ワンペアでのチェックレイズ
今回の記事では、Xのユーザーの「Matt Riley」の「キャッシュゲーム(100BB持ち)でワンペアでチェックレイズするのが適切なシナリオは何か?」という質問にお答えします。その答えには、ゲーム理論やインセンティブについての重要な洞察が含まれており、Matt以外の多くの人にも興味深い内容となると思います。
質問を送っていただき、ありがとうございます!もしあなたや友人がポーカーの戦略で気になっていることがあれば、ぜひ私たちに質問して下さい。
ワンペアでチェックレイズをしない時
まず、100BB持ちの状況でワンペアをチェックレイズすることが、キャッシュゲームとトーナメントの両方で多くの場合最適ではない理由を説明していきます。
チェックレイズはアグレッシブなアクションであり、大きなポットをプレイするためのアクションです。
チェックレイズはアグレッシブなアクションであり、大きなポットをプレイするためのアクションです。チェックレイズをする理由は2つあります。
- あなたのハンドが、ショウダウンで大きなポットを勝つポテンシャルがある
- あなたのハンドが、フォールドエクイティから恩恵を受ける
これらの理由はどちらか一方に限定されるものではなく、実際のところ、チェックレイズに最適なハンドはどちらの要素からもある程度の恩恵を受けることが多いです。
例えばオープンエンドストレートドローでチェックレイズをする場合、このハンドがすでにショウダウンで大きなポットを勝つポテンシャルがあることを示しています。このレイズの利益の大部分は、相手がフォールドすることから生まれますが、相手がフォールドしなかった場合でも、ストレートを完成させることでショウダウンで大きなポットを獲得する可能性があります。
同様にツーペアでチェックレイズをする場合、主にショウダウンで勝つことができる相手の弱いハンドに対してポットを大きくすることを目指しています。しかしこのハンドでも、ある程度のフォールドエクイティから恩恵を受けています。なぜなら、バックドアドローやまくられる可能性のある他のハンドを降ろすことができるからです。
SPRが高いほど、オールインをするためにはより強いハンドが必要です。これが、トーナメントにおいて、ワンペアのハンドでチェックレイズをする頻度が高い理由です。スタックが浅い場合、ワンペアでオールインすることが利益を生むからです。
SPRが低い場合、強いワンペアは先ほどの2つの条件をどちらも満たします。
SPRが高い場合、ワンペアがどちらの条件も満たすことは稀です。最高のワンペアのみが1つ目の条件を満たしますが、2つ目の条件を満たすことは困難です。
一方弱いペアの場合、満たす条件は逆になります。
このため、これらのハンドはレイズをするのに最適な候補ではありません。例えば、フラッシュドローやストレートドローなどは、フォールドエクイティから受けられる恩恵が大きく、さらに大きなポットを獲得できるより強いハンドに改善する可能性があるため、レイズするのにより適しています。
Mattの質問に対する簡単な答えとして、100bb持ちのキャッシュゲームでチェックレイズをするのに適した状況は以下のとおりです。
- プロフロップのアクション:SPRが低くなる3ベットや4ベットポット
- ポジション:双方のプレイヤーがレイトポジションであること。お互いのレンジが広く、強いハンドとして扱うハンドの基準が低くなる
- ボードテクスチャー:トップペアやオーバーペアがプロテクションから恩恵を受けることができる、ローカードが多いフロップ
それにもかかわらず…
ですが、ソルバーは上記の条件のいずれも満たさない状況で、時々ワンペアでチェックレイズをします。例えば、SRP UTGvsBBでQ♥7♦5♦のフロップで50%のCベットを打たれた際の、BBの反応を見てみましょう。
トップペア、セカンドペア、そしてサードペアでチェックレイズするハンドがあることに気づきましたか?一般的にはこれらのハンドはチェックレイズに適してはいませんが、チェックレイズが良い結果を生む場合がいくつかあります。例えば…
予期せぬモンスターハンド
最も分かり易いシナリオは、チェックレイズした後のターンでボードがペアになったケースです。この状況では、対戦相手はあなたがトリップスを作ったと予想するのは困難なため、時々トリップスを完成させることのインセンティブが高まります。これにより、相手が広いポラライズレンジでオーバーベットをしてくることをインディファレントな状態にします。
下のチャートでご覧いただけるように、例え時々トリップスが作れるバランスの取れたレンジだとしても、ボードがペアになるターンカードは比較的自分にとって悪いものになります。もしチェックレイズレンジにこれらのハンドが含まれていない場合、これらのターンでのEVはさらに低くなります(ですが、他の状況では高くなります)
悪いターンでのベットを誘発させる
これらのハンドには、他の目的もあります。ここでの最も悪いターンカードは、フロップのドローを改善しないオフスートのブロードウェイカードです。ターンがJ♠だった場合の戦略は、このようなターンでどのようにプレイするのかを表した典型的なもので、チェックの割合が多くなります。
あなたがチェックすると、相手はあなたの弱いレンジに対してベットし、86やT♦6♦のようなドローを降ろすことができます。そのため、相手は弱いペアをシンバリューやプロテクションのためにベットするインセンティブがあり、それらのベットにブラフを混ぜることでレンジのバランスを取ります。
リバーのバリューベット
フロップのチェックレイズとしてはやや薄かったハンドでも、ターンがチェックで回った場合、リバーがブランクカードであればトップペアでバリューベットができます。
ブラフを見つける
フロップで弱いペアをチェックレイズした場合、自分のレンジに対して有利なターンカードでブラフに変えることができます。特にこの局面では、ストレートが完成するカードのことを指します。
これらのターンカードはチェックレイズレンジの最も弱い部分を改善するため、通常ブラフを見つけることが難しいカードです。そしてこれらの弱いペアが100%ベットするということは、ブラフをすることはインディファレントではなく、必ず利益を生むということを意味しています。そして、そのブラフをする際に予想されている利益は、フロップでのチェックレイズのEVに含まれています。
どのペアを選ぶべきか
上記の例でBBがブラフをするワンペアは、54、65、97など、ターンでストレートドローになったハンドであり、これは偶然ではありません。
通常ワンペアはチェックレイズには適さないハンドのため、どのコンボで行うかを慎重に選ぶ必要があります。
BBはフロップでQxや7x、そして5xなどをチェックレイズすることがインディファレントになるほどのインセンティブを持っていることが、これまでの例から明らかになりました。ですが、これらのハンドは通常チェックレイズには適さないため、BBはどのコンボでチェックレイズを行うかを慎重に選ぶ必要があります。
冒頭で挙げた、チェックレイズをする理由を覚えていますか?BBは“ショウダウンで大きなポットを勝つポテンシャルがある”ハンドでチェックレイスすることを好み、この場合では、ストレートやフラッシュドロー、そしてすでに完成した強いハンドなどを指します。
BBがフロップでチェックレイズをする際は、通常最低でもバックドアドローが付いているハンドで行います。BBがチェックレイズするQTを見てみましょう。
Q6の場合は、ダイアモンドを好む傾向はまだ見られますが、すべてのコンボにバックドアストレートドローが付いているため、ダイアモンドが必ずしも必要というわけではありません。
さらに弱いペアである97、87、そして76などはバックドアストレートドローを持っているため、時々チェックレイズしますが、より強いキッカーを持っている場合はチェックレイズしません(T♥7♥はバックドアフラッシュドローがあるため例外です)
まとめ
ソルバーの戦略は効率的であり精確です。ソルバーの選択には必ず理由があり、多くの場合複数の理由が存在します。
最後に、これらのチェックレイズを行う価値があるのは、そのチェックレイズを行う理由を完全に理解している場合に限ることを認識しましょう。ストレートドローが完成した際にブラフをしたり、ターンがJ♠だった際にトップペアをチェックできないのであれば、そもそもフロップでチェックレイズをしない方が良いでしょう。なぜなら、チェックレイズすることの利点を活かせず、欠点だけになってしまうからです。
ワンペアは通常はチェックレイズの候補としては適していませんが、それが時々チェックレイズをする矛盾した理由となります。対戦相手はチェックレイズレンジにワンペアのハンドが含まれているとは予想していないため、実際にそれらでチェックレイズを行った場合、エクイティを過剰に実現する可能性があります。ですが、ワンペアでチェックレイズをすることのマイナス点を考慮し、そのチェックレイズを正当化するための追加の価値であるバックドアドローが最低でも必要になります。