ストラドル+アンティーゲームにおけるコールドコール
従来のノーリミット・ホールデムのキャッシュゲームでは、オープンレイズに対するコールは、BB以外ではあまり効果的ではありません。ポットにデッドマネーがないため、コールのオッズが良くならず、誰かがレイズした後は多くの場合フォールドになります。
もし自分のハンドがコールできそうであれば、代わりにレイズができないか考えるべきです。レイズには幾つかの意図があります。
- フォールドエクイティ – オリジナルレイザーを含む、すべてのプレイヤーをフォールドさせることができれば、ハンドに関係なく勝ちになりますし、後ろのプレイヤーのオーバーコールするのを防ぎ、オリジナルレイザーとのヘッズアップに持ち込めるだけでも大きな価値があります。
- カモフラージュ – プレミアハンドは通常レイズするため、コールすることでそれらのハンドが含まれていないことを相手に伝えてしまいます。オリジナルレイザーのレンジが強いため、他のプレイヤーが積極的に3ベットしてくることは少ないですが、コールレンジが広がるほど、後ろのプレイヤーが3ベットでスクイーズするインセンティブも高まります。
レーキがある場合、BTNかBB以外でソルバーは、レイズに対してコールすることはほとんどありません。ボタンはフロップ以降、IPが確定しているので、後ろのプレイヤーの参加を防ぐ必要性が低く、BBはポットオッズが良い他、コールすれば確実にフロップが見られます。
レーキのないゲームであっても、BTN、BB以外からレイズにコールするのは、良い選択肢とは言えないでしょう。
ストラドルとアンティがあるゲームでは、この基本は大きく変わります。プリフロップのポットに、より多くのデッドマネーが加わるので、ポジションに関わらず、従来ならフォールドすべきだったようなハンドでも、コールすることができるようになります。
本記事では以下の点について解説します。
- コールドコールレンジがどうなるか
- ポジションによってどのように変化するか
- 相手に応じて、どのように調整すべきか
集合分析で得た戦略
以下の表は、ソルバーがさまざまなシチュエーションで、通常のゲームとストラドルアンティゲームでレイズにどう対応すべきかを示したものです。分かりやすいように、それぞれのポジションはBB基準ではなくBTN基準で表記しています。たとえば、8人テーブルにおけるUTGは「BTN-5」にあたりますが、ストラドルアンティがある場合はBTN-5はストラドルになるので、表には含めていません。「BTN-4」はストラドルゲームではUTG、通常のゲームではUTG+1に該当し、「BTN-1」は両方COになります。
この表は、大きなアンティとビッグブラインドを2倍にしたゲーム(実質的にストラドルがあるのと同じ)と通常のゲームを比較をしています。ただし、これは完全に同条件の比較とは言えません。というのも、ストラドルアンティでの200bbディープスタックは、アンティの影響で、開始時のポットに対して相対的に浅いスタックとなるためです。
Agg. Freq(アグレッション頻度)の列は、各ポジションのVPIP(フォールド以外のアクション)のうち、どれだけの割合がレイズだったかを示しています。
どんな傾向に気づきましたか?
通常のSB BBゲーム(レーキなし100bb)
ストラドルアンティゲーム(レーキなし200bb)
ストラドルアンティゲームよりも通常のゲームのほうが明らかにアグレッション頻度が全体的に高くなっています。これは冒頭でも説明した通り、アンティやストラドルによってポットに追加されたチップが、フォールドに対するコールの価値を相対的に高めているためです。プレイヤーは通常より弱いハンドでコールするようになるため、本来であればレイズしていたようなハンドでも、コールを選ぶインセンティブが生まれます。
レイズに対してアクションするプレイヤーのポジションが良くなるほど、アグレッション頻度が低下していきます。レイズの目的のひとつは、自分の後ろにいるプレイヤーを降ろすことですが、ポジションが良くなるにつれて、後ろのプレイヤーの数が減るため、レイズするインセンティブも小さくなります。
通常のレーキありのキャッシュゲームでも、BTNでは一部のハンドでコールすることをソルバーは推奨しています。
オリジナルレイザーのポジションが後ろになるほど、アグレッション頻度は高くなります。レイトポジションのプレイヤーは、アーリーポジションのプレイヤーよりも広いレンジでオープンすべきなので、レイズしたときにモンスターハンドを持っている可能性は低くなります。
もちろんオリジナルレイザーのコールレンジや4ベットレンジもその分広くなりますが、それでも、相手のコールレンジや4ベットレンジに対して一定のエクイティはあるため、コールより3ベットを仕掛けるほうが手堅いでしょう。
EPからのコールドコール
アンティストラドルゲームでも、アーリーポジションのコールドコールはリスキーです。オリジナルレイザーは強いレンジを持っており、こちらはフォールドエクイティはありませんし、後ろのプレイヤーのオーバーコールや、スクイーズのリスクも残ります。
これらの点はレイズでも同じです。そもそもすでに誰かがレイズしている状況で、アーリーポジションは頻繁に参加するべきではありません。
もし参加するのであれば、アンティはレイズではなくコールを選ぶ強いインセンティブになります。アンティは「レイズのほうがコールより優れている」理由の反対の属性を持ちます。
- フォールドエクイティ– ポットが大きいほどフォールドエクイティの価値は高まりますが、同時にフォールドさせるのは難しくなります。アンティがあることで、オリジナルレイザーはより高い頻度でコールやリレイズを選ぶため、フォールドさせるには大きめの3ベットサイズが必要になります。
- カモフラージュ – アンティがあるため、弱めのハンドでもコールしやすくなり、後ろのプレイヤーのスクイーズのインセンティブが上がります。一部の強いハンドもあえてコールに留めて、トラップを仕掛ける選択肢が生まれます。
UTGのオープンに対するLJのレンジからも明らかです。LJはレイズの2倍の頻度でコールしており、レイズするには少し弱いハンドも一部コールに含まれています。
LJのピュアレイズはAAとAKsだけで、どちらも4ベットを受けても問題ないハンドです。AKsは、UTGの4ベットに対してオールインを被せるのに適しており、AAはフラットコールに適しています。
KKも4ベットに対してオールインでも良いですが、コールに回してトラップしても良いでしょう。というのも、KKは他のプレイヤーがスクイーズを狙いやすいAxのハンドをブロックしないからです。
後ろの多くのプレイヤーからのコールされる可能性があるため、LJはマルチウェイでも耐えられるハンドを中心にコールしています。
マルチになるほど、ショーダウンで勝つにはより強いハンドが必要になります。特に3ベットポットと比べてSPRが高いSRPでは、オールインの可能性を残すために、より強いハンドが求められます。このため、LJがUTGのレイズにコールするときは、基本的にポケットペア、スーテッドコネクター、スーテッドブロードウェイ、Axsといった、セット、ストレート、フラッシュが狙えるハンドが中心になります。
例外は、UTGのオープンレンジをドミネイトできる、最上位のオフスートとブロードウェイだけです。ドミネイトしているなら、セットやストレート、フラッシュがなくても、ポストフロップでしっかりバリューを取るプランが立てられます。トップペアができておりキッカーで勝っているなら、バリューを打ちやすく、相手から大きくポラライズしたベットを受けずに、ショーダウンまで持ち込むことができます。強いワンペアを0EVのブラフキャッチャーに変えてしまうようなシチュエーションにはなりません。
LPからのコールドコール
UTGのオープンレイズに対するBTNのレンジでも同様です。ただし、BTNはポジションが良いため、あまりレイズができないようなハンドでもコールができます。LJと比べると、後ろに残っているプレイヤーが少ないのでスクイーズされるリスクが低く、IPからスクイーズやオーバーコールされる心配もありません。ポストフロップでのポジションが保証されているので、COより遥かに広いコールレンジになります。
AAとAKsはピュアレイズでKKもほとんどレイズします。KKはスクイーズされた方が得なため、自分からバリューでレイズすることが多くなります。
BTNも他のポジションと同様にスーテッドコネクター系はレンジに入ってきますが、ポジションが良いため、64sやK5sのような弱めのハンドまでコールできます。BTNではこのようなハンドもエクイティやEQRが十分にあります。ただ、スクイーズが入って降ろされてしまえば、フロップを見られず、せっかくのオッズを活かせないリスクは残ります。
さらにBTNは、スーテッドギャッパーや、オフスートコネクターまでコールすることがあります。LJのコールレンジに含まれるオフスートのブロードウェイとは違い、BTNがQToやJToをコールするのはドミネイトしているからではありません。むしろこれらのハンドは逆にドミネイトされるリスクすらあります。それでもオープンするのは、ポジションが良いことでポットサイズをコントロールしやすく、ペアを作ったときにショーダウンまで持ち込みやすくなるためです。
これらの弱いオフスートブロードウェイをコールに回す理由は、ストレートが作れる可能性があるからです。だからこそ、BTNはJToやQToはコールしますが、KToはコールしません。KToはドミネイトされるリスクこそ低いものの、ストレートが作りにくいからです。
LPオープンへのコールドコール
プリフロップレイザーのポジションがUTGからCOに変わっても、BTNのVPIP自体は大きくは変わりません。むしろ、スーテッドの小さなワンギャッパーではコール頻度が少し下がります。それより3ベットをよりアグレッシブに打つ点に注目するべきでしょう。
強いポケットに加えて、3ベットレンジは主にAxsとオフスートのブロードウェイから構成されています。Axsはコールされてもエクイティが高く、4ベットレンジをブロックできる上、状況によっては4ベットに対しても戦えます。オフスートのブロードウェイもブロッカーとして機能しますが、先述の通り、コールよりもレイズの方が効果的です。
アグレッシブな3ベット戦略は、相手の4ベットにも粘り強く応じる形になります。
エクスプロイト
ここまで、ソルバーのコールドコールレンジがどのように構成されているかについて説明しました。次は実際のゲームでどのように応用していくべきか考えましょう。BTNでソルバーはスクイーズや4ベットのリスクをかなり意識してレンジを絞っていましたが、レイズ頻度が足りていない相手に対して、どのようにエクスプロイトしていくべきでしょうか。
EPでレイズを受けた場合、スクイーズされるリスクが大きいため、均衡上はコールドコールは好まれません。
後ろのプレイヤーがソルバーほどアグレッシブにスクイーズしてこないと踏んでいるなら、均衡上でコールとフォールドの混合戦略をとるハンドは、ピュアコールで問題ありません。特に、スーテッドコネクターはマルチウェイでもエクイティを保ちやすいのでよりコールしやすくなります。ルーズでパッシブな相手にオーバーコールされるのは大した問題ではなく、スクイーズにだけ気をつければ十分です。
LPでは、スクイーズよりも4ベットの方がリスクになります。先ほどと同様に均衡上でコールとフォールドが混ざるスーテッド系はコールで構いませんが、特にマルチウェイで扱いにくいオフスートのブロードウェイは、パッシブな相手にはコールよりも3ベットを増やした方が良いでしょう。
LPでレイズを受けた場合、4ベットされるリスクが高くなるため、均衡上は3ベットはあまり好まれません。
多くのプレイヤーが4ベット頻度が足りていないのは、4ベットハンドの選定基準が狭すぎることが原因です。つまり、ソルバーのように相手のオープンレンジに合わせて4ベットレンジを広げることができていません。その代わりに、例えばAAやKKなど強いポケットやAKといった明らかに強いハンドとA5sあたりだけを4ベットしてしまいます。こうしたハンドはEPのオープンレンジに占める割合が大きいため、結果的にEPからオープンしたときの方がLPより4ベットの頻度が高くなってしまいます。
アグレッシブなエクスプロイト寄りの3ベット戦略を取った場合、オリジナルレイザーから4ベットを返された場合は、先ほど述べた通り、無理に粘るべきではありません。そもそもこちらがアグレッシブに3ベットしているのは、相手が4ベットを絞ったタイトで強いレンジしか使わないと読んでいるからです。だから実際に4ベットが返ってきたときは、ほとんどの場合強いポケットだと考えて素直に降りるのが正解です。
もちろんこれはエクスプロイトされる可能性がありますが、それで構いません。そもそもエクスプロイト戦略とは、理論的には相手にエクスプロイトされる可能性を含んでいるものです。そして、もし相手がこちらをカウンターエクスプロイトしようとするなら、それはまさにこちらが「相手はやらない」と読んでいた動きになるわけです。
まとめ
ストラドル+アンティがあるゲームでは、レイズに対してコールドコールする戦略は欠かせない。
この点が通常のノーリミットホールデムと一番大きく異なる点です。通常のゲームでは、ほとんどのポジションで3ベット/フォールドの戦略を取っても、均衡上で大きくEVを損なうことはありません。
EPでは、そもそもポットに参加するかどうかを慎重に判断すべきですが、参加するのであれば、レイズよりもコールを選ぶ頻度を高くするべきです。ここにはレイズするには少し心許ないハンドも含めます。特に、後ろのプレイヤーがあまりスクイーズしてこないパッシブなゲームでは、この傾向がより強くなります。逆に、スクイーズが多いと予想される相手がいる場合は、KKのような強いハンドでトラップを仕掛けるのも有効です。
LPでは、スクイーズされるリスクは下がるため、フォールドに比べればコールの価値は上がりますが、それが必ずしもレイズより良いとは限りません。オリジナルレイザーのポジションが後ろになり、アグレッシブな4ベットをしてこないと踏むなら、3ベットも検討するべきです。
どのポジションでも、コールドコールに適しているのは、高いSPRやマルチウェイでも安定してプレイできるハンドです。つまり、セット・ストレート・フラッシュが狙えるハンドが中心になります。オフスートのブロードウェイは、オリジナルレイザーのレンジを大きくドミネイトできない限り、コールよりレイズで扱った方が良いでしょう。
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