オーバーコールとは、あるプレイヤーがベットやレイズにコールした後にさらにコールすることを意味します。
オープンに対して、他のプレイヤーがコールした際は、広くコールするのか、タイトにコールするのかどちらが良いでしょうか?
ポットオッズに関するよくある間違いの1つとして、弱いハンドでもコールした方がよいというのがあります。確かにコールする際のオッズはよくなっていますが、マルチウェイでは勝つのが難しくなるため、より高いオッズが必要となります。例えば、3人を相手にした時の8:1のオッズよりも、1人を相手にした時の4:1のオッズの方がオッズは悪いものの、プレイしやすくなります。
3人を相手にした時の8:1のオッズよりも、1人を相手にした時の4:1のオッズの方がオッズは悪いものの、プレイしやすくなります。
コールするプレイヤーが多ければ多いほどBBのオッズはよくなります。例えば、アンティなしのゲームでBTNが2bbオープンに対してコールする時は、3.5:2のオッズで、コールするには約36%のエクイティを実現する必要があります(後ろのプレイヤーによるリスクは考慮しない)。コールしているプレイヤーがもう1人いる場合、BTNは5.5:2のオッズとなり、約27%のエクイティを実現する必要があります。
同じサイズのレイズに対して、BBは3.5:1のオッズで、22%のエクイティを実現する必要があります。コールしているプレイヤーがもう1人いる場合は、5.5:1のオッズとなり、15%のエクイティが必要となります。BTNがコールすると、BBは良いオッズでコールすることができます。これは、より多くのプレイヤーが参加すればするほど、BBがすでに支払っているブラインドの価値が高まるからです。
しかし、この効果があったとしても、マルチウェイでのコールはヘッズアップに比べて広くなりません。BBが広くコールすると、他のIPのプレイヤーが有利になってしまいます。これはスタックの深さに関わらず、またポットを争う他のプレイヤーのポジションに関わらず当てはまります。
オーバーコールに関する分析
次のグラフはUTGのレイズにコールしたプレイヤーがいない時(ヘッズアップ)、BTNがコールした時(マルチウェイ、相手は2人)、BTNとSBがコールした時(相手は3人)におけるBBの3つの戦略を示しています。どのスタックサイズでも、コールする人が増えるほどBBのフォールドは増え、コールは減っています。
レイズのサイズが同じではないため、比較は正確ではないものの、BBはスタックが浅いほどコール頻度が少し上がっています。これは、OOPであることが不利になりづらいことが要因に思えますが、UTGのレイズサイズが小さくなっていることが主な要因です。
他のプレイヤーがレイズにコールした場合、BBは3ベットやオールインをすることが多くなります。相手が1人増えることで、BBがすぐにポットを獲得する可能性は低くなりますが、それでも1人の相手(強いハンドが少ない、コールしたプレイヤー)をフォールドさせ、彼らの既に入れたチップを無駄にさせることで、フォールドエクイティから利益を得ることができます。
最初のレイズがレイトポジションから行われた場合も同じパターンが見られます。BBのコール頻度は減少し、フォールド頻度とレイズ頻度は上昇しています。
フォールドするハンドは?
30bbのスタックの際のUTGレイズに対するBBの戦略と、UTGレイズ+BTNコールに対するBBの戦略を比較します。
BBがコールではなくフォールドするようになったハンドは、A2o、Q7o、弱いKxoなどのオフスーツで強い役を作りにくいハンドです。ストレートやフラッシュを作りにくいこれらのハンドは、マルチウェイでは特に不利になります。ヘッズアップでは、Qや7のペアを作って勝つ可能性がありますが、これらの中途半端なペアはマルチウェイでは不利で、ショーダウンに持ち込むのが難しくなります。これらのハンドはマルチウェイではエクイティとEQRが悪くなるため、BBはオッズが良くてもフォールドします。
いくつかのハンドはオッズがよくなったことによりコールするようになっています。74o、63o、52o、42oはヘッズアップではフォールドしていますが、BTNがコールした場合、コールするようになります。Q7oやK4oがフォールドであるのに対し、74oをコールしているのは、マルチウェイでは中途半端なハンドで役を作ることよりも、とても強い役を作る可能性がある方に価値があるからです。
SBがUTGのレイズにコールした場合、これらのハンドのうちストレートを作りにくい74o、85oはフォールドしますが、最も大きな変化はBBがフォールドするようになった微妙な強さのハンドです。
BBが多くコールするようになるのは、ストレートかフラッシュを作る可能性があるハンドだけです。
Aのペアを作れたとしてもキッカーが弱ければ大した価値はありません。A9oを除いて、このシナリオでBBが多くコールするハンドはすべてストレートかフラッシュを作る可能性があるものです。Ax以外の部分ではどのシナリオでもBBのコールレンジは似た形になっています。
参加しているプレイヤーが多ければ多いほど、より強いハンドが必要になります。低いストレートやフラッシュを作れたとしても十分な強さがあるとは限りません。
BTNとSBは、COのレイズに対して強いAxを3ベットする頻度があるので、例えばA7oでBBがドミネイトされる可能性は少なくなります。これらのプレイヤーのレンジにはスーテッドコネクターが多いので、下のストレートになる42o、32o、さらにはA3oやA2oはフォールドします。アーリーポジションのレイズと違い、レイトポジションのレイズに対しては、スーテッドハンドをフォールドすることもあります。
参加しているプレイヤーが多ければ多いほど、より強いハンドが必要になります。低いストレートやフラッシュを作れたとしても十分な強さがあるとは限りません。BBがヘッズアップに比べてマルチウェイで多くコールするハンドは、ポットオッズではなく、複数の相手に対して勝てる見込みがあるかどうかです。エフィエクティブスタックが深ければ深いほどこの傾向は顕著になります。100bbのスタックでは、BBのポジションの不利さがより一層顕著になり、K9o、Q9o、Axoのようなオフスーツでストレートが作りにくいハンドはよりフォールドするようになります。
どのハンドでレイズするのか?
かなり深いスタックの際のヘッズアップでは、特にEPのオープンに対してBBが3ベットすることは少なくなります。OOPからポットを大きくするのはあまり良いことではなく、AQsやAKoのような強いハンドでもコールすることがあります。BBが3ベットする場合、ややポラライズしたレンジで行います。4ベットされるリスクよりも、それなりに強いハンドでコールされることの方がBBは嫌がります。オールインの選択肢もありますが、もし相手がフォールドしたとしても、小さなポットを獲得するだけなのでリスクと見合わないでしょう。
下記の図は、50bbのスタックの際のUTGレイズに対するBBの戦略です。
BTNがコールした場合、BBの戦略はよりリニアな3ベットレンジになります。スーテッドコネクターやAxsを3ベットすることはなくなり、強いハンドで3ベットするようになります。
SBからのコールがあると、この効果はさらに顕著になります。ポットがそれなりに大きくなり、BTNとSBのレンジがかなりキャップされているため、50bbのオールインをすることがあります。(以下のスポットは完全には収束していないことに注意してください)。
BBのとても強いハンドはオールインをしません。強いポケットやキッカーが強いAxsは小さい3ベットをして、より多くのアクションを相手から引き出します。むしろ中位のポケットペアやブロードウェイのオフスーツのように、フォールドエクイティを重視するハンドは、小さい3ベットにコールされた時にプレイするのが難しくなってしまうためオールインをしています。
ポットが大きくなると、相手は弱いハンドでコールするようになりますが、BBがより広いバリューレンジで3ベットする主な理由は違います。スクイーズすると、フォールドエクイティを獲得することができるため、スクイーズにコールしたプレイヤーとBB、両者が+EVになることが多く、これがスクイーズする主な理由です。リミットゲームをプレイするプレイヤー、特にスプリットポットゲームをプレイするプレイヤーはこの現象によく遭遇するでしょう。
スクイーズした際にフォールドエクイティを獲得できるので、コールされた時のエクイティはそれほど必要ありません。
UTGからのレイズに対して、BBのAQsはコール時のEVが2.39bb、レイズ時のEVが2.25bbなので、常にコールを選択します。BTNがコールした場合、コールのEVは2.25bbに下がり、3ベットのEVは変わらないので、BBはレイズとコール、両方のアクションをします。BTNとSBコールした場合、BBのコールのEVは再び下がり、2.15bbとなります。
しかし、3ベットのEVは3.21bbに上昇します。このように、UTGのオープンに対して、レイズしなかったハンドが他のプレイヤー2人がコールした後は、UTGのレンジが何も変わっていないにもかかわらず、レイズによるフォールドエクイティを獲得できるメリットが大きくなり、レイズするようになります。BTNとSBのエクイティを奪っており、BTNとSBのコールレンジにはAQsより強いハンドはほとんどありません。
レイトポジションでのレイズへの対応
ヘッズアップでのBBのポラライズした3ベット戦略は、COに対してより顕著に現れます。
UTGからのレイズにBTNがコールすると、BBの3ベットレンジはリニアになります。
ヘッズアップの時と比べて、BBの「ライト」3ベットは少なくなり、弱いハンドはコールするようになります。
上記の2つのパターンを比較すると、BBのレンジに2つの違いが見られます。
- バリューレンジが広がる。99やATsように、UTGオープンに対してレイズするには弱いハンドは、COの広いレンジに対しては3ベットしてもより良いパフォーマンスを発揮します
- オールインが増える。COとBTNのレンジは広く、弱いので、BBはスーテッドブロードウェイで50bbのオールインをするようになります。これらのハンドは相手の強いハンドに対してもそれなりのエクイティがあり、利益的なプレイとなります。相手が非常に強いハンドでしかコールしない場合、エクイティは低くなりますが、ショーダウンをせずに、より多くのポットを獲得できます。相手が広いレンジでコールしてきた場合、フォールドエクイティは低くなりますが、コールされた時のエクイティは高くなります。
この傾向はSBがコールした場合にも起こります。オールインが増え、スクイーズするハンドの強さの基準が低くなります。
まとめ
ヘッズアップの時と比べて、マルチウェイでは勝つのが難しくなります。複数の相手をフォールドさせることは難しく、ショーダウンで勝たなければいけない状況がよく起こります。また、複数人参加しているため、ショーダウンで勝つハンドは強くなります。
さらに、ヘッズアップと比べマルチウェイではOOPはより不利になります。
以上のことから、BBが複数のプレイヤーを相手にした場合、主にオフスーツでストレートが作りにくいハンドのEQRは低くなります。ポットオッズは良くなっていますが、BBは相手が多ければ多いほどフォールド頻度が上昇します。
コールするプレイヤーが増えると、コールするよりも3ベットをするようになります。3ベットレンジにブラフはなく、主に強いハンド(「強い」というのは最初にレイズしたプレイヤーに対する相対的な意味)であり、フォールドさせることで彼らの既にポットに入れたチップを無駄にし、ヘッズアップでプレイしようとします。