3ベッターが不利なフロップでの立ち回り方
次のような状況をイメージしてください。NL500、6maxのキャッシュゲームをプレイしていて、いくつかポットを獲得し、現在スタックは150BBあります。BBでハンドを確認すると、K♣Q♣でした。COがレイズし、他はフォールド。12BBに3ベットします。相手は3ベットにフラットコールし、フロップに進みます。
フロップは854rです。
- バックドアのクラブフラッシュドローはありません。
- バックドアストレートドローもありません。
- 強いハンドもレンジになく、プリフロップで相手がコールしたハンドにかなり絡んでいます。
どうプレイすべきでしょうか?GTO Wizardで確認してみましょう!
ボードとレンジの関係
感覚的に、多くの人は「Tハイ以下のフロップはアグレッサーではなく、ディフェンダー側に有利なフロップである」と理解しているかと思います。相手はプリフロップで4ベットせずにコールしているので、ビッグカードのフロップはBB側に有利で、逆に3ベットレンジにあまり含まれていないミドルカード中心のフロップは不利になります。
集合分析のフロップレポートでは、フロップをスーテッドかどうか、どれくらいコネクトしているか、あるいは今回のようにハイカードのランクで分類してEVを確認することができます。この例では、BB側のEVが低いフロップから高いフロップへ並べ替えて表示しています。
ブロードウェイカードがない場合、3ベット側に多く含まれているAKのようなハンドは完全にミスしています。さらにこのフロップはCOがプリフロップでコールした多くのハンドが絡んでいます。
COはBBより高い頻度でセットを持っており、77〜66といったミドルポケットも多く持っています。また、87sのようなスーテッドコネクターはペアやドローがあり、76sにいたってはストレートを完成させています。
「Ranges View」を見ると、OOPはKK+やAKを多く含んでいる一方で、IPはミドルポケットやスーテッドコネクターを多く含んでいます。AQsやJTsのようなスーテッドブロードウェイは両者に同じ割合で含まれています。
総合的に見ると、8♥5♦4♠はCO側のレンジには非常に強く絡む一方、BB側のレンジとはほとんど絡みません。実際、エクイティもEVもCO側の方が上です。さらにCOは、セットやストレート、そして54sのボトムツーペアといったナッツ級のハンドを多く持っています。
レンジをエクイティごとの「バケツ」で分類してみると、COは90%以上のエクイティを持つナッツ級ハンド(88、55、44、76sなど)を多く含んでいます。 一方BB側は70〜90%付近では有利で、QQ〜AA、54sがそれに該当します。そのためBBは、オーバーペアを中心としたバリュー群で、ポラライズしたベット戦略を取ります。
とはいえ、ミスしたハンドを全部チェックフォールドするわけではありません。別のフロップと比較しながら、それらのハンドをどうプレイすべきか探っていきましょう。
ベット/チェック頻度
KJ3rのようなフロップでは、3ベット側はオーバーペアによるナッツアドバンテージを持つため、ポラライズ戦略を取りやすい状況です。リバーでオールインができるように、SPRから逆算したジオメトリックベットサイズを使用します。このようにKJ3のボードでは、こちらが相手に対して明確なナッツアドバンテージとエクイティアドバンテージを持っているため、OOPであってもレンジ全体でベットして問題ない状況になります。
しかし854rでは、BB側はナッツアドバンテージもエクイティアドバンテージも失っているため、チェック頻度を大きく増やす必要があります。
この違いは、3ベッター側が一切チェックをしないKJ3rのようなフロップと比較すると、より明確になります。
フロップでのCB
854rでのGTO Wizardのソリューションを見ると、フロップではレンジをベットとチェックに分割し、レンジベットはしていません。
約64%でチェックし、ベットする場合はポットの75%という大きめのサイズを使います。スタックが150BBの際は、リバーでオールインできるように、フロップの段階からやや大きめにベットする必要があります。プリフロップでオーバーペアやAKを多く含んでいるからといって、どんなフロップでもハーフポットで全レンジCBして良い、と思いがちですが、データを見ると実際は違います。
次に見るべきポイントは、スーテッドハンドをどう扱うかです。今回はK♣Q♣を例に見ていきます。
スーテッドハンドの4分の3はバックドアフラッシュドローがありますが、K♣Q♣のようにそれがない場合は、かなりパッシブにプレイする必要があります。チャートを比較すると、K♦Q♦とK♣Q♣では後者のベット頻度が大きく下がっていることが分かります。K♣Q♣はナッツ級になるバックドアフラッシュがなく、さらに相手に持っていてほしいハンドをブロックしてしまいます。
また、K♣Q♣の「Trash Removal Score(ゴミハンドを除くスコア)」は8です。例えば、相手がQ♣J♣やK♣T♣を持っている場合、こちらがCBするとフォールドしてしまいます。Trash Removal Scoreが高いということは、相手レンジ内の“弱いハンド”を多くブロックしてしまっているという意味です。ブラフを打つときは、相手がフォールドしてくれる弱いハンドを多く持っていてほしいため、こうした性質はブラフとして使うにはあまり望ましくありません。
次にオフスートハンドについてみてみましょう。
バックドアフラッシュドローがある何も役がないハンドだけでベットすべきでしょうか?
実際、KQoは毎回チェック→フォールドになりますが、一方でQ♠J♠はバックドアの可能性があるためブラフ候補になります。
ここで854rのエクイティ分布を見てみましょう。
バリューハンドに注目すると、JJがベットを選びやすい境界ラインになっています。86s・A8s・77といったミドルクラスは混合戦略が多く、ベットとチェックが半々になっています。
また、QQのような高エクイティのハンドは特にベットしたいハンドです。というのも多くのターンカード(オーバーカードやストレートが完成しやすいカードなど)がQQにとって不利になるため、早い段階でベットする方が良いからです。
フロップでのチェック
このフロップではナッツアドバンテージもエクイティアドバンテージも失っているものの、オーバーペアといったグッドハンドはBB側が多く持っています。
そのためCB頻度は低くなりますが、チェックコールレンジ・チェックレイズレンジを強くしておく必要があります。
BBがチェックすると、COは60%ほどの頻度で20%ポットまたは33%ポットの小さいスタブ(OOPのアグレッサーのチェックに対し、IPからベットすること)を使います。
COはなぜチェックに対して小さいサイズだけを使ってスタブするのでしょうか?
その理由は、AQoやKTsのようなそこそこ強いハンドをフォールドさせるのに最もリスクとリターンのバランスが良いサイズだからです。さらに、3ベット側が好む強ハンドであるAKoですらフォールドとコールのインディファレントになります。
COはナッツアドバンテージを持ってはいますが、大きいベットを打たなくてもBB側の多くのハンドをフォールドに追い込めます。そしてこれらのハンドにエクイティをただで実現させないためにも、COがベットすることは重要です。
20%ポットのベットに対して、BBは22%でチェックレイズし、52%でコールし、25%でフォールドします。
33%ポットのベットに対して、25%でチェックレイズ、36%でコール、38%でフォールドします。小さいベットに対してはポットオッズの観点から、より多くのハンドでディフェンスできます。
クラブのスートで絞り込むと、クラブのハンドはボードに絡んでいないものはフォールドとなり、KTsはフォールド、K6sはディフェンスします。
BBがチェックし、COの小さいスタブに対する戦略をまとめます。
BBは約20%でチェックレイズします。
バリューはQQ〜AAのオーバーペアや87s・86sの強いペア+ドローです。ブラフはKQsのような強いスーテッドブロードウェイ、A7s・K6sなどのガッツショットが中心です。ここで重要な傾向は、ブラフ候補として優れているのは「ショーダウンバリューは弱いが、後のストリートで強いハンドになる可能性があるハンド」であるということです。
BBは約40〜50%の頻度でチェックコールします。
チェックコールに回しやすいハンドとしては、まず99やTTのようにバリューでチェックレイズするほど強くはないポケットペアがあります。またAQsやAJsのように一定のショーダウンバリューを持つハンド、そしてA4sや65sのように弱いペアながらショーダウンバリューがあるハンドも、チェックコールする形になります。
一方、これらのどちらにも当てはまらないハンドはチェックフォールドになります。
たとえばK♣Q♣や、多くのオフスートブロードウェイ、そしてAQoなどがこれに該当しますAKoは20%ポットのベットにはコールできますが、COが33%サイズを使うとフォールドし始めます。さらにAKsを除くクラブのスーテッドハンドの多くはチェックフォールドとなります。
まとめ
今回の主なポイントは次のとおりです。
- BBの3ベッターはどのフロップでも全レンジでCBできるわけではありません。
- 自分が不利な状況であることを認識し、ディフェンシブにプレイする必要があります。
- こういったボードでベットする場合は、後のストリートで強くなる可能性のあるハンドを使い、大きめのサイズでベットします。
- チェックレンジは、バリューと強いバックドアドローを交ぜて守らなければなりません。
- COの小さいスタブに対しては、多くのエアーはフォールドになりますが、ショーダウンバリューがあるハンドはチェックコールし、フロップのCBレンジと似たポラライズした構成でアグレッシブチェックレイズします。
- 不利なフロップでは、バックドアの見込みもなく強くなる可能性のないハンドは、シンプルにチェックフォールドすることが多いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。フロップ戦略は広く複雑で、混合戦略となる場面も多いため、常に全体像を踏まえて理解することが大切です。今回の分析では、フロップのCB戦略の組み立て方や、K♠Q♠やK♣6♣がK♣Q♣よりブラフとして適していることなど、多くの場面で役立つ学びとなったはずです。


















