GTO Wizardやソルバーのようなツールは、特定の戦略を暗記するために使うべきではありません。暗記するシナリオがあまりにも多すぎるからです。そのように使うのではなく、スタックの深さ、レンジアドバンテージ、ナッツアドバンテージ、ベットサイズ、ポジションが戦略にどのように影響してくるのかといった全体像を掴むために使うのが良いでしょう。科学的な考え方と方法を元に学習することで、勉強は有意義なものになり、実戦で使える気づきを得ることができます。
以下が勉強方法の概要です。細かい内容については順に解説していきます。
- 疑問を持つ
- 関連する概念を調べる(任意)
- 仮説を立てる
- 仮説の検証
- 結果を分析
- 結論付ける
- 結論は新たな疑問と仮説に繋がる
疑問を持つ
GTO Wizardには、何万もの複雑で詳細なシナリオのライブラリが数多くあります。そのため、集中力が途切れたり、何をやれば良いか分からなくなるかもしれません。色々なライブラリを見るのは楽しいと思いますが、効率的ではありません。集中して勉強する際は、何を調べるかあらかじめ決めておくと良いでしょう。
戦略的な概念の特定の要素に対して疑問を持つと良いでしょう。つまり、「AK8のフロップでKQをベットすべきだったか?」や「相手がディープスタックの時は大きくベットするべきか?」よりも「SRPのIPの場合、スタックサイズはCベット戦略にどのような影響を与えるのか?」といった疑問の方が良いということです。
以下は具体的かつ有意義な質問の例です。
- フロップのモノトーンボードでブラフに適したハンドは?
- BB対BTNのSRPでチェックレイズするにはどれくらいの強さのハンドが必要か?
- プリフロップでレイズした相手がCベットを打ち、ターンでチェックした場合、自分はリバーでどのくらいの頻度でブラフするべきか?
- ターンでドローを持っている時、どういう局面であればベットを続けて良いか?もしくはチェックするべきか?
スタックの深さやポジション、プリフロップのアクションを指定することで、疑問をさらに具体的にすることができます。全ての科学的な実験は、テストしたい変数を限定し、その他の要素は同じにします。
関連する概念を調べる(任意)
このステップは任意です。もし、仮説を立てることが難しくないのであれば、ここは飛ばして問題ありません。次に進んでください。しかし、疑問に対して自分なりの予想を立てることが難しい場合は、ソルバーがどのように動くかを考える前に、その疑問に関連した概念を理解した方が良いでしょう。そうすることで上手く解釈できるようになります。
例えば、「SRPでIPの場合、スタックの深さはCベット戦略にどのような影響を与えるか」を調べたいのであれば、レンジアドバンテージ、Cベット、SPRについての記事を読むと良いでしょう。
仮説を立てる
具体的なデータやシナリオを見始める前に、疑問に対して自分なりの答えを出してみましょう。先ほど説明した通り、その答えは具体的であるとより良いです。ベットサイズやベット頻度、特定のフロップでどのハンドが最もベットするかなどを予想してみましょう。その予想を紙に書いてみるのも良いかもしれません。
ここでは、検証する理論にきちんと向き合う必要があります。答えを先に見ると、それはあたりまえで、元から自分が知っていたかのように感じることがあります。疑問に対してどの程度まで理解しているのかを先に把握して、その上で答えを見て気づきを得ると効率よく覚えることができます。「おお!Xだと思っていたのに、実はYだったんだ!」という体験が新しい知識を脳に定着させるのです。こういった体験をすると、リアルマネーで同じような局面でプレイしている時に思い出せるようになります。
仮説の検証
この時点で疑問が十分に具体的になっていれば、テストする変数は一つになっているはずです。そうでない場合は、もっと具体的にした方が良いでしょう。このステップでは、仮説が正しいか、それとも再度練り直しが必要になるか実験します。
- スタックの深さがCベットにどのような影響を与えるのかを調べる場合、他の変数はすべて同じにする必要があります。スタックの深さだけを変えて、Cベットの頻度とベットサイズがどのように変わるかを調べます。
- ドローでのダブルバレルを調べる場合、ボードやプリフロップやフロップのアクションを固定し、ターンに何が落ちるかでベット戦略がどのように変わるかを調べます。
一度に複数の変数を変えると、正しい結果を得られなくなります。例えば、エフェクティブスタック40BBでBTN対BBのフロップK♦ 8♦ 2♠におけるCベット戦略と、同じフロップでエフェクティブスタック100BBでUTG対BBのCベット戦略を比較しようとすると、その違いがスタックサイズを変えたからかプリフロップのレンジを変えたからなのか、あるいはその両方なのかが分からなくなります。
こちらの記事では、GTO Wizardで利用可能な多くのツールや表示の概要を解説しています。先に読んでおくと、結果に最も影響する要素は何かを特定しやすくなるでしょう。例えば、こちらのレポートでは、MTTにおけるSRPで、60BB持っているBBに対するBTNのCベット戦略をグラフで表しています。スタックの深さが異なる場合のレポートと比較することで、スタックの深さがBTNのCベット戦略にどのように影響するのかについて一定のパターンや違いを見つけることができます。
結果を分析
結果と仮説を比較します。何を間違え、何を見落としていたか振り返りましょう。結果をできるだけ詳細に記録し、特に驚いたことや仮説とズレたものをメモしていきます。特に外れ値は自分のこれまでの理論の穴であることが多いので、自分なりの理論を構築する上で非常に役に立ちます。なぜそうなるのかを掘り下げてみましょう。
結論付ける
前のステップで得たデータと結果を使って、最初の仮説の間違っていた部分を修正した新しい理論を作りましょう。
- スタックサイズが深くなるにつれてCベットの頻度が変化する要因は?
- ベットされやすいフロップとされにくいフロップがあるのはなぜか?
- ベットしやすいボードとしにくいボードがあるのはなぜか?
「スタックが深い場合、常にCベットを多用する」というような、すっきりとした答えにはならないでしょう。ベットの頻度が多いか少ないか、ベットサイズが大きいか小さいかといった全体的な傾向に気づくかもしれませんが、例外も見つかるかもしれません。
仮説を立てる際と同様に、ここでもできるだけ具体的に書くと良いでしょう。また、実戦で使えるかに焦点を当てましょう。
この結果から普段のプレイをどう変えるか?
例えば、「SPRが低い時はスロープレーを多用する」、「SPRが高い時はフロップでオーバーベットする機会を探す」など、具体的な目標を立てましょう。
結論は新たな疑問と仮説に繋がる
上に挙げた具体的な理論や説明は、新たな研究の仮説としても機能します!今回はCベットを取り上げましたが、どんなトピックでも新しい理解を得られたら、それをテストしてさらに洗練させましょう。例えば、ディープスタックでの大きなベットに対してどのようなフロップがコールしやすくなるか、どのようなハンドがCベットレンジに含まれているのか自信を持って答えられるようにしましょう。
翻訳:森 大維河