リバーでバリューを取り逃していませんか?
オンラインポーカーの初期はプレイヤーがルースすぎる傾向にありましたが、今ではむしろタイトすぎることが多く、それが典型的なリークだと感じています。
ここ半年ほどで特によく見かけるのは、ナッツ級のハンドを持っているのにリバーでただコールしてしまうプレイヤーです。相手のレンジにほとんど含まれない強いハンドを過剰に恐れて、自分のハンドの強さを正しく評価できなくなっています。
たとえば、ストレートが見える場面でセットを持っているときや、フラッシュが見える場面でストレートを持っているときです。最近見た極端な例では、ナッツフラッシュを持っているのに、J♥9♥でストレートフラッシュができる可能性を気にしてコールにとどめたプレイヤーがいました。
ちなみにその時、私は実際にストレートフラッシュを持っていたので、大きなテルを出していたのかもしれません。ただ、それでもそのプレイヤーは大きなバリューを逃しているように見えました。
私の記事では他人のリークを指摘して専門家ぶっているように見えるかもしれませんが、実際には私自身が同じリークを抱えており、それを直すために調べてきただけです。私はプロではなく、ソルバーを使えるライターにすぎません。今回もGTO Wizardを使って、自分のリークを改善した例を紹介します。
1) ストレートやフラッシュが見えるボードでセットをレイズする
まずはこの状況について、GTOの例を見ていきましょう。
ハンド例
トーナメントで60bbのスタックで、UTGが2.3bbオープン、HJがコールドコール
- フロップ: J♥5♠2♦
UTGがポットの39%をベット、HJがコール。 - ターン: 9♥
UTGがポットの40%をベット、HJがコール。 - リバー: 3♥
このリバーでUTGはポットの67%をほぼ半分の頻度でベットします。
UTGがベットした時のHJの対応です。
HJはオールインレイズ(ポットの64%)をかなりの頻度で行います。 2ペア程度でもバリューとしてレイズし、セットやストレートは必ずレイズします。フラッシュの可能性があってもです。
これほど薄いバリューでレイズすることは直感的には逆に思えるかもしれません。「コールしてくれる弱いハンドがあるのか?」と感じる人も多いでしょう。
ですが実際には、オーバーペアなど多くのハンドがコールしてくれるのです。
たとえば、あなたがHJで99のミドルセットを持っているとします。オールインしても下のハンドがコールしてくれる可能性は少なそうに見えます。しかし、実際にはトリプルバレルしてきた相手のレンジの大部分はオーバーペアであり、その中のいくつかはコールを強いられるのです。事実、このスポットではオーバーペアだけでコールレンジの約37%を占めています。さらに2ペアやワンペアのヒーローコールも加わり、結果的にセットでのバリューオールインは十分に利益が出ます
1.1) セットでレイズしないプレイヤーをエクスプロイトする方法
では、HJがセットやそれ以下のハンドでレイズせず、常にコール止めにする場合を考えましょう。「相手は下のハンドでコールしてくれない」と考えるタイプのプレイヤーです。
ここでは部分的なノードロックを行い、セット以下はすべてコールに固定しました。それ以外のレンジはGTO Wizard AIに任せています。そのためHJはUTGがベットしたときに、依然としてブラフレイズを混ぜてきます。
この新しい条件の下で、UTGの戦略は下記のように変化します。
GTOではUTGは約52%チェックしますが、HJがレイズしない場合はチェック頻度が25%まで減少し、よりアグレッシブにベットを選択するようになります。さらに、GTOでは存在しなかったオールイン(約15%)や大きめのベットサイズが出現します。
UTGのベットサイズ別レンジ構成を見てみます。
最強クラスのハンドはオールインを選択し、強いがナッツ級ではないバリューハンド(トップペアやオーバーペアなど)は小〜中サイズのベットを選ぶ傾向があります。
ソルバーから得た大きな教訓のひとつは、相手のレイズ頻度が戦略全体を大きく左右するということです。ここではGTOが想定する頻度と比べて、実際のプレイヤーのレイズ頻度ははるかに低い傾向にあります。
67%ポットベット
まずシンバリューを積極的に取りにいけるようになります。GTOの例では多くのJxがここでチェックします。トップペアはこのようなボードでレイズされたくないため、ブラフキャッチャーとして使われます。今回のノードロックでは相手にレイズされにくいので、こうした中強度のハンドでも積極的にベットしてエクイティをしっかり実現できます。
オールイン(217%ポット)
オールインを選ぶのは、こちらが(例えばフラッシュのような)非常に強いハンドを持っていても、HJがバリューでレイズしてくれることを期待できないからです。本来であればHJがストレートやセットでレイズしてくれるのが理想的で、こちらがフラッシュならそれが最も都合の良い展開です。しかし実戦では十分にレイズしてこないので、こちらから大きくベットして取り切る必要があります。
このリークをさまざまなボードで検証した結果、共通するポイントは次の2つです。
- 全体のベット頻度が上がります(レイズされにくいため)
- ナッツ級のハンドはオーバーベットして、パッシブな相手から最大限バリューを取ります
1.2) 相手がかなりのニットの場合
多くのプレイヤーは、フラッシュが見えるときでもストレートはレイズしますが、なかにはさらにニットで、こうした場面でもストレートをコールにとどめる人がいます。ここではさらに過激な相手を想定し、HJがバリューでレイズするのはフラッシュだけと仮定します。
この条件下では、UTGのリバーでのアクションは下記のようになります。
ベット頻度はさらに増え、GTOでは半分未満だったのが、このエクスプロイト設定では約82%まで跳ね上がります。
これはパッシブなプレイを前提にしたノードロックではよく見られる傾向です。相手がニット寄りやコーリングステーションのように慎重すぎるなら、こちらはベット頻度を上げられます。より多くのバリューハンドでしっかりとエクイティを回収でき、ナッツ級のハンドはオールインして最大限のリターンを狙う必要があります。
2) ペアボードでのレイズ
ハンド例
同じくスタック60bbのトーナメント。BTNオープンにBBがコール。
- フロップ: 7♥2♦2♣
BBチェック、BTNがポットの25%をCベット、BBがコール。 - ターン: 8♥
チェックチェック。 - リバー: 9♠
このリバーで、GTOではBBは小さなベットを多用します。その時、BTNの対応は次の通りです。
このBBのベットに対するGTOでのBTNの戦略です。
BTNは全体の約17%以上の頻度でレイズを返します。 トップペアはほとんどがバリューとしてレイズされ、それ以上の強いハンドでは必ずレイズします。たとえばK9のようなトップペアでも多くの場合はレイズになります。
「K9でレイズするなんて怖い」と思う方もいるかもしれません。そこでBBのコールレンジを確認してみましょう。
実際にはすべてのトップペア、半分程度のミドルペア、さらには一部のサードペアまでがレイズにコールするため、相手のレンジに占める割合はストレートやトリップスよりもずっと多くなっています。
2.1) フルハウスを恐れるプレイヤーのエクスプロイト
同じ722のボードで、BTNがとても慎重で、トップペアやストレートでも「ボードがペアだから危ない」と考えてレイズしないケースを想定してみます。今回は、そのようなプレイヤーの性格をより正確に反映するため、バリューレイズだけでなくブラフレイズのレンジも狭めるようノードロックを行いました。ストレートでさえレイズを怖がるようなプレイヤーは、当然ブラフレイズもほとんどしないと考えられます。
この条件下でのBBのリバーでのエクスプロイト戦略は以下のように変わります。
GTOではBBは54%程度ベットしていましたが、このエクスプロイト条件では99%以上というほぼベットする戦略に変わります。 これは前の例以上に劇的な頻度の変化で、ブラフレイズのリスクがさらに少ないためです。
戦略にはGTOではあまり見られなかったオールインも組み込まれています。また、最弱クラスのハンドが小さいサイズでブラフするパターンも増加しています。
レイズされる心配がほとんどないため、トップペアやそれ以下のハンドでも小さめのベットサイズでシンバリューを狙えます。最弱ハンドでも、相手の慎重なプレイを突いて小さくブラフすれば十分に利益が出ます。一方、最強クラスのハンドはオールインでしっかりと取り切るのが最適です。
この状況では、スロープレイは機能しません。相手が強いハンドでリレイズしてくれることを期待できないため、BBは強いハンドを持ったら自分から大きくベットして最大限バリューを回収する必要があります。
まとめ
リバーで十分にバリューをレイズしてこない相手に対するエクスプロイト戦略は以下の2点に集約されます。
- シンバリューを増やす
- ナッツ級のハンドはオールインをする
(1) ワンペアのようなハンドでもシンバリューを取りにいく
普段ならチェックしてブラフキャッチャーに回すようなハンドでも、レイズのリスクが低いため積極的にバリューベットできます。
(2) ナッツ級のハンドはオールインで取り切る
本来であれば相手のレイズによってバリューを最大化できる場面でも、相手が十分にレイズしてこないなら、自分から大きくベットをして取り切る必要があります。
私は専門家ではなく、これまでGTO Wizardを使って自分のリークを修正してきただけです。もしあなたにも同じようなリークがあるなら、次のポイントを意識してみてください。
- 人間は「大きなポットを失うリスク」よりも「小さなポットを安全に確保すること」を好む傾向があります。 しかし、強いプレイヤーを目指すならその意識を改める必要があります。
- ハンドレビューをするときは、リバーでもっと積極的に打っていたらどんなハンドがコールしてくれたか、コンボ数を数えてみてください。 実際には、自分より弱いハンドもたくさん含まれているはずです。
- もし本当に「相手は自分より弱いハンドでコールしてくれない」と思うなら、それはつまりブラフのチャンスです。 たとえば「フラッシュやストレートが見えるボードではツーペアを降りるだろう」と考えるなら、あなたのブラフは非常に利益的になります。