戦略を学ばない相手の弱点を突く:キャップされたレンジとバランスの取れていないブラフ
本記事は、「GTOを学習していないプレイヤーをエクスプロイトする」シリーズの第2回です。第1回では、GTOへの理解不足が、どのようにプリフロップでのミスやベットサイズのテルにつながるのかを解説しました。
今回の続編では、よく見られる別の傾向、具体的にはキャップされたレンジやブラフ頻度のバランスが取れていない相手に対して、どのように対処すべきかを学んでいきます。この記事を読み終える頃には、状況に応じた様々なエクスプロイトができるようになり、どのエクスプロイトが最も有効かを見極められるプレイヤーに、さらに一歩近づけているはずです。
1) キャップされたレンジ
レンジとボードの関係を理解していないと、レンジが一方に大きく偏ってしまいます。このような脆弱で読まれやすいレンジに対しては、プレッシャーをかけることでより多く利益を得ることができます。本章では、キャップされたレンジをいつ、どうエクスプロイトするかを学びます。
例:SB vs BTN、3ベットポット
まずは次のスポットから見ていきましょう。BTNがオープンし、SBが3ベット、BTNがコールします。フロップは8♦5♦2♥です。以下は、このフロップにおけるSBのCベット戦略です。
SBは約半分チェックし、残りは2/3ポットと少し大きめのサイズでベットする戦略を取ります。この戦略を取る理由は、主に次の点にあります。
- SBのレンジはハイカードに大きく偏っており、このようなボードテクスチャでは多くのハンドがミスしています。
- SBのトップペアやオーバーペア(99〜QQ)は脆弱で、相手のエクイティを放棄させるメリットが多くあります。
- BTNはこのようなミドル寄りのボードテクスチャと相性が良く、小さいサイズのベットに対しては多くのハンドで抵抗することができます。
- SBはオーバーペアでアドバンテージがあり、スタックが100BBと深いため、ターンやリバーでアクションが止まる前に、フロップから積極的にポットを膨らませたいところです。
ここでSBのレンジの多くは、このボードに対してあまり絡んでいません。ボードとの相性が悪く、脆弱なハンドを守り、BTNのエクイティ実現を防ぐため、SBはチェックと大きめのベットを混ぜます。チェックレンジが弱くなりすぎないよう、AAやKKといった比較的堅牢なオーバーペアを中心に、オーバーペア全体の約30%をチェックに回します。
しかし実戦では、ローステークス~ミドルステークスの多くのプレイヤーは、フロップでオーバーペアを十分な頻度でチェックできていません。こうしたバランスを取れていない箇所を見つけたら、BTNは積極的にエクスプロイトする必要があります。ここでは、どこまでGTOから離れたエクスプロイトが有効なのかを示すため、SBがオーバーペアを常にベットするシナリオをノードロックして見ていきます。
BTN vs SBのチェック
SB vs BTNのスタブ
GTOでは、BTNは25%ポットの小さいサイズで、約55%の頻度でスタブをします(スタブ:OOPのアグレッサーがチェックした後に、IPがベットすること)。しかし、SBがオーバーペアを100%ベットするとノードロックすると、BTNの戦略は大きく変化し、レンジの100%でスタブをするようになります。この状況では、IPはキャップされたSBのチェックレンジに強くプレッシャーをかけられます。シンバリューでベットしながら、より多くのエクイティを否定できるようになります。
SBのチェックレンジから強いハンドが抜けているため、BTNのレンジ全体のエクイティが上がります。その結果、SBのフォールド頻度が上がり、レイズ頻度が下がるため、BTNは通常より多くのエクイティを実現できます。この例は、相手のレンジがキャップされている場合に、どう調整すべきかを示しています。
キャップされたレンジをいつ・どのように・なぜ攻めるのか、そしてフロップでのキャップがその後の判断にどう影響するのか、理解をさらに深めるため、2つ目のスポットに移ります。今回はUTGがオープンし、BBがコールした場面です。フロップは6♣4♦2♣です。
例:BB vs UTG、SRP
ここではUTGはレンジの約50%をチェックします。このボードは、BBのプリフロップ・コールレンジと非常に絡んでいます。UTGのレンジ、特にブロードウェイ寄りのハンドはこのボードで大きくミスしており、BBがナッツアドバンテージを持っています。その結果、UTGは小さめのCベットを選択し、チェックを多めに混ぜる戦略を取ります。
オーバーペアも同様です。UTGはチェックレンジを弱くしすぎないよう、オーバーペアの約40%をチェックする必要があります。
しかし実際には、特にGTOを学んでいないプレイヤーの多くは、このようなスポットでオーバーペアをどのくらいチェックすべきか理解していません。相手がオーバーペアをチェックしない場合、ターンでのプローブ戦略をどう調整すべきでしょうか。2つのシナリオで見ていきましょう。
明確な違いが見て取れます。
- 全体のベット頻度が約40%も増加しています。
- 大きなオーバーベットの頻度が2倍以上に増えています。
- 7xは、ミドルサイズまでサイズアップしてベットするようになります。
- すべてのハンドクラスでバリューベットの境界が下がり、6xやTxはミドルサイズでバリューを取れるようになり、AT、JJ、QQといったハンドは問題なくオーバーベットできます。
レンジ全体のエクイティが底上げされます。
- 役のあるハンドは1-10%
- ドローやエアーは1-5%
→ レンジ全体のエクイティは約6%上昇します。
このエクイティはどこから来ているのでしょうか。相手のチェックレンジからオーバーペアが抜けているため、エクイティが大きく低下しています。これにより、相手はGTOと比べてフォールド頻度が上がり、レイズ頻度が下がります。その結果、エクイティをより多く実現しつつ、同時に相手のエクイティをより多く否定できるようになります。
しかし、このエクスプロイトはターンで終わりません。リバーに進んでも、IPのレンジは弱いままです。ここでは、ターンで71%ポットをベットした後、リバーで4つの異なるベットサイズを使った場合に、各ハンドクラスがどう変化するのかを見ていきましょう。
ターンと同じ傾向がリバーでも見られます。シンバリューとブラフのどちらもベット頻度が上がっており、バリューベットの境界が下がっています。
比較:GTO → エクスプロイト
- 6xや9x:主にチェック → ブロックベットが可能に
- 弱いTx:チェック → ブロックベット
- 強いTx:ブロックベット → 75%ポットでベット
ツーペア以上の強いハンドは、GTOでもJJ〜AAに勝っているため、戦略はそれほど変わりません。
ここで重要なのは、相手が強いハンドを欠いている場合、より弱いハンドで対応せざるを得なくなることです。ただし、相手がオーバーフォールドする場合は調整します。ブラフを増やし、シンバリューベットは減らします。
ゲームツリー序盤のミスは、後のストリートの戦略に影響を与えます。さまざまなラインでバランスが取れていないことは、ローステークスからミドルステークスのプレイヤー、特にGTOを学んでいない層によく見られるミスです。
キャップされたレンジに対しては、サイズを上げベット頻度を増やすことでアグレッションを高め、各サイズでシンバリューを広く取ることが、ウィンレートの向上につながります。
2) バランスの取れていないブラフ
GTOでは、ベットレンジのバランスが取れており、ブラフとバリューハンドの比率によって、ピュアブラフキャッチャーはコールしてもフォールドしても期待値が変わりません。ピュアブラフキャッチャーは利益も損失も出さず、0EVになります。
しかし実戦では、完全なバランスを維持するのは難しく、特にGTOを学んでいないプレイヤーは、このバランスから大きく外れがちです。バランスが崩れる方向は2つあります。ブラフが少なすぎるか、多すぎるかです。その結果、ピュアブラフキャッチャーは、損をし続ける(-EV)か、稼げる(+EV)状態になります。
ここからは、プレイヤーがアンバランスになりやすく、エクスプロイトの絶好の機会となる2つのスポットを見ていきましょう。
2.1) オーバーブラフになるスポット
まず、ブラフ過多になるスポットを見ていきましょう。BTNがSBの3ベットをコール、フロップはT♣9♦2♣で、SBが50%ポットのCベットをします。ターンは3♠で、SBはさらに50%ポットをベットし、プレッシャーをかけ続けます。リバーは2♥で、ブリック(ハンドの強さがあまり変わらないカード)です。
この時点でSBには、ナチュラルブラフ(滑ったドロー)が大量に残っています。しかし、バリューハンドが限られているため、バランスを保つにはそれらをすべてブラフに使うわけにはいきません。理論上、OOPはこれらのハンドのかなりの割合を諦める必要があります。
見ての通り、SBはエアーの約4分の3を諦めています。バリューに比べてエアーがどれほど多いかを理解していないプレイヤーは、十分に諦めることができず、ここでブラフ過多になってしまいます。
ヒント:ブラフ過多スポットの見分け方
次のような状況に注目しましょう。
- フロップやターンでドローを自然にブラフに使え、多くが外れるため、リバーでナチュラルブラフが大量に残る状況
- そのラインでのバリューとなるハンドが少ない状況
- ブラフに対して多くのバリューが必要な大きめのベットサイズが使われている状況
たとえば、リバーで50%ポットのベットされた場合、オッズは3:1です。つまり、バランスを取るにはバリュー75%、ブラフ25%である必要があります。
相手が十分にブラフ候補を諦めていない場合、こちらのピュアなブラフキャッチャーは0EVから+EVに変わります。もちろん、これらのスポットですべての相手がブラフ過多になるわけではありません。
ブラフ過多の相手を見極めるには、ショウダウンになったハンドをしっかりと観察しましょう。本来諦めるべきスポットで繰り返しブラフを見せるプレイヤーは、ブラフ過多の強いサインです。この傾向を把握したら、その相手にはブラフキャッチ頻度を上げて調整しましょう。
GTOを学ぶことで、ブラフ過多になっているスポットをすぐさま見抜き、エクスプロイトできるようになります。この戦略についてさらに学びたい方は、Sotosの「Calling Down Over-Bluffed Lines in Lower Limits」がおすすめです!
2.2) ブラフ不足のスポット
ブラフキャッチはバリューを生むこともあれば、バリューを失うこともあります。典型的なブラフ不足のスポットを見ていきましょう。
BTNがCOのオープンに3ベットし、A♦K♦4♠のフロップで小さめのレンジベット、ターンでフラッシュが完成するQ♦が落ちて2/3ポットのベットします。ブリックの2がリバーに落ちたとき、BTNは弱いペアをどう扱うべきでしょうか。
この状況では、BTNにはナチュラルブラフがほとんどなく、ミスしたドローも非常に限られています。そのため、BTNはターンから意図的にブラフを作る必要があります。ソルバーは、ブロッカー効果の高いローペアをブラフに使います。
BTNのリバー戦略を見ると、サードペアやボトムペアは40%以上ブラフに使っており、特にダイヤ持ちでフラッシュをブロックするコンボが優先されます。
しかし実戦では、多くのプレイヤーはこうした弱いペアでショウダウンバリューにこだわってしまいます。このブラフができないことで、ブラフが不足してしまいます。
ナチュラルブラフが少ないスポットでは、GTO戦略はバランスを保つために弱いペアをブラフに回します。
リバーディフェンスの原則
リバーでベットされた際、自分のハンドの強さやブロッカーだけを見ないようにしましょう。それらを考える前に、まず次のことを思い浮かべてください。
「ブラフキャッチャーが損をしないためには、どのブラフが必要か。そして相手はそれらを十分に見つけられているか?」
多くの相手に対して、答えは「十分にない」です。ナチュラルブラフが尽きたときにペアをブラフに使うべきことを理解していないプレイヤーは多くいます。
ここでも、ショウダウンに注目しましょう。相手がブラフに使えそうなハンドを頻繁にチェックしているなら、それはブラフが不足しているサインであり、フォールド頻度を上げて調整してください。
GTOを知らない相手の攻略法
相手が理論から外れたミスをしたら、それを突くように戦略を調整する。これは当たり前に聞こえますが、一見シンプルな戦略でも、実際に効果的に実行するのは別問題です。
GTOを知らないプレイヤーは理論から大きく外れていることが多く、エクスプロイトのチャンスです。ただし、外れ方は一通りではありません。相手がどう逸脱しているかを見抜き、それに応じた戦略を立てることでEVを最大化できます。
これはプリフロップだけでなく、すべての場面に当てはまります。GTOから外れたプレイヤーをエクスプロイトする手順は、次の3ステップです。
- GTOならどうプレイするか? をまず考える
- 相手の戦略はGTOとどう違うか? を特定する
- 相手のミスをどうエクスプロイトするか? を決める
ただし、この手順を正しく実行するには、押さえるべき前提が2つあります。
- 理論をしっかり理解していること ― 相手のミスに気づけなければ意味がありません。正解を知らなければ、間違いもわかりません。だからソルバー学習が重要です。理論的に正しい戦略を学ぶことで、GTOからの逸脱を見抜くだけでなく、予測する力も身につきます。
- 適切なエクスプロイトを組み立てる力 ― 相手のミスを理解し、そのタイプまで把握することは重要ですが、それだけではEVは増えません。EVを最大化するには、適切なエクスプロイトを設計する力も必要です。実際に利益を生むのは、その調整だからです。GTO Wizard AIのノードロック機能を使えば、このスキルを鍛えられます。相手のアンバランスな戦略をソルバーに入力すれば、EVを最大化するエクスプロイト戦略を示してくれます。
これは短期的な利益だけではありません。エクスプロイトへの理解が深まれば適応力が上がり、変化し続ける環境でも勝ち続けられます。この調整力こそが、ただのレギュラーとトッププレイヤーを分ける決定的な差です。
まとめ
最後に、重要なポイントを整理して確認しましょう。
- 多くのローステークス・ミドルステークスのプレイヤーはGTOを学んでいないため、ミスを犯し続けています。しっかり学べば、自分が同じミスを避けられるだけでなく、相手のリークを見抜き、的確なエクスプロイト戦略を立てられるようになります。
- キャップされたレンジとは、相手が強いハンドを一切持っていない状態です。これに気づいたら、シンバリューやブラフを増やし、ベット・レイズ頻度を上げて攻めましょう。さらにベットサイズを上げることでも、各ハンドクラスで利益を増やせます。
- 実戦では、ピュアブラフキャッチャーでのコールはプラスかマイナスかのどちらかです。人間が完璧にバランスを取ることはないからです。相手がブラフ過多になっている場合(滑ったドローを諦めない場合など)、ブラフキャッチャーは利益的になります。逆にブラフ過小の場合(ブラフを見つけられていない場合など)、ブラフキャッチャーはEVマイナスになります。相手の傾向に応じて調整しましょう。
- エクスプロイトは次の3つの問いから始まります。GTOの基準は何か? 相手はどう逸脱しているか? 最も+EVな対応は何か?
- GTOを学べば、相手のミスを見抜き、エクスプロイトする力が身につきます。ノードロックのようなソルバー機能を使えば、よくあるリークをシミュレーションし、EVを最大化する調整を確認できます。

















