OOPからプレイするのは難しいですが、特にトーナメントではそのような場面に多く遭遇します。アンティがあるため、プロフロップでの小さなレイズに対して簡単にブラインドを手放すわけにはいきません。スタックが少ない時、ソルバーはレイトポジションからのレイズに対してスモールペアやオフスーツのAxのようなハンドはコールするよりもオールインすることが多くあります。
しかし、これはスタックが浅い時でも一概には言えません。例えば、スタックサイズが20bbの際のBTNのミニレイズに対するBBの戦略を見てみます。
キッカーが強くないスーテッドのAxはすべてコールしています。スタックがさらに小さくなった場合も同様で、14bbのスタックの際もスーテッドのAxはコールすることが多くなっています。
ソルバーがオールインをしないのは、オールインが良くないアクションというわけではなく、コールの方が得だからです。
このスタックサイズであれば、これらのAxでオールインしても+EVとなります。ソルバーがオールインをしないのはそれが+EVではないということではなく、コールの方がEVが高いからです。直感に反するコールと同様に、ソルバーが後のストリートでどのようにEVを獲得しているかを理解することが重要です。
主に以下の2つからEVを獲得しています。
- BTNのレンジに対して強いハンドをコールしておくことで、両プレイヤーがペアになった時、より多く勝つことができる。
- Aが出た時にブラフや薄いバリューベットを誘うことができる。
このコールは正しいのか
ソルバーの戦略を理解するのが難しかった時は、それぞれのアクションのEVを確認するのがよいでしょう。混合戦略となっているアクションは、相手の反応によって大きく変化します。また、純粋戦略であっても他のアクションとEVが非常に近くなることがあり、そのような場合、相手のわずかなズレによって、ソルバーが均衡時に決して使わないアクションの方がEVが高くなることがあります。
例えば20bbのスタックの際、BTNのレイズに対して、GTO WizardでのBBのアクションは、コールと小さい3ベットを混ぜていますが、オールインでもEVはほぼ同じになることがあります。
以下の状況では、複雑なソルバー戦略を使用するよりも常にオフスーツのAxはオールインするという単純な戦略にした方がプレイしやすくなるでしょう。
しかし、スーテッドのAxの場合はEVがそれほど近くありません。
エクイティの実現
オフスーツのAxの問題点は、広いオープンレンジに対してエクイティがあるにもかかわらず、そのエクイティを実現しにくいことです。多くの場合、ペアを作ることができず、BTNからの小さなCベットにエクイティを削られてしまいます。
スーテッドのAxは、相手のフラッシュを上回って勝つこともありますが、その価値を最大限に発揮するのは、スタックが深い場合です。バックドア・フラッシュドローがフロップであることがスーテッドのAxの価値であり、これらのハンドは小さなCベットをコールするのに十分な強さであり、オフスーツよりもエクイティを実現することができます。
J♠ 7♦ 2♣ のフロップで、33%ポットサイズのCベットをされた時のBBの戦略を見てみます。
バックドアフラッシュドローはすべて+EVとなっており、ビッグブラインドの半分近くを獲得することができます。バックドアを持たないA6sは、エクイティが40%近くあるにもかかわらず、フォールドしています。
ドミネイト
スタックが20bbの際、BTNのオープンレンジはややポラライズされており、スタックが浅くなるにつれてその傾向が強くなります。これは、BTNが小さい数字のポケットペア、スーテッドブロードウェイ(A-Tの数字で組み合わされたスートのハンド)、オフスーツのAxのような中程度の強さのハンドを小さいレイズではなくオールインしているためです。
BBのオールインは、ドミネイトされているハンドをフォールドさせたときに最も利益がでます。反対にドミネイトしているハンドをフォールドさせた時の利益は最も少なくなります。つまり、A2oやA3oのようなハンドは、より強いAxをフォールドさせることができ、またBTNが2sや3sでオープンすることはあまりないので、ドミネイトしていることもなく、オールインに適しているハンドです。
オールインは、ドミネイトされているハンドをフォールドさせたときに最も利益を得ます。
しかし、BTNのオープンレンジにはオールインに対してフォールドするスーテッドの7sや8s、さらにはオフスーツの8xが多く、またキッカーが弱いAxもフォールドします。つまり、A7oやA8oでのオールインは魅力的なアクションではありません。
このような浅いスタックでは、大きなポットを獲得するのにトップペアである必要はありません。J72rのフロップでは、小さなCベットに対してBBはA7oを中心にセカンドペアでチェックレイズします。
もちろん、相手のより強いハンドにレイズしてしまうこともありますが、相手のレンジにある弱い7からバリューを取れることもあります。
Aのペア
状況によって、A8oは「扱いにくいハンド」または「リバースインプライドオッズハンド」と考えられます。スタックがそれなりに深い時に、アーリーポジションのレイズに対してA8oはエクイティをあまり実現することができません。Aのペアを作れても、相手のAxの弱いハンドからバリューを取ることは難しく、時には相手の強いキッカーにバリューを取られてしまいます。
相手が予想していないハンドが現れると、大きな利益を得ることができます。
スタックが20bbの際でのBTNのレイズに対しては、問題ありません。BBのAxはBTNのオープンレンジに対して、約200%という素晴らしいエクイティを有しています。
プリフロップでオールインが魅力的なのはそのためです。相手が予想していないハンドが現れると、大きな利益を得られます。まれにフロップでトップペアを作った場合、相手はブラフやバリューベットを多くします。BTNがA72rのフロップでCベットをした後、ターンで9♥が落ちた際のBTNの戦略を見てみます。
BTNはブラフ、セカンドペア、サードペアの一部を含むレンジの80%近くでベットしています。
まとめ
プリフロップのコールレンジにAxがないと、ボードカバレッジが悪く、Aハイボードでも戦えるように時々Axをコールして「自分のレンジを守る」必要があると説明されることがあります。これではまるで自分のレンジの他の部分を守るためだけに、利益のあるオールインを諦めるかのように聞こえます。
ソルバー戦略は、後のストリートでEVを回収しようとしており、EVを手放しているわけではありません。
しかし、ソルバーは諦めているわけではなく、後のストリートでEVを回収しようとしています。もしソルバーがこのようなハンドをコールすることを勧めるのであれば、理論的には少なくともオールインと同じくらい利益があるはずです。
正しいプレイは相手の戦略次第で変わってきます。AxでコールすることのEVがどこから来るのかをよりよく理解した上で、特定の相手に対してそのEVを獲得できるかどうか考えることが重要です。
- Aハイボードで相手は積極的にブラフするのか?
- セカンドペアやサードペアで大きいポットをプレイするのか?
- そもそも、そのようなドミネイトしているハンドをレンジに入れるほど、相手は広くオープンしているのか?
オールインとコールのEVは他の要素も影響しますが、今回取り上げた要素は大きく関係します。EVがどこからきているのか理解することで、状況に応じた正しいコールやオールインをすることができるようになるでしょう。