SB vs BTNの4ベットポット(OOPの分析)
以下のような理由で、4ベットポットでプレイしずらいと感じたことはないでしょうか。
- ハンドの序盤にもかかわらず、すでにチップが多くポットに入っている
- よく起こる他のスポットに比べてレンジが狭い
- ポストフロップでのミスがより高くつく
この中でも特に厳しいのが、ポジションが無い(OOP)状態でプリフロップコーラーとして臨むケースです。自分のレンジは相手よりも弱くなり、さらにポジションも不利な状態です。
本記事では、SB vs BTNのキャッシュゲーム(スタック100bb)の例を用いて、このような4ベットポットの状況を検討していきます。まずフロップのレポートを見てみます。
Aハイボード
ほとんどのボードでは、プリフロップコーラーとして想定される通り、レンジ全体をチェックしています。しかし、AハイやQハイのボードのうち、特に残りの2枚がミドルカードになっている場合、SBが20%ポットのドンクベットを頻繁に使うものがあります。
その典型例として挙げられるのがA98ttで、SBはほとんどのレンジでドンクベットを選択しています。
SBがこのボードで例外的にチェックするのは、フラッシュドローがないKxoくらいで、それ以外のハンドはほとんどベットします。
一見すると、プリフロップアグレッサーがAを持っている可能性が高い4ベットポットで、Aハイボードにドンクベットするのは無謀に思えます。特にBTNは他のスポットと比べ4ベットポットではAxを多く持っています。
しかし、その背景には「SBのレンジもプリフロップのアクションによって相当絞られている」という事実があります:
- SBもAハイボードで多くのトップペアを作りやすい(BTNほどキッカーが強いAを多く持っているわけではないが、トップペアをかなり持っている)
- ミドルカードが2枚落ちるとき、BTNにはないセットや2ペアをSBは作れる可能性がある
さらに、BTNのレンジにはKKやQQが一定数含まれるのに対し、SBにはそれらのハンドがプリフロップでフォールド(あるいはオールイン)されているため、ほとんど含まれないという特徴もあります。
つまり、SB側はトップペアの劣勢がそれほど大きくなく、さらにナッツ級のハンドを持っている割合が高いため、ドンクベットが効果的に機能するのです。
Kハイボード
このボードでは、OOPであるSBはIPのBTNに対して大きな譲歩を強いられます。多くのKハイボードにおいてBTNは、トップペア・トップキッカーやセット(SBには作れないハンド)を多く含むため、大きなレンジアドバンテージとナッツアドバンテージを得るのが普通です。こうした理由から、ソルバー上ではほぼすべてのKハイボードで「SBはレンジ全体をチェック」する戦略が推奨されます。
その後、BTNはレンジ全体でベットを行い、ボードテクスチャに応じてポットの10%か20%ほどのベットサイズを使い分けます。たとえば、モノトーンやディスコネクトのボード(ストレートが作りにくい)では、フラッシュドローの影響やOOPが対応しにくい点を考慮して10%サイズを好むようです。
このような小さいベットに対して、OOP側は依然としてアグレッシブに戦う必要があります。たとえばK84ttでは、BTNは10%ベットと20%ベットをほぼ半々でベットします。
一方でSBは、BTNの10%ベットに対して約3分の2の頻度でディフェンスし、うち半分ほどは小さめのサイズへのチェックレイズを含むアグレッシブなアクションです。これらのレイズに用いられるハンドは、Kxやナッツフラッシュドロー、さらにハート付きのAQoなどとなります。
4ベットポットではレンジが非常に狭いため、ブロッカーの効果が通常より早い段階から大きく働きます。たとえば、AQoでもハートを含まないとほぼフォールドする一方、ハートを含む場合は常にコールし、さらにブラフレイズとしても使われます。これは、BTNのトップペアをブロックできるという利点が大きいからです。
これを確認するために、ブロッカータブを使ってSRPの場合と比較してみます。
特にA♥がOOPのフォールドを多く引き出す重要なカードですが、4ベットポットの場合、そのA♥を持つことで得られるメリットは2倍以上に高まります。
理論から少しでも外れると、長期的には大きな損失につながりやすいため、4ベットポットにおける各レンジを正確に理解することは非常に重要です。
ローボード
4ベットポットでは、お互いのレンジがハイカードや強いペアを中心に構成されがちです。そのため、いわゆる「ローボード」は両者のレンジと強く結びつきにくく、直感的にプレイしづらい状況となります。
GTO戦略を見ると、両者とも「相手がヒットしていないハイカードのレンジ」をどう攻めるかが鍵になっているのが特徴的です。たとえば、T98rのボードでは、SBがポットの140%に相当するオールインを、レンジのおよそ半分の頻度で行うケースがあります。これはSB側に、AKやAQといったハイカードに勝っているトップペア+ストレートドローが多く含まれているからです。これらのトップペア+ストレートドローを大胆に押し込みつつ、一部ブラフも混ぜることで、ハイカードハンドから最大限エクイティを実現できます。
このドンクジャムに対して、BTNはほぼすべてのペアでコールしなければならず、さらにAKsなどのハンドも高頻度でコールする必要があります。コールしなければ、SBのアグレッシブなアクションに対してフォールドをし過ぎてしまい、理論上は大きく損してしまうからです。
さらにローボードになると、ドローの可能性がほとんどなくなる一方、オーバーペアが非常に重要になるため、両者ともフロップからのオールイン戦略を選択する場面が増えていきます。
まとめ
- 4ベットポットをプレイする際は、まずプリフロップで非常に狭いレンジ同士が衝突していることを理解する必要があります。
- レンジが絞られているため、ブロッカー効果は早い段階から大きく作用します。フロップでも特定のコンボをどのアクションに使うかを慎重に考えなければなりません。
- ポットが大きく、相手のレンジも強いことを踏まえても、適切なアグレッション(ブラフを含む)をしなければ、期待値を逃してしまいます。