GTOポーカーは非常に膨大なため、戦略を簡略化するために、私たちはよく法則のようなものや経験則に頼ります。この記事では、GTO Wizardの集合レポートを利用して、トーナメントにおけるブラインドディフェンスに役立つ法則を探します。
ドンクベット
ドンクベットとは、前のストリートでアグレッサーではないOOPプレイヤーからのベットを指します。例えば、BBがプリフロップでBTNからのレイズをコールし、フロップで先にベットするのはドンクベットです。フロップでチェックコールし、ターンで先にベットした場合も同じくドンクベットと言います。フロップがチェックで終わった場合は、前のストリートにアグレッサーがいないため、OOPプレイヤーがターンでベットしてもドンクベットにはなりません。
ドンクベットがDonk(バカな)Betとして呼ばれるようになったのは、ソルバーが登場したり、ゲーム理論がポーカーにしっかりと使われるようになるずっと前のことです。その暗黒時代でさえ、賢いポーカープレイヤーは「レイズした人までチェックで回す」のが一般的に正しいことを理解していました。今、私たちはGTO Wizardのフロップの集合レポートを使って、それを証明することができます。以下はMTT40BBのBTN対BBのシナリオです。
ソルバーの全フロップの平均ドンクベット頻度は2%です。そのドンクベットは、ストレートの可能性があるコネクテッドフロップがほとんどを占めています。その場合でも、ドンクベット頻度はたった7%しかありません。
さらに具体的に説明すると、ドンクベットは特に低いコネクターのフロップで発生します(ただし432ではありません)。
これはスタックサイズやスタックポジションによって起こる偶然ではありません。EPのレイズに対するBBのドンクベット頻度はさらに低く、どのスタックサイズでも微にある程度です。
プリフロップレイザーのレンジはBBコーラーのレンジよりはるかに強い。
この理由は簡単で、プリフロップレイザーのレンジはBBコーラーのレンジよりもはるかに強いからです。次の図は、BBのドンクベット戦略を全てのフロップで表示し、各フロップでBBがどれだけのエクイティを持っているかをランク付けしたものです。一番左のボードはBBにとって最も良いボードとなっています。そこでさえBBは50%のエクイティをクリアするのがやっとです。必然的にBBのドンクベットのほとんどは、エクイティが近いこの数少ないフロップで行われます。
ほとんどのフロップでBBのエクイティは45%以下であり、ひどい時には35%しかありません。このようにレンジ全体のエクイティが不利な場合、ポットに必要以上の資金を投入する理由がなく、チェックでポットを小さく保つようにします。数少ない強いハンドを持っている時も、BTNがベットしてくる可能性が高いため、チェックします。打たれた場合はチェックレイズが可能です。
SBも同じような問題を抱えています。コールレンジはBBより強いですが、プリフロップでコールしているためレンジはキャップされています。そのため、SBもBBと同様にフロップではレンジ全体のエクイティは不利になり、オリジナルレイザーまでチェックで回すことがほとんどです。
この集合データから、「強いアドバンテージがあるフロップ以外はブラインドはアグレッサーまでチェックで回した方が良い」ということが分かります。
CベットにBBはどのように対応するべきか
GTO Wizardを使って、33%ベットに対するBBのアクションの平均を調べてみます。次のグラフでは、各フロップをハイカード別にまとめています。アグレッサーのレンジにヒットしやすいブロードウェイのフロップでは、BBのディフェンスが少ないことが分かります。
グループを分けることで、さまざまなフロップの期待値を可視化することができます。
Cベットに対するBBのアクションは、ボードテクスチャと同様にベットサイズにも左右されます。BTNのベットサイズがBBディフェンスにどのような影響を与えるかを見てみましょう。
下のグラフは、MTT40BBのBTN対BBで、様々なサイズのCベットに対するBBのアクションの平均を示しています。
いくつかのパターンが見えてきました。
BTNが大きくベットすればするほど、BBはフォールドする。ベット額が大きいとオッズが悪くなり、BTNにとってブラフのリスクが高くなるので、これは当たり前のように思えますが、大きいベットは「ブラフっぽい」という一般的なイメージとはズレています。実際には、大きなベットはよりポラライズされたレンジで打つ必要があり、非常に強いハンドや非常に弱いハンドに二極化し、薄いバリューやプロテクションベットは少なくなります。これは2つ目にも繋がってきます。
BTNが大きくベットすればするほど、BBのレイズは少なくなる。レイズはポラライズレンジに対してはあまり効果的ではありません。強いハンドは喜んでついていきますし、弱いハンドは楽にフォールドできます。厳しい判断を迫られる中程度のハンドはほとんど含まれていません。BTNの小さいCベットレンジには中程度の強さのハンドが多いはずなので、BBはより頻繁にレイズします。
BTNが大きくベットすればするほど、BBのレイズ額は小さくなる。小さなベットに対して小さなレイズはポットオッズが非常に良くなってしまい、ポットが大きくなることはほとんどありません。BTNが100のポットに20をベットした場合、33%のポットレイズをする場合、コールのオッズは46:186、約4:1となります。BBはブラフでフォールドエクイティを得たり、バリューハンドでポットを膨らませる必要があるので、大きなレイズの方が良くなります。BTNのベットが大きくなるにつれ、それに比例して小さなレイズでも同様のオッズが得られるようになり、大きいサイズを使わなくともリバーまでにオールインができるようになります。
CベットにSBはどのように対応するべきか
BTNのCベットに対するSBのアクションにも先ほどと同じようなパターンが見られます。
SBはBBほど弱いハンドでフロップを見ることがないため、同じサイズのベットに対してはフォールドがやや少なくなります。
BBのプリフロップのコールレンジは、SBよりも広くなっています。SBのコールレンジはBBに比べゴミハンドが少なく、よりコンデンスレンジになっています。そのため、SBはフロップのCベットにBBよりもついて行くことができます。
ただ、SBはBBよりもチェックレイズ頻度が少なくなっています。これは単純に、BTNがBBにベットする頻度よりもSBにベットする頻度の方が低いからです。BBに対するBTNの平均Cベット頻度(サイズに関係なく)は約75%であるのに対し、SBに対しては約50%です。必然的にBTNはベット頻度を落とすことで、比較的強いSBのレンジに調整しているということです。
エクスプロイトを考慮する
「自分のSBのコールレンジは強いので、チェックレイズの回数を増やす」とか、「こちらに良いフロップなので、チェックレイズの回数を増やす」といった話は限定的に利用するべきです。こういったレンジ差はプリフロップレイザーがCベットを打つ際に考えることです。コールした側のレンジが強い時はベット回数を減らすべきです。もし相手がそうしていないと疑われる場合、つまり、相手がさほどレンジアドバンテージがないにも関わらず、全レンジやほとんどのレンジでベットしている可能性がある場合、基本的に最も有効なエクスプロイトはソルバーよりも頻繁にレイズすることです。
相手がさほどレンジアドバンテージがないにも関わらず、全レンジやほとんどのレンジでベットしている可能性がある場合、基本的に最も有効なエクスプロイトはソルバーよりも頻繁にレイズすること。
このような機会を見極めるのに良い方法は、プリフロップレイザーのベット頻度が低くなるようなボードやシチュエーションに注目してCベット戦略を研究することです。これらは一般的に、ベット頻度が高すぎるプレイヤーに対してエクスプロイト的にチェックレイズを増やすのに最適なスポットです。
ドンクベットはCベット頻度が低いプレイヤー(打ちすぎるプレイヤーの方が圧倒的に多いですが)に対してはエクスプロイト的に非常に有効です。このエクスプロイトを行うには、均衡時に最も積極的にチェックレイズするスポットを探しましょう。チェックレイズの機会を与えてくれない相手には、自分から積極的にベットするメリットが大きくなります。
EPに対応する
ここまで説明した例は、ポジションとスタックサイズを固定していますが、これをベースに他のポジションやスタックサイズを想定するのはさほど難しくありません。UTGのCベットに対するBBのアクションは、相手がBTNの場合とほぼ同じです。
次のグラフは、BBがBTNとUTGのCベットに直面した場合のディフェンス頻度を比較したものです。
スタックサイズの比較
ショートスタックの場合はどうなるでしょうか?この場合BBのコールレンジがさらに弱くなっていることを考慮する必要があります。20BBでは、BBはプリフロップで強いハンドをより多くオールインし、40BBでコールするには弱すぎるハンドでもコールします。その際BTNのレイズはやや大きくなり、ポジションの重要性は少し下がります。その結果、小さいベットに対するフォールドが多くなり、レイズの頻度は同程度になりました。比較的大きいサイズのCベットを打たれた時は、BBは40BBの時よりも多くフォールドしますが、レイズの頻度も高くなります。これはエフェクティブスタックに占めるベットの割合が大きいためです。
以下の表は、エフェクティブスタック40BBと20BBにおけるBBのディフェンス頻度を比較したものです。
まとめ
ブラインドからレイズをコールした場合、BBかSBかに関わらず、プリフロップレイザーまでチェックで回すべきです。例外は、非常に特殊なフロップの時か、あまりベットしないプレイヤーに対するエクスプロイトの場合です。
ベットを打たれたら、自分のレンジは相手に対して非常に不利であることを意識しなくてはいけません。ベットの額がエフィクティブスタックに対して大きな割合を占めない限り、基本的にコールかフォールドのどちらかのアクションを取りますが、小さいCベットに対しては多少多めにレイズすることができます。しかし、レイズ額を相手のベットに対する倍数で考える「Jedi mind trick」には注意してください。非常に小さなベットに対しては、小さいサイズでレイズしてしまうと相手のコールオッズが良くなってしまうので、ポットに対して多めにレイズするのが一般的に正しいとされています。