBの例をみてみましょう。
PKOのチップリーダーのレンジはなぜこんなに広いのでしょうか。チップリーダーのバブルファクターを見てみましょう。
チップリーダーは広いレンジでプレイするメリットがあるのは理解できますが、面白いのはPKOより通常の場合の方が広いレンジでプレイしている点です。チップリーダーは、ポットを失ってもトーナメントの順位に大きく影響しないため、リスクを負わずに、ショートスタックに強いプレッシャーをかけることができます。
PKOバブルファクター
通常のバブルファクター
PKOソリューションでは、バブルファクターが1を下回っている箇所があります。このような負のリスクプレミアムが、SBのレンジにどう影響するか見てみましょう。
次の図は、残り4人のPKOファイナルテーブルで、SBがどのようなアクションを取るかを示しています。
いくつか補足しておきます
- 負のリスクプレミアムがあるのに、チップリーダーはCOやBTNオープンに対して大半のハンドをフォールドしている。
- BTNやBBにオールインされた場合でも、SBはそれなりにフォールドする。BTNオールインの場合、AT以下のエース、KQ以外のエースなしのハンド、66以下のポケットペアをすべてフォールドする。
- SBはCOとBTNに対してオールインではない3ベットレンジを持ち、そのうち弱いハンドは4ベットにフォールドする。
- SBはBBに対してトラッシュハンドの一部をレイズ/フォールドし、プレミアムハンドとバランスを取る。
残り人数の少ないPKOファイナルテーブルにおいて圧倒的チップリーダーでも、オールインを受けた際はショートに対して比較的タイトなレンジでプレイする。
これらのレンジは以下のリンクから見ることができます。
結論
どのファイナルテーブルもリスクとリターンは他のステージより高くなります。ファイナルテーブルでのアクションは、リスクを減らしながらリターンを最大化するにはどうすれば良いかを基準に考えます。
この記事を通して、PKOのオープンレンジとコールレンジは通常のファイナルテーブルと似ていることが分かりました。カバーしている相手のバウンティによるエクイティがあったとしても、アグレッシブなプレイに対しては、慎重に対応する必要があります。
まとめ
- 自分をカバーしているプレイヤーが後ろにいて、オールインをコールする際は、ミドルペアや強いエースハンドでフォールドエクイティを最大化し、コールレンジはトップとボトムでバランスを取る。
- 残り人数の少ないPKOファイナルテーブルにおいて圧倒的チップリーダーでも、オールインを受けた際はショートに対して比較的タイトなレンジでプレイする。
- バウンティによって、PKOファイナルテーブルのなだらかなペイアウトストラクチャーに伴う高いリスクプレミアムは減るものの、PKO以外の標準的なレンジを変えるほどではない。